専門医の異世界派遣。俺の職業は医者だったはず…。【R18】

16、嫌われた……はず？

俺は、ギランに嫌われてしまった。
翌日、ギランじゃない誰かに挨拶され
スープとパンが置いてあった。
"か弱いレイヤ、ほら食べろよ！！"
って笑いながら硬いパンを一口サイズに
ちぎってくれる、過保護なギランはいない。
「……ギラン。」
ご飯を置いていった誰かはもういない。
小麦色、こんがり焼けた
パンは相変わらず硬かった。
パンの色がギランの肌の色に見えてきた。
パンを握りしめながら、いつのまにか
眠ってしまった。
朝なのか夜なのかわからない暗い部屋。
懐中時計を取り出すと11時間52分勤務、
3時間52分、超過勤務のペナルティー
解決済み。
「……！！」
なんだこれ？
立体映像の様にデジタル文字が浮かんでいた。
ペナルティー？あの風邪症状のことか？
熱いようで寒かったが、ギランに抱かれて
初めてを経験したら……。
童貞だった俺を抱いてくれたギラン。
めんどくさいと思われたかもしれない。
初めてだとめんどくさくて、
遊び相手には向かないと誰かが
言っていた気がする？！
弟たちが見ていたテレビドラマのセリフが
蘇ってきた。
"遊び相手にはちょうどいいが、
まとわりつくなよ、めんどくさい。"
"初物の締まりはいいが、本気に
なられたらめんどうだ。"
アレは、なんのテレビドラマだったんだろうか？
恋愛ドラマには間違いなさそうだが……。

ギランように逞しい身体に顔は少しイカツイが、
面倒見のいい兄貴のような存在は、
皆憧れるだろう。
しかも、優しくてちょっと心配性すぎるが
当然モテるだろうなぁ。
俺みたいなただ飯食らいで、色々
泣き喚いた挙句、30歳過ぎで童貞だった男……。
こんな俺なんかに情けをかけるくらいなら、
仕事をしてる方がいいんだろう。
暗くなる部屋、懐中時計は夜の11時を過ぎた頃だった。
たった1日会えなかっただけで、
こんなにも寂しいだなんて、どんだけ俺
ギランに頼りきってたんだろう？
コンコン。
「……。」
カチャ。
「うおっ！！何も見えねー、チッ。
クソっ。部屋ん中、真っ暗じゃねぇか。
あの野郎……。ちょっとは気を使って
少し灯りを灯しとけよ。レイヤが不安がるだろ。」
……ギラン？ギランの声だ。
だけど嫌われている俺が声をかけても
迷惑がられる。
だけど……まだ、いかないで。
「まだ、眠ってるのか？」
「……。」
眠ってない。目を閉じてるだけ。
顔がみたい、触れたい。
だけど…嫌いって言われるのが、怖い…。
「レイヤ、すまない。こんなにも
疲れさせていたんだな。」
あっ。昨日の事ながら思い出してしまい
顔に熱が集まるのを感じた。
「レイヤ、俺はお前が好きだ。好きって
言うより愛してる。」
あ、あ、あい～？
「1日目はお前に無理させたあげく、
泣かしてそのまま逃げてしまった。だが…。
夜になっても、お前の目が覚めないって
聞いて、慌ててきたら熱があったし、
水分も取れない状態だったし……。
３日目の今日も目覚めない……。
まさかこのまま、俺の……ように
死ぬんじゃないかって、怖い。」
３日？！
「レイヤ、目覚めてくれ。もう
乱暴な事しない。謝るから…俺の命をあげるから…。」

「命なんかいらない！！」
ギランの耳元にレイヤの大声が響いた。
ビクッと飛び上がるほと驚いたギランは、
抱きしめていたレイヤをつい、突き放してしまった。
レイヤはベッドに打ち付けられ、
一瞬息が止まる思いをした。
「ウグッ…。」
「レイヤ！！」
「ヴゥ…。」
急に力強く抱きしめられ、違う意味で
気が遠くなりかけた麗夜だった。