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42、おっチャンは心をいためる

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ブラックウルフと一部のシルバーウルフ、
臭い匂いでショック死した魔物……。
泡を噴いて気絶したウルフたちは、
団長や副団長たちにトドメを刺され
絶命した。
一部は武器に、そして毛皮として
取り引きされるそうだ。
シンさんが持つ特殊加工された
マジックバック、アイテムバックは、
死んだ魔物をいれると自動解体してくれる
すぐれものだそうだ。
試しに俺もブラックウルフの死体を
マジックバックに入れたが、魔核と死体には
なったが、皮や肉、牙、骨、細かくは
ならなかった。
やはりマジックバック自体高価なものだった。
特殊加工したアイテムバックは各騎士団に一つ
貸与されていて、国管理だと言っていた。
マジックバックで貴族の屋敷が1軒建つとしたら、
アイテムバックは貴族の屋敷が2軒から3軒
建てれる位の価値ある物だった。
お城のお抱え魔術師と加工職人の
共同開発品だそうだ。
俺のマジックバックは、メイ神製だが
かなりの容量が入る。
魔物の解体は出来ないがシンさんの
アイテムバックがあるからよしとしよう。
気持ち的に死体が入ったカバンは、
持ち歩きたくないし、ぱっと見は地味な
カバンだが、分かる人にはわかるし
貴族の持ち物って丸わかりらしい。
死体いりのカバン、貴族の持ち物、
あまり気持ちがいいものでもない。
俺はどうみられてるんだろうか?

ブラックウルフたちの死体を
しんさんの持っている、アイテムバックに
放り込んでいる団員さんかをナオキは
自然と手を合わしながら見ていた。
襲っては来なかったウルフたち。
中にはひどく痩せているのもいたし、
ただお腹が空いていただけかもと、
考えるとなんだか罪悪感でいっぱいになった。
半数は逃げたものの、半数は
命を失っていったウルフ。
まだ手付かずのボアボアのシチューと
串刺しの魚の塩焼き。
食べなきゃ、力にはならない。
弱肉強食の世界。
リアルな世界。
誰かか捌いてくれた、血肉を自分たちが
食べる。なぜか、泣きながら
美味しいはずのご飯を飲み込むように
最後の一欠片まで食べたナオキだった。
臭い匂いが漂うこの場所で、朝を迎え
代わる代わる寝ずの番をしたものの、
横になるものの、寝れなかった。

出発前、朝の生理現象をしにみんなが
いる所から少し離れた。
「ナオキ、あまり離れるなよ。」
「はーい。」
「なんなら、そこでしていいぞ。」
「い、いえ、そこの茂みにしますっ。」
「介助してやるよ。」
「い、いりません。1人でできます。」
「あははっ」
「ナオキは可愛いなあ。」
いつものからかいとともに、用足しに
岩陰に行った。

ぎゅー。きゅー。
「……?」
ナオキは朝の整理現象をも忘れ、か弱い
鳴き声に導かれるように草が生い茂る
岩陰に行った。
草が深くなったところに、微かに揺れていた。
鳴き声はピタリとやむと、グググッ、ググッと
弱々しいながらも威嚇した声が聞こえた。
灰色と黒い毛が混じり泥が付いた子犬?
いや?昨日の魔物ブラックウルフの子ども?
うっすら目が開いているのか、怯えていた。
生まれたて?
まさか、狙われないように赤ちゃんを
産むように飢えながらも母と生まれてくる
子どもを守っていたのか?

「ナオキ、どしたんだ?」
複数の足音がした。
なかなか帰ってこない俺を心配
してくれたのか?
だが、もし俺の考えが本当なら
必死に守って、襲って来なかった理由も
わかる気がした。
なのに、半数を死に追いやってしまった。
「……なあ、ここは魔物、ブラックウルフも
女…メスが少ないのか?」
「ああ、シルバーウルフにメスが多く
ブラックウルフの殆どがオスだ。」
俺の手の平に乗る弱々しい、温かな命は
生きていた。
「この子を助けたい。」
「珍しいな。両性、変態する種だ。」
「変態?」
「そう、好みの相手によりオスにもメスにも
なれる希少種のウルフだよ。」
「死んだ中にシルバーウルフが居たが、
その母親の命を糧に生まれるとも言われてる
ウルフで、生命力が危なくなると周りから
魔力や生命力を奪うんだが、どうやら
その子は、違うようだな?」
「えっ?」
「魔物としてやっていけない。死にたがり。」
「ドレイン、他種から生命力は取りたがらない、
アルビノ、いずれ死ぬよ。」
「助けれないのか?」
「魔力や生命力を自分で欲しがらない、
狩り能力のない魔物、死にたがりの魔物は
どう育てるかわからないし無理だ。」
「あきらめろ。」
「でも、でも、この子生きてるし、
暖かいし、心臓動いてるんだ。何か
何か食べ物、ミルク、そうだ、ミルクだ。」
俺は半泣き状態で、ジャー・コー・テーンさんに
クリームシチューに使ったミルクが余ってないか
確かめた。ミルクの実。
ヤシの実に似た硬い殻に覆われた実を少し
割ってくれた。
それをストローで、少しずつ与えたが
飲もうとしなかった。
手遅れなのか?
「おい、お前飲めよ。ミルク飲まないと
死んじゃうよ。黒と灰色でせっかく可愛く、
産んでもらったのに、ちょっとでも
飲んでくれよ。ギンクロー。」
「くぅきゅー。」
手の平の子狼が突然、痙攣したかのように
ピクピクした。
「だめ、ダメだ、死んじゃダメだ。えーと、
助かれ!死ぬな!ヒール!ヒーラー!
リレイズ!リゲイン!チヨビタ!ベホマ!
ベホマラ!ケアルガ!ケハアルヨ……。
なんでもいい、ギンクロ、生きろ!!」
ピカッ~。

ナオキの頭ではなく、頭の所にかかげた
子狼が光り輝いたのだ。
『ありがとう、ナオキ。私はギンクロ。』
「ギンクロ?!」
光がおさまると、手の平にはふわふわの
小さな子狼がスヤスヤ眠っていた。
「銀色と黒のシマシマの狼か。」
「珍しいのと契約したな。」
「しっかり育てろよ。」
「相談には乗ってやるよ。」
「犬みたいで可愛いなあ。」
「生まれたての狼は初めてみたよ。」
口々に言われ、"ギンクロ"となんとなく
名付けてしまった小さな契約獣。
俺の小さな狼が仲間に加わったのだ。
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