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48、おっチャンは驚愕した

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俺たちは自分たちが入って来た大きな
扉を見つめていた。
さすが竜騎士団は、堂々としていると
思ったが、微かにだが震えていた。
お腹に響く重低音に赤ちゃんの鳴き声、
薄暗い大広間、確かに怖いかもしれない。
「やぁー、皆久しぶり。」
ぎゃー、ぎゃーああー、ぎゃぁー。
「あー、よしよし。泣くな、ほらほら
さっき、ミルクを飲んだばかりだろ?」
んぎゃぁぁ、ぎゃー、ぎゃーァァァ。
「ハ、ハロルドさん、その子達は?」
おんぶ紐に前抱っこ、そしてもう1人……。
泣いてる赤ちゃんが3人……。

「その子たちは?」
「あー、魔王たちと一緒に子守りしてるんだよ。」
「えっ?」
驚く俺たちに、説明してくれたハロルドさん。
ハロルドさんに抱きしめられた時、
赤ちゃんが俺を睨んだ気もしたが
気のせいだと思おう。

「ガァーちゃんが、ここの竜騎士団の竜と
番(つがい)になっちゃって、ガァーちゃんの
赤ちゃんが産まれるまで離れるに
離れなくてねぇー。皆に心配かけてるのは
わかってたけど、連絡とる暇なくてごめんね。
ただで居座るのもなんだし、魔王のお手伝い
として、かわりばんこで主に小さな子どもの
子守りをしてるんだよ。」
「あっ、この子羽があるね。可愛い。」
「色々な種族の赤ちゃんたちだね。」
「皆、訳ありや生け贄とか、帰る場所が
ない子どもばかりなんだって。」
「生け贄……。」
「聞いてぇー。酷いんだよぉ。とある国や
村で色々、悪い事が起きると魔物や
魔族、魔王のせいにされ、生け贄を
差し出して助けてもらおうとするんだって。」
「………。」
「そう、酷いんだ。さらに酷ければ、
生け贄はいらないからと元の場所に還すと、
気に入らないんだと新たな生け贄が
差し出され、前の赤子が殺された件が
幾つかあるそうなんだ。」
「……酷い。」
「結局は、生け贄や色々治らず現状維持が
精一杯だそうなんだ。」
「こんな可愛い子たちが犠牲に……。」
「この魔王城は、子煩悩で教育熱心な魔王だよ。」
「子煩悩な魔王……。」
「街からも人気ある魔王で生け贄の件さえ
なければ、平和だけど……。現状を
知らない者に、この魔界の事を伝える為に、
穴をほり落ちた者に現状を見せて
戻したりしてるそうなんだ。」
「……。」
「だから、街の人たちもあまり驚かなかったんだ。」
「あと、ガァーちゃんはどれくらいで
赤ちゃん生まれるの?」
「明日か明後日くらいかな。」
「産まれたら、子育てどうするのかな?」
「タマゴが2つだから今のところ、一頭ずつ
母竜とガァーちゃんとこで育てるよ。」
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