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第20話 落下

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チマリは、窓辺から、
猫が花でじゃれているのを
しばらく、見つめていた。
猫と花を近くで、見たり触ったり
したくなり、部屋に戻るのを、
どうするか考えもせずに、
三階から飛び降りようとした。
だけど、薄手のガウンが、二階あたりの
出っ張りに、引っかかってしまい、
逆さまにぶら下がってしまった。

皆が、寝静まりかえる中庭に、小声で話す
ストルグ王子と、アラン隊長。

アラン隊長は、かすかに聞こえた、
布地の破れる音を聞き、あたりを、
見回した。

チマリが落ちそうになっている。
数十メートル先にチマリがいる。
助けなければ。
全身の筋肉を使い、走り、
間に合わす為、最後は、飛びつくように、
チマリを抱きしめて、勢いをころせず、
そのまま、受け身を取らないまま、
壁に激突してしまった。

「おい、大丈夫か?アラン、リマーユ。」
ストルグ王子は、二人に呼びかけていた。
チマリは、目を覚ますと、暖かく
抱きしめられていた。
ストルグ王子が見守る中、チマリは、
護衛の手を借りて、アランから、
抜け出した。

アランは頭から出血をし、擦り傷が、
あちこちに出来ていた。
チマリは、泣きながら、アランの
そばに駆け寄ろうとした。
「アランに、触るな。」
険しい顔で、睨みつけられたチマリは、
足がすくんでしまった。

チマリ目線

私のせいで、アラン隊長が、怪我を
してしまった。
私を受け止めようとして、飛びつき、
回転がかかり、背中と頭などを
強くうちつけた為に、アラン隊長は、
気を失っていました。

泣いてはいけないのは、わかってるけど
涙が止まらず、アラン隊長のそばに、
行きたくて、近寄ろうとしたら、
「アランに、触るな。」
ストルグ王子の顔は、今まで見た事が
ないくらいの、険しいお顔で、
低い声でした。
明らかに、怒っていました。

ただの使い捨ての、身代わりの私が、
大切な乳兄弟のアラン隊長を、
傷つけてしまったんだもんね。
「す、すみませ…申し訳ございません
でした。ストルグ王子。」

ひざから力が抜け、半ば土下座のように
謝り続けた。

どうやって、部屋に戻ったかは、
わかりませんでした。ただ、いつもの、
寝ずの番の、メイドさんもいつのまにか、
いなくなり、目の前には、ストルグ王子、
第2王子リマーユ様の、乳兄弟チェム様、
護衛騎士のポーツ様がいました。

質問されているんだろうな。
ストルグ王子や、チェム様、ポーツ様が
何か話されていたけど、会話の内容が、
流れ、聞こえてるはずなのに、
理解できずに、ただ、涙を流して
しまっている自分が、いる事だけが、
わかりましな。

アラン隊長、ご無事でありますように。
そして、ごめんなさい。
私の中で、何度も謝り続けていました。
アラン隊長。
申し訳ございません。
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