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1 プロローグ

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身分は公爵の娘。
理想の結婚を夢見る事は諦めていた。
あの日が、すべての始まりだった。
      ***
「仕方がない。フィリー、リリーとして
婚約者にあってくれ。」
「あ、あなた。何を言い出すの?」
「妹のフィリーは、儀式に疲れたとの事で
何とか誤魔化そう。いない事がバレたら
あの銀狼の騎士団長が……。」
あの日、お父様が青ざめながら
私に双子の姉の身代わりを頼んできたのだった。
      ***
価値観が合えばば嬉しいかも。
性格が良ければ嬉しいかも。
収入が高いほうが良いよね?
地位…高すぎだと色々しんどいかも……。
誠実さは欲しいかな?
自分だけを見つめてくれる人がいいけど、
そんな人…今時いないよねー…。
容姿?自分より大きい人かな?

双子の姉から去年の誕生日に
理想の相手はどうなのかと
話しあった記憶はある。
理想の結婚は夢のまた夢。
貴族階級に生まれた事により、
表向きは恋愛結婚を推奨する貴族が
増えたけど、政略結婚はまだまだ
当たり前の状態。
顔合わせの日が婚姻、不倫、愛人、
複数の女性と一緒に暮らすのは当たり前の事。
小さな時に昔ながらの親公認の
婚約者や成人したと同時に
結婚も珍しくはない。
私には婚約者がまだいないけど、
たぶん政略結婚になると思っていた。
双子の姉には騎士団長の婚約者がいる。
騎士団長が双子の姉に一目惚れをし、
その場で両親に婚約させて欲しいと
願い出たそうだ。
姉が(双子だから同じ年齢なんだけど…。)
12歳の時に婚約が決まってから、
毎年誕生日や新年には姉のついでに
私にも花束やプレゼントが届けられていた。

お気に入りの大きなくまのぬいぐるみや
うさぎ、大小様々な可愛いぬいぐるみ。
小さな可愛い花を模った小物入れ。
センスもよく、女心がわかっているのか
どれもこれも、私のお気に入りに
なっていた。
姉の婚約者は心遣いが素晴らしい人
なんだと思っていた。
私の両親は仲が…というか
政略結婚?策略?結婚とは思えないほど
万年新婚夫婦のように仲が良かった。
15歳の成人の儀のあと婚姻を結び
16歳で出産した母は、今でも
若々しく可愛い系の美人だと思う。
父は平凡っぽいけどその当時第5王子だった。
母が幼い時にたまたまついて行った
お城で王子に見初められたそうだ。
母は第5王子だった父をあまり意識
しなかったらしいが、毎日の様に続く
手紙や特攻に落とされたらしい。
それからは父が婚約をもぎ取り
夫婦となり間に生まれた2男3女。
長女18歳、長男17歳、次男16歳、そして
双子の2女リリーと3女の私、フィリーは
15歳の成人を迎える事になった。

姉のリリーは活発で冒険者になりたいと
毎日のように言っていた。
「冒険者ギルドに行って逞しい人と
パーティーを組んでぇ、毎日ワクワク
しながらぁ色んな場所に冒険しに行くの!」
その度に両親はもちろん兄や姉も
"無理"と言っていた。
部屋でこっそり護身術を復習したり、
なんの型か分からないけど、
応用編とか私の前で披露したり
相手役をさせられたりした。
どこから手に入れたのか分からない
魔法の本まで一緒に読んでいた。
難しい文字もあったが2人で読み解き
呪文を覚えたり、火は怖いので
風や水、土を一通り練習していた。
双子だけの秘密の特訓。攻撃系は
姉が得意で、怖がりの私は回復系が得意。
一緒に冒険者になろうって言われたけど、
魔物を狩るのは怖かった。
そして、両親がお茶会に呼ばれ私たちも
お城に行ったのだった。
その時に見初められたらしい姉は…。
12歳で婚約が決まったあとも、姉の
リリーは冒険者になるんだと言っていた。

薄桃色のお揃いのドレスを身に付け
15歳の成人式を無事終えた頃
事件は起きた。
私は前々から着たいと思っていた、
大人っぽい空色のロングドレス、
姉は大人っぽいローズ色のロングドレスを
それぞれの部屋に着替えに行った。

「だ、旦那様、奥様…た、大変でございます。」
姉の侍女たちが騒いでいた。
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