上 下
13 / 50

13、おっチャン、気絶させられる

しおりを挟む
*赤竜騎士団団長ハロルド目線

ナオキにトイレを済ませたあと
眠らせた俺は、国王に出された命令を
皆に伝えると同時に抜け駆けしないよう
協定を結ぶための話し合いの場を設けた。

国王に謁見、それぞれの報告を済ませた
各騎士団の団長に声かけをし、飛竜で
帰ろうとしたところで、"ナオキ"の事で
相談があると言って引き止めたのだ。
すると、皆なぜか赤竜騎士団の本拠地に
来ることになった。
"ナオキ"の顔を見るためだろう。

本拠地についた俺は、大切なナオキを
副団長に預けたのだが……。
副団長であるシン・ハーマンからの
報告には驚いた。
騎士団の建物の屋上から、数キロ先の
行列の中にいた、お忍びで来たと思われる
獣人族の王族がスリにあったとの
報告だった。
しかもそれを見ていたのはナオキだった。
相手の事は、全く知らなさそうだが
数キロ、約2キロ弱の距離の出来事を
発見したのだ。
試しに見たが、見晴らしがいいとはいえ
夕暮れの景色があやふやになる時、
よほどの事がない限り、見えないだろう。
犯罪を防げなかったものの、スリの
犯人は、賞金首だったスリ集団の
ナンバー3だった。
さらに驚くべき事に、その犯人
捕縛時の熊獣人族の状態だ。
なぜかマヒ状態になっていて、簡単に
捕まえることが出来たそうだ。
お忍びの王族の方には、応接室に
保護し丁重におもてなし中だそうだ。
ナオキの能力は、すごいものがある。
なんとしてでもこのピンキー王国に
引き留めろっ言う国王からの厳命と
自分自身そばにいて欲しい気持ちで
いっぱいいっぱいだった。
国王に言われずとも、俺のそばに
引き留めおくつもりだ。
これから彼に、出身や種族の事も
聞くために、そろそろ睡眠効果の魔法が
切れる頃だった。

「あかん……来るな。」
「…ナオキ?」
ベッドに寝かしていたナオキが、突然
苦しそうな表情でうなされていた。

「……どしたのだ?」
「彼は、大丈夫なのか?」
「団長……。」
「……。」
他の者も心配そうにナオキをみて
近づこうとしていた。

「……痛い……やめて。」
「ナオキ?大丈夫か?」
痛いだと?皆がいるのはわかっていたが、
思わず身体の異変がないか確かめるため
ナオキの服を脱がした。
「…ごくっ。」
誰かの飲み込む音が聞こえた。
見る限り、痛みや怪我はなさそうに見えた。
「……夢魔?」
夢魔だと?!
思わず、"夢魔"と呟いた黄竜騎士団の
団長ナバナ・スターリンを見た。
鷹獣人族の父と人族の母を持つ彼は
竜騎士一番の博識だ。
その彼が言うから、夢魔に襲われている
可能性がかなり高い。

夢魔と言えば、人の夢の中に入り
いたずらしたり、気に入った者を
夢の中に閉じ込め最悪の場合、
そのまま死に至るあれか?
あとは、夢魔、淫魔(いんま)とも
言われるやつは、たしか……。
夢の中で、俺の大事なナオキに…
俺もまだしてないのに……。
性交して、ナオキ大事なものを
絞り取る下級の悪い魔族。
くそっ。
魔族だかなんだかしらないが、
胸くそ悪いし、夢の中にいるし
力の差もかなりあるから、今の俺では
手出し出来ないのが現状だ。
「くっそー。ありったけの魔術師や
魔族の知り合いはいないか、片っ端から
連れてきてくれ。俺の、俺の大切な
ナオキを助けてくれ!!」
「「「「「……。」」」」」
ハロルドの取り乱した姿を見た
壮々たるメンバーは、思った。
"ナオキが大変だ。"
"ハロルドに捕まったナオキ。"
"夢魔なみに凄みあるハロルド団長に、
天使のようなナオキが捕まった。"
"ハロルド団長、やばい。"
黄竜騎士団の団長ナバナ・スターリン
青竜騎士団の団長ピロロ・エウラタン
赤竜騎士団の軍師オスカル・シャトレイヤー
赤竜騎士団の副団長シン・ハーマン

団長たちが動こうとしたそのタイミングで
事は起こった。

「グェェェー。」
ハロルド以外、見てしまった。
"ナオキが、目覚めた。"
"締め付けられるナオキ。"
"苦しんでいるナオキ。"
"涙を流すナオキ。"
(かなり前から涙は流れていたが、
起きてからの涙の量の方が多かった。)

「ナオキ…俺がいる…俺がそばにいてやるから。」
締め付けるハロルドの抱擁に
目覚めたばかりのナオキは気絶した。
目撃者は思った。

"夢魔じゃない。"
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...