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43、おっちゃんとギンクロ

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俺はハロルドさんの匂い付きハンカチ、
それでもう一度、探そう。
……ブーツは一応、もう片方あるのだが
あんなにも殺傷能力があるものは…
かなりヤバイ。
人族にもだがウルフにとっては命取りだし、
かなりのモノ。
ブーツ片方であたり一面の魔物が
泡を吹き、中にはショック死したのだ。
キツイ臭さのハロルドのブーツ、おそるべし。
たった数年間洗わず履き続けたブーツだった
そうで、訓練用の共同ブーツ置き場に
置いているものだそうだ。
訓練時に使用するブーツであまりの臭さに、
全く同じブーツをみんなで話し合い
王国に1年ごとに特別にオーダーしているそうだ。
本来なら穴が空いたり、靴底が減ったりすれば
こうかんとなるのだが、暗黙の了解で
国王にも許可を得て特別に作って
もらっているらしい。
防臭スプレーとか、開発しないのかな?と
その話をナオキは聞いていた。

ハロルドさんの臭いブーツを一度
洗ったことがあるそうだが、
川で洗った時の事は今でも迷宮入りの
事件になっているそうだ。
とある新人2人組、赤の竜騎士団は
片方ずつハロルドさんのブーツをもち、
固形石鹸を持って洗おうとしたそうだ。
最初は少し水につけ、なんどか石鹸を
使わずにブーツを濡らした時に事件は起きたのだ。
あたりには、うっすらと臭い臭いが漂い
川の生態系に異常が起きたそうだ。
魚やカニがぷかぷか浮いて飲み水に毒を
入れられたとすごい騒ぎになった事が
あったそうだ。
もちろん毒でもないし、まだ使用していない
固形石鹸でもなかったのだ。
原因は異臭を放つハロルドさんの
訓練用ブーツだった。
川の毒騒ぎは、原因、心当たりはありありだが
尋問したハロルド団長に言えるわけもなく、
団員たちは黙秘を続け、もちろん毒も
特定出来るわけもなく、事件は闇に消えたそうだ。
新入り2人は、ハロルドさんのブーツの
匂いを思いっきりかいだからなのか、
鼻が効かなくなり、しばらくマヒ状態になり
その後、それがきっかけかどうかは
わからないが、騎士団を退団したそうだ。
水洗い厳禁、匂い確認厳禁、暗黙の団旗が
語り継がれる事となり、それからは、
1年ごとに国王公認でハロルド団長の
訓練用ブーツは焼却処分していいことに
なったらしい。
知らないのは本人のみ。
ブーツ交換時にはもちろん防臭マスクや
防臭の魔法をかけ、短時間で
焼却処分することに専念したそうだ。
恐るべしハロルドの、足の匂い。
国王公認の臭さなんだ。
そんな訳ありのヤバいブーツをなぜ
持ってきたのだろうか?
コレはよっぽどの事がないかぎらり
しばらく封印だ。
契約したばかりの"ギンクロ"にダメージを
あたえるので、使用済みハンカチを
探索用にした。
こころなしかこの魔石、ブーツに入れたからか
少しひび割れている。
石に意思が有れば……ゴホッ。
魔石に意思があれば拒否されるだろうが
ハロルドのハンカチの匂いを嗅がせたのだ。
そのあとレッドサンの詳しい地図の上に
置いたのだ。
しばらく痙攣するようにブルブル……
グルグルしたが、レッドサンの中腹あたりで
止まった。ここにハロルドさんがいるのか?
返答はない。しかし、
「ここに行ってみる価値はあるね。」
「もしかして……。」
シンさんとオスカルさんは、俺の
エプロンに急きょ取り付けた大きなポケットを
見ていた。その中には眠っている
小さなギンクロを入れたのだった。
ピンクのエプロンに、ピンクの大判の
ハンカチ。多少縫い目は荒いが、
ある程度深さはあるし、落ちない大きさだ。
そのポケットに入ったギンクロを
見つめていた。
可愛い。少し硬い毛がふさふさしていた。
「きゅぅ~。」
「ギンクロ、ハロルドさんが見つかっても
足の匂いを嗅いじゃダメだぞ。命取りに
なるから気をつけてよ。」
「きゅ~。」
「「「「「「「……。」」」」」」」

再び飛龍に乗せてもらい新たな目的地に
行く事にしたのだった。
ハロルドさん、無事でいてくれ。
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