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第3話 ~シアルの街
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ーティルー
俺は先程知り合った兵士である二人、ヒックスとウエンツにこの街を案内して貰っている。互いに自己紹介をし、歩く中で色々と教えて貰ったよ。
この街の名はシアルといい、グラン王国の南方にあるらしい。王都ルトマーは北の草原にある街道を辿れば行ける。それ以外だと北の草原を抜け、その先にある山を越えなくては行けないらしい。
東には深い森があり、稀少な植物系採取物が多いみたいだが、シアル周辺一の危険地帯で奥に何があるのかは知られていないとのこと。
西は川に沿って未整備の街道が続いており、その先には大きな湖がある。シアルの街で食されている魚類の大半は、この湖で獲れているんだと。噂ではその湖に大いなる存在がいるとかいないとか、…暇があれば行ってみたいな。
…で、南にはリアル公国に続く街道が整備されていて、常に兵士達が巡回する程の大切な街道らしい。その先にあるのは関所で、リアル公国は入国が制限されている国のようだ。何でも魔物遣いが多い国らしく、一子相伝の術や禁術、稀少な魔物を守る為に入国審査が必要なんだって。
因みにシアルの街は、グラン王国とリアル公国を行き来する者にとっては旅の要所であり、グラン王国でも有数の大きな街らしい。そんな街が俺達PCの始まりの街か、…何か贅沢な感じがするな!
シアルの街周辺の情報を聞き、流れ的に今度は街中のことを教わる。教わると言っても、宿に向かう途中にある店等のことだけだが。まぁそれだけでもありがたいよな? 逆に全てを教えられても困る。大きな街みたいだし、覚えきれない…それにかなりの時間を要するだろうしな。
まず最初にスキル屋、その名の通りスキルを売っている。
「スキル屋には色んなスキルが売っているぞ、手っ取り早くスキルを覚えたいのなら買うのが一番だ。」
「購入条件のあるスキルがあるからな、人によって買えるスキルが違う。そこに注意してくれ。」
自身の行動次第で色々なスキルを取得、または習得・修得出来るようだが、店で買うのが一番楽な取得方法らしい。だが買うにしても条件があるヤツもあり、人によっては買えないスキルもあるとのこと。アイツは買えたのに自分は買えなかった、ということもあるから注意しろってことだな? トラブル回避の為に、このことを忘れんようにしておかなければ。
次に説明されたのは施設で総合ギルド、道すがらにそのギルドは無く、そのギルドに続く道だけを教えて貰った。
「ここから先を真っ直ぐ行けば総合ギルドがある。総合ギルドっていうのは、冒険者ギルド・生産ギルド・魔法ギルド、この三大ギルドの集合体だ。」
「冒険者と生産者がもっとも関わる三つのギルド、所属者がとんでもなく多い。各ギルド本部・支部へ行きたいのであればまずはここで登録、そして実績を積めば本部・支部へと紹介される仕組みだ。各ギルドも初心者に教えてやる暇はないってことだな、…まぁ例外っていうのもあるらしいが。」
なるほど、まずはここで冒険者と生産者を篩にかけるってわけか。この初心者用のギルドにて己を磨き、一定の成果を出した者が本部及び支部への異動を認められる。異動して初めて一人前、そういうことだな? …ゲーマーには堪らない仕様だ、燃えること間違いなし! 誰が一番乗りを果たすかで盛り上がること確実。俺の場合は一番乗りとかどうでもいい、ただコツコツやるのは嫌いではなく、努力を重ねて認められるのは達成感があるからな、…登録が楽しみだぜ!
総合ギルドへと続く道を素通りし、次に紹介されたのが防具屋。なかなかにデカイ、立派な店構えである。
「ここが防具屋で、二人の一流職人が経営している。ぶっちゃけ、シアルにはこの店以上なんざ無い!」
「一流であるが為にその性能は素晴らしく、値段も他とは比べ物にならない。…が、初心者用の控え目商品もあるから安心しな。まぁそれには条件があり、それなりの者からの紹介が必要になるんだがな! 因みにティルは買えるぜ? 俺達の紹介と言えばな!」
シアル一の防具屋か、しかも初心者用の物も置いてあるとか。条件付きではあるが、二人の紹介と言えば買える。…二人に案内を頼んで正解だったな、やはり聞くなら街の住人だろう。…そういえば、他のPCはどうやってこの街のことを知ったのだろうか? 外へ行くにも迷わなかったし。…やっぱりβテスターからの情報か? たぶんだがβテストの始まりもこの街からだと思う。だから俺ほどのお上りさんはいなかった、…それならあの時の説明が付く。しかしながら、それでも情報は街の住人から聞く。それが王道だと思うね!
防具屋を過ぎて少し、今度は…、
「ここはシアル一の道具屋なんだが、店主がチビッ娘なんで営業時間がまちまちだ。…眠くなると寝るからな、あの人は。」
「道具は一級品だが値段が高い、だが性能は…アレだ。因みに店主はチビッ娘だが、齢二〇〇歳のエルフ族で俺達より年上だ。」
二〇〇歳チビッ娘エルフの一流道具屋? しかも眠り癖があり営業時間もまちまち、何とも濃い店のようだ。…二〇〇歳の幼女、…ロリババアってヤツか? どんな人か気になるが…、
「…店、閉まっているようだわ。たぶん…、爆睡中だな!」
閉店で見ること叶わず、…残念。まぁ後の楽しみにしておくか、街にいる限りは利用すると思うしな。
この流れだと次は…、
「ここが武器屋だな、ここの店主も一流で値段は高いが性能はピカイチだ。俺達は常連でね、この店で買った武器は最後まで面倒を見てくれる。」
「そうそう、ここの親父さんは一流の鍛冶師なんだよ。一流なだけにこの間も剣の手入れに寄ったら、『テメェ…、乱暴に扱うなっていつも言ってるよなっ!!』って拳骨を食らったよ。」
ふむふむ、この店もやはり一流か。この二人に教わった店は全て一流、流石は見廻りをしているだけのことはある。それはさておき、ここの店主は気性が激しい方のようだ。頑固親父ってところか? 最後まで面倒を見るっていうのは凄いな、職人魂っての? …武器を買うならここが一番ってことになるな。武器は自分で作るつもりではあるけれど、その前に一流の物を見て勉強することも必要であると考える。…うん、この店には後で足を運ばなければならない。
…で、最後は宿になるんだが、
「他にも色々あるんだけどな、あまり教え過ぎんのもつまらんだろ?」
「必要であろう店だけで十分だろ? 後は自分の足で色々と見て廻るといい、思いがけないモノを見付けたり、遭遇したりで楽しいと思うぞ?」
…なんてことを言ってきた、意味深に聞こえたのは俺の気のせいだろうか? 俺に何かをしろっていう…、
【クエスト】シアルの街を散策
シアルの街を自分の足で散策してみよう!
【報酬】ランダム
このクエストを受けますか? YES/NO
ポンッ! と頭の中にクエスト発生の知らせが届く。報酬がランダムってのが気になるところだが、これは俺の行動次第ってことなのか? 散策中に何かしらを見付ける、何かしらに遭遇する、何かしらが起きる…。挙げればキリがない、…がそういうことになるのだろう。…見たところ、特に問題があるようには思えない。有効期限も無さそうだし、散策もするつもりだしYESを選ぶのが吉とみた! たかが散策程度でクエストが発生したんだ、YESを選べば一度だけ何かしらの発生率が上がるんだな? …YESだね!
ポチッ! とYESを選択した俺は、二人の視線に気付く、…何か?
「…いきなり立ち止まって、険しい顔をしていたからな。…一瞬、その道のプロかと思ったよ。」
頭の中? にクエスト発生の知らせが届いたからな、それで立ち止まって考えていたわけだが…、そんなに険しい顔をしていたかね? …したつもりはないんだが。
「はっきり言って、殺し屋の顔だったぞ? …初対面でそれを見たら、とりあえず抜剣して構えていたわ。」
その言葉を聞いて自分の顔を触り、改めて自分の容姿について考える。短い眉に鋭い眼、薄い笑みを浮かべるのが癖で右頬に大きな傷がある。髪型はツーブロック一筋の長髪で一本に纏めている。長髪部分が薄紫で刈り上げ部分が黒の二色。身長は192cm。…うーん、自分でいうのもあれだが見た目悪党間違いなしだよな。きちんと撮影してそのデータから作られた俺のキャラ、リアルな俺自身。VR世界でも悪党顔な俺、笑えるけどそんな俺が大好きだ。
「この笑顔を見てくれ、どう見ても善人だろ?」
俺的満点の笑顔を二人に向けると、…周囲から悲鳴が上がった。
「……その邪悪な笑みは止めろ、…こえーよマジで。」
「老若男女問わず、下手したらショック死するぐらいの衝撃だぞ…。」
ヒックス&ウエンツにそう言われ、周囲の怯え具合に少々傷付きましたよ俺は…。
傷心中の俺ではあるが歩みは止めずに進む、そして…、
「ここが俺達の薦める宿、その名も『くまさんの宿り木』だ!」
そう紹介された宿を見る、……一言で言うなら巨大な切り株。その切り株の根本には、申し訳ない程度に扉がある。はっきりと言わせて貰おう、…中世ヨーロッパ調の景観が台無しだ!! 周囲にある建造物の中にコレって…、そもそも何で切り株なんだよ!
「色々と理由があってこんな見た目なんだが、安くて良い宿だぞ?」
理由があっても切り株とかって意味が分からん、謎なのだが何故に周辺の方々は苦情を入れないんだ?違和感がハンパないのに…。言葉を失いつつも考える俺を引き摺り、二人は扉を開けた。
俺は引き摺られながら中へと入る、…宿の中は小洒落ていた。…外観切り株なのに、解せん。
「シグルゥいるかぁ~! 見所のある客人を連れてきたぞ!」
宿の奥に声を掛けるウエンツ、…この切り株宿の奥行きに疑問あり! そこまで大きな切り株ではなかった筈、…ただの切り株ではないな? この宿の不思議仕様について考えていると、奥から青髪のイケメンが現れた。俺とは違い、貴公子風の正統派イケメン。物腰爽やかそうだ。
「やぁ二人共、元気そうで何よりだねぇ。見所のある客人、…お客を連れてきてくれたのかい?」
うん、…爽やかだ。とりあえず名乗らねば失礼だな。
「ヒックスとウエンツにこの宿を紹介されたティルだ、よろしく頼む。」
そう言って手を差し出す俺に、彼はその手を握り返して、
「私はこの宿の主でシグルゥという名だよ、ヘンテコ宿にようこそ♪」
…自分で言っちゃうんだ。そして、このヘンテコ宿が当分の拠点に決まったのだった。
俺は先程知り合った兵士である二人、ヒックスとウエンツにこの街を案内して貰っている。互いに自己紹介をし、歩く中で色々と教えて貰ったよ。
この街の名はシアルといい、グラン王国の南方にあるらしい。王都ルトマーは北の草原にある街道を辿れば行ける。それ以外だと北の草原を抜け、その先にある山を越えなくては行けないらしい。
東には深い森があり、稀少な植物系採取物が多いみたいだが、シアル周辺一の危険地帯で奥に何があるのかは知られていないとのこと。
西は川に沿って未整備の街道が続いており、その先には大きな湖がある。シアルの街で食されている魚類の大半は、この湖で獲れているんだと。噂ではその湖に大いなる存在がいるとかいないとか、…暇があれば行ってみたいな。
…で、南にはリアル公国に続く街道が整備されていて、常に兵士達が巡回する程の大切な街道らしい。その先にあるのは関所で、リアル公国は入国が制限されている国のようだ。何でも魔物遣いが多い国らしく、一子相伝の術や禁術、稀少な魔物を守る為に入国審査が必要なんだって。
因みにシアルの街は、グラン王国とリアル公国を行き来する者にとっては旅の要所であり、グラン王国でも有数の大きな街らしい。そんな街が俺達PCの始まりの街か、…何か贅沢な感じがするな!
シアルの街周辺の情報を聞き、流れ的に今度は街中のことを教わる。教わると言っても、宿に向かう途中にある店等のことだけだが。まぁそれだけでもありがたいよな? 逆に全てを教えられても困る。大きな街みたいだし、覚えきれない…それにかなりの時間を要するだろうしな。
まず最初にスキル屋、その名の通りスキルを売っている。
「スキル屋には色んなスキルが売っているぞ、手っ取り早くスキルを覚えたいのなら買うのが一番だ。」
「購入条件のあるスキルがあるからな、人によって買えるスキルが違う。そこに注意してくれ。」
自身の行動次第で色々なスキルを取得、または習得・修得出来るようだが、店で買うのが一番楽な取得方法らしい。だが買うにしても条件があるヤツもあり、人によっては買えないスキルもあるとのこと。アイツは買えたのに自分は買えなかった、ということもあるから注意しろってことだな? トラブル回避の為に、このことを忘れんようにしておかなければ。
次に説明されたのは施設で総合ギルド、道すがらにそのギルドは無く、そのギルドに続く道だけを教えて貰った。
「ここから先を真っ直ぐ行けば総合ギルドがある。総合ギルドっていうのは、冒険者ギルド・生産ギルド・魔法ギルド、この三大ギルドの集合体だ。」
「冒険者と生産者がもっとも関わる三つのギルド、所属者がとんでもなく多い。各ギルド本部・支部へ行きたいのであればまずはここで登録、そして実績を積めば本部・支部へと紹介される仕組みだ。各ギルドも初心者に教えてやる暇はないってことだな、…まぁ例外っていうのもあるらしいが。」
なるほど、まずはここで冒険者と生産者を篩にかけるってわけか。この初心者用のギルドにて己を磨き、一定の成果を出した者が本部及び支部への異動を認められる。異動して初めて一人前、そういうことだな? …ゲーマーには堪らない仕様だ、燃えること間違いなし! 誰が一番乗りを果たすかで盛り上がること確実。俺の場合は一番乗りとかどうでもいい、ただコツコツやるのは嫌いではなく、努力を重ねて認められるのは達成感があるからな、…登録が楽しみだぜ!
総合ギルドへと続く道を素通りし、次に紹介されたのが防具屋。なかなかにデカイ、立派な店構えである。
「ここが防具屋で、二人の一流職人が経営している。ぶっちゃけ、シアルにはこの店以上なんざ無い!」
「一流であるが為にその性能は素晴らしく、値段も他とは比べ物にならない。…が、初心者用の控え目商品もあるから安心しな。まぁそれには条件があり、それなりの者からの紹介が必要になるんだがな! 因みにティルは買えるぜ? 俺達の紹介と言えばな!」
シアル一の防具屋か、しかも初心者用の物も置いてあるとか。条件付きではあるが、二人の紹介と言えば買える。…二人に案内を頼んで正解だったな、やはり聞くなら街の住人だろう。…そういえば、他のPCはどうやってこの街のことを知ったのだろうか? 外へ行くにも迷わなかったし。…やっぱりβテスターからの情報か? たぶんだがβテストの始まりもこの街からだと思う。だから俺ほどのお上りさんはいなかった、…それならあの時の説明が付く。しかしながら、それでも情報は街の住人から聞く。それが王道だと思うね!
防具屋を過ぎて少し、今度は…、
「ここはシアル一の道具屋なんだが、店主がチビッ娘なんで営業時間がまちまちだ。…眠くなると寝るからな、あの人は。」
「道具は一級品だが値段が高い、だが性能は…アレだ。因みに店主はチビッ娘だが、齢二〇〇歳のエルフ族で俺達より年上だ。」
二〇〇歳チビッ娘エルフの一流道具屋? しかも眠り癖があり営業時間もまちまち、何とも濃い店のようだ。…二〇〇歳の幼女、…ロリババアってヤツか? どんな人か気になるが…、
「…店、閉まっているようだわ。たぶん…、爆睡中だな!」
閉店で見ること叶わず、…残念。まぁ後の楽しみにしておくか、街にいる限りは利用すると思うしな。
この流れだと次は…、
「ここが武器屋だな、ここの店主も一流で値段は高いが性能はピカイチだ。俺達は常連でね、この店で買った武器は最後まで面倒を見てくれる。」
「そうそう、ここの親父さんは一流の鍛冶師なんだよ。一流なだけにこの間も剣の手入れに寄ったら、『テメェ…、乱暴に扱うなっていつも言ってるよなっ!!』って拳骨を食らったよ。」
ふむふむ、この店もやはり一流か。この二人に教わった店は全て一流、流石は見廻りをしているだけのことはある。それはさておき、ここの店主は気性が激しい方のようだ。頑固親父ってところか? 最後まで面倒を見るっていうのは凄いな、職人魂っての? …武器を買うならここが一番ってことになるな。武器は自分で作るつもりではあるけれど、その前に一流の物を見て勉強することも必要であると考える。…うん、この店には後で足を運ばなければならない。
…で、最後は宿になるんだが、
「他にも色々あるんだけどな、あまり教え過ぎんのもつまらんだろ?」
「必要であろう店だけで十分だろ? 後は自分の足で色々と見て廻るといい、思いがけないモノを見付けたり、遭遇したりで楽しいと思うぞ?」
…なんてことを言ってきた、意味深に聞こえたのは俺の気のせいだろうか? 俺に何かをしろっていう…、
【クエスト】シアルの街を散策
シアルの街を自分の足で散策してみよう!
【報酬】ランダム
このクエストを受けますか? YES/NO
ポンッ! と頭の中にクエスト発生の知らせが届く。報酬がランダムってのが気になるところだが、これは俺の行動次第ってことなのか? 散策中に何かしらを見付ける、何かしらに遭遇する、何かしらが起きる…。挙げればキリがない、…がそういうことになるのだろう。…見たところ、特に問題があるようには思えない。有効期限も無さそうだし、散策もするつもりだしYESを選ぶのが吉とみた! たかが散策程度でクエストが発生したんだ、YESを選べば一度だけ何かしらの発生率が上がるんだな? …YESだね!
ポチッ! とYESを選択した俺は、二人の視線に気付く、…何か?
「…いきなり立ち止まって、険しい顔をしていたからな。…一瞬、その道のプロかと思ったよ。」
頭の中? にクエスト発生の知らせが届いたからな、それで立ち止まって考えていたわけだが…、そんなに険しい顔をしていたかね? …したつもりはないんだが。
「はっきり言って、殺し屋の顔だったぞ? …初対面でそれを見たら、とりあえず抜剣して構えていたわ。」
その言葉を聞いて自分の顔を触り、改めて自分の容姿について考える。短い眉に鋭い眼、薄い笑みを浮かべるのが癖で右頬に大きな傷がある。髪型はツーブロック一筋の長髪で一本に纏めている。長髪部分が薄紫で刈り上げ部分が黒の二色。身長は192cm。…うーん、自分でいうのもあれだが見た目悪党間違いなしだよな。きちんと撮影してそのデータから作られた俺のキャラ、リアルな俺自身。VR世界でも悪党顔な俺、笑えるけどそんな俺が大好きだ。
「この笑顔を見てくれ、どう見ても善人だろ?」
俺的満点の笑顔を二人に向けると、…周囲から悲鳴が上がった。
「……その邪悪な笑みは止めろ、…こえーよマジで。」
「老若男女問わず、下手したらショック死するぐらいの衝撃だぞ…。」
ヒックス&ウエンツにそう言われ、周囲の怯え具合に少々傷付きましたよ俺は…。
傷心中の俺ではあるが歩みは止めずに進む、そして…、
「ここが俺達の薦める宿、その名も『くまさんの宿り木』だ!」
そう紹介された宿を見る、……一言で言うなら巨大な切り株。その切り株の根本には、申し訳ない程度に扉がある。はっきりと言わせて貰おう、…中世ヨーロッパ調の景観が台無しだ!! 周囲にある建造物の中にコレって…、そもそも何で切り株なんだよ!
「色々と理由があってこんな見た目なんだが、安くて良い宿だぞ?」
理由があっても切り株とかって意味が分からん、謎なのだが何故に周辺の方々は苦情を入れないんだ?違和感がハンパないのに…。言葉を失いつつも考える俺を引き摺り、二人は扉を開けた。
俺は引き摺られながら中へと入る、…宿の中は小洒落ていた。…外観切り株なのに、解せん。
「シグルゥいるかぁ~! 見所のある客人を連れてきたぞ!」
宿の奥に声を掛けるウエンツ、…この切り株宿の奥行きに疑問あり! そこまで大きな切り株ではなかった筈、…ただの切り株ではないな? この宿の不思議仕様について考えていると、奥から青髪のイケメンが現れた。俺とは違い、貴公子風の正統派イケメン。物腰爽やかそうだ。
「やぁ二人共、元気そうで何よりだねぇ。見所のある客人、…お客を連れてきてくれたのかい?」
うん、…爽やかだ。とりあえず名乗らねば失礼だな。
「ヒックスとウエンツにこの宿を紹介されたティルだ、よろしく頼む。」
そう言って手を差し出す俺に、彼はその手を握り返して、
「私はこの宿の主でシグルゥという名だよ、ヘンテコ宿にようこそ♪」
…自分で言っちゃうんだ。そして、このヘンテコ宿が当分の拠点に決まったのだった。
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