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第30話 一緒に食事。

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夜更け、目が疲れたアランは、少女の
もとへ行こうと、廊下を歩いていた。
「隊長、大丈夫ですか?」
「フラフラですが、食事は、
食べましたか?」
食事?忘れていた。ポーツとチェムに、
引き止められ、食事を摂るよう、
勧められた、俺は、
「少女に、逢いに行く。」
「また、チマリちゃん。ですか?」
「チマリ?」
「あっ。」
「すみません。」
「チマリ。」
ストルグ王子から、俺が自然に
思い出すまでなぜか、
伏せられていた名前だった。
「ありがとう、ポーツの、うっかりが、
たまには、役にたつよ。」
「隊長?」
「俺のメシを持って、チマリの部屋に
運んでくれ。一緒に、食べるよ。」
「でも、あの少女は、食事が
とれない状態ですよね?」
「だから、一緒に、食べるんだよ。
以前は、一緒に、食べてたはずなんだ。」

しばらすると、天井を、ジーっと
見つめている少女、チマリがいた。
「チマリ、遅くなってすまない。
お腹すいただろう。俺も、お腹
空いてるから、一緒に、食べような。」
アランは、チマリを無理矢理起こし、
背中に大量のクッションをいれ、
座った状態を作った。

「しんどくないか?これは、スープだ。」
「たぶん、コンソメかな?俺なら、
たくさん肉が、入ったスープが
いいが、チマリならどうだろ?」
ほとんどが、口からこぼれ、
口元に、当てた布に、スープが、
吸収されていた。

「やはり、肉じゃないから、嫌かな。
次こそ肉だ。ほら、食べろ。」
手で小さくちぎった、肉のかけらを、
チマリの口に、ほりこんだら、
口が少し動いた。
「よしよし。いい子だ。もう一回、
肉だ。たくさんあるから、食べろ。」
また、小さく、さっきより、大きく
ちぎった肉を、口に無理矢理、
入れた。
「この、スパイシーな味が、俺は、
好きだ。もう少し、辛くても大丈夫だが、
チマリは、お子様だから、
このままの、甘さがちょうどいいかな?」
ピクッ。
口が少し動き、目も、さっきより、
視線が動いていた。

パンをチマリの、手に、わざと握らせ、
チマリの手ごと、パンを、直接、
アラン隊長は、食べました。
「たまには、チマリも、俺に食べさせて、
欲しいな。結構、これはこれで、
照れるんだぞ。」
「次は何を食べる?俺が決めたら、
肉ばかりになるぞ。」
ぴくっ。
視線が、握らせたパンに、移った。
「パンが、いいのか?バターを
塗ってやるから、ちょっと、まってな。」
パンをちぎり、バターを塗り、小さな
かけらを、チマリの口に入れた、
アランは、口を動かしたり、少しでも、
反応が、あれば、大げさに、
チマリを褒めた。
わずかな、量だけど、チマリは、
久々に、戻すこともなく、食事を
食べた。
「チマリえらいな。次は魚を
食べるか?やはり肉にするか?
料理長に、頑張ってもらって、
両方にするか。俺も、両方が、
いいかな。」
「肉食べたら、喉乾くな。」
俺は、水を飲み、同じコップに、
同じ水を注ぎ、チマリ飲まそうと
した。
一瞬、ひるんだ。
「大丈夫だ。普通の、水だ、
それとも、チマリは、お子ちゃまだから、
果実の、絞り汁が、よかったか?」
部屋にあった、オレンジを、
ナイフで切り、コップに、
手で直接絞った。
わずかな、絞り汁。
「ほら。絞り汁だ。」
ベタベタの手。
果実の方が、みずみずしいような、
果物の絞り汁。
スプーンで、汁をすくい、
口に入れた。
少しの酸味に、顔を歪めたチマリ。
「酸っぱいか?果実の方が、
甘いかもな。」



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