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第2話 ~始まりの街
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ーティルー
上を見ると突き抜けるような青空、周囲に目を向けるとレンガ造りの家々が建ち並んでいる。まるで中世ヨーロッパ? な街並みだ。TVゲームのRPG世界に自分がいる、…そんな感じがして一人感動に身を震わせる。これが最先端技術、これがVR、これが『F.E.O』の世界! …凄すぎるぜ!
…数分後、俺は我にかえり現在地を確認する。まぁ見る限りは街中だよな、始まりの街ってところか? …で、
「俺の立つ場所は…噴水広場になるよな、目の前に噴水があるし。何となくだが、ここが街の中心?」
俺の目の前にある大きな噴水、これを中心に東西南北に舗装された道が続いている。多分これがこの街のメインストリート、人が多くて途切れることがない。多種多様な容姿を持つ人々、見ているだけで興奮する。様々な種族が目に映り、ああ…ファンタジーなんだなぁ~と改めて思う。
見る限り、ここにいる人々はNPC。俺のようなお上りさん状態が一人もいないし、…他のPCは何処にいるのだろうか? キョロキョロと視線をさ迷わせるが、それっぽい奴がいない。それどころか、理由は分からんけど…俺の周囲から人々が遠ざかる。…何故? …何というかビビっているのか? 恐らくNPCだとは思うんだけど、人々の反応が不思議で仕方がない。それと同時に再び感動する、…NPCの反応が人のようなんだぜ? 感動しない方が可笑しいだろ。
遠巻きに俺を見る人々、NPCが気になるがそれよりもだ。まずはステータスを確認しなければな、設定した通りか見ないと。
────────────────────
【ステータス】
名前:ティル
種族:人間
性別:男
LV:1
HP:80
MP:40
STR:8
DEF:8
INT:8
AGL:8
DEX:15
MED:8
LUK:11
【SP】:0
【スキル】
〈投擲〉〈鍛冶〉〈調合〉〈鑑定〉〈採取〉
【固有スキル】
〈俺流〉NEW!
【称号】
────────────────────
……設定通りで安心したがただ一つ違う、空白だった【固有スキル】の欄にスキルがあった。あの最後の問いに答えれば貰えるモノだったな、さて…一体どんなスキルかなっと。……〈俺流〉? 何じゃこりゃ?
〈俺流〉:数多の可能性を全て自己流にアレンジすることで、他とは違う成長を導く。【成長率+補整(特殊)】
内容を見るに、この〈俺流〉はレアスキルなんだろうな。まぁラッキーってことだよな、うん。【成長率+補整(特殊)】っていうのがどんなモノか気になるけど、自ずと行動していれば分かるだろう。とりあえずステータスはこんなものか、さて…次はアイテムだな。
俺はステータスウインドウを閉じ、アイテムボックスを見てみた。中身は…っと。
〔初心者用投げナイフ〕×50
〔剥ぎ取りナイフ〕×1
〔初心者用ポーション〕×5
三種類のアイテムが入っているな、とりあえず投げナイフの情報でも…、
〔初心者用投げナイフ〕:〈投擲〉を選択して始めた方に支給される練習用の投げナイフ。威力を期待してはいけない。 STR+1
これはあれか? キャラ作成時に〈投擲〉を選んだから貰えたんか? …そう考えると、〈剣〉を選んでいたら剣が、〈槍〉を選んでいたら槍が貰えるってことになるんだな。丸腰で放り出さないあたり、運営の優しさを感じるぜ。まぁ威力は流石に弱いけどな、…忘れないように装備しておこう。因みに他の装備は〔布の服〕〔布のズボン〕〔皮の靴〕…最初から装備されていた、…まぁこれは当然か。服を着ていなかったら変態だもんな、うん。……下着ってあるんだろうか?後で確認してみよう。
他のも一応、確認しとかないと。
〔剥ぎ取りナイフ〕:冒険者・生産者なら誰でも持っている剥ぎ取り用のナイフ。対象に突き刺すことで素材を入手することが出来る。
刺すだけで素材が手に入る便利ナイフか、紛失しないようにしないと。
〔初心者用ポーション〕:初めてプレイをする方に支給されるポーション。HPを20回復させる。
回復アイテムが五本、これはありがたい。初めてプレイをする方ってあるけど、βテスター達は貰えないってことになるのか? もしそうなると、芹菜は貰えないってことだよな? …βテスターの初期装備とかってどうなんだろう、テスト時の物を持ち越せたり出来るんかな? ちょっと気になってみたり。
アイテムボックスの中身を確認した俺は、所持金も確認してみる。え~と、1,500Gか。この金額でどれ程のことが出来るのかは分からん、故に何処かの店に行って物価を調べなければ。
自分自身の確認を終えた俺は、歩きながら考える。この次は何をやるべきだろうか? …と。む~ん…と考える俺の目の前を、
「早くフィールドへ行こうぜ!」
「おぉさ! 戦闘を体験してこそだよな!」
なんて言いながら走り去っていく。…今の二人はPCだよな? やっとこ俺と同じ存在を見付けたわけだが、フィールドに戦闘か。あの二人は街の外へ向かっていったようだ、…俺も気になるな。次に何をやるべきか悩んでいたところだし、俺も戦闘というモノを体験してみたい。そう考えた俺は、二人が走り去った方向へと足を向ける。…VRでの戦闘、…どんなものだろうか? TVゲームよりも迫力はあるよな、今のこの光景を見る限り。この身で体験する戦闘とまだ見ぬ魔物、それにドキドキしながらフィールドへ向かう。…さぁ、俺を楽しませておくれ!
────────────────────
街を出て周囲を見回すと、青々とした草原が広がっており目の保養になる。素晴らしい開放感! …ではあるのだが、
「死にくされぇ~!!」
街の中で姿の見えなかったPC達が、
「そっち行ったぞ、逃がすな!」
青く広々とした草原の中に、
「邪魔するんじゃないわよ!それは私の獲物よ!!」
PC達が餌に群がる蟻のように、
「素材GETだぜ!」
魔物達を蹂躙していた。
改めて見回してみれば、草原を埋め尽くすは人の群れ。何てことでしょう…、魔物が沸いた瞬間に狩られるという光景があちこちで。正直…、これじゃあ魔物が可哀想だ。大袈裟に言うとマジでPCが多すぎて満員電車状態、俺の入るスペースがない。俺は大きく溜め息を吐き、ガックリと肩を落とす。これは戦うことを諦めるしかないな、こんな状況の中でなんて戦えるかよ。そう判断した俺は邪魔にならぬよう注意しながら、草原の隅で適当なモノを採取してから街へと戻った。
────────────────────
出鼻を挫かれた俺は、採取したモノを広げる為に宿を探すが見付からない。…今更だけど、この街の名前さえも知らない俺はダメダメ野郎だな。うーむ、どうすればいいのか? 何処かに案内板的な物があったりしないだろうか? そう思って周囲を注意深く見ながら歩いてみれば、先程と同じように人々が散る。混雑する大通りが歩きやすくなるのは嬉しいのだが、流石にへこむぞ?
…さっきは分からなかったけど、人が散る理由がやっと分かったわ。皆さん俺が恐いんですね? ビビっている反応を見て気付けよ俺。…俺の顔は無駄に悪党顔なんだからよ、頬の傷が更に悪党顔度を高めている。…映画の悪役よりも悪役らしい顔と言われたことがある、勿論顔だけだぞ? リアルの地元では、優しいマフィアと呼ばれていたりします。警察の方にも首領ドンと呼ばれた時は、どんな反応をすればいいのか分からんかった。
んなことより宿だよ宿、案内板もありゃしない。人が避ける為に尋ねることすら出来やしない、…どうすんのさ。チラホラとPCっぽい奴を見掛けるが、俺を見ては脱兎の如く逃げ出す。…イベントキャラと間違っていたりしないかい? 俺は一般のPCですよ? そんな感じで途方にくれかけた時、
「「はいはい、どいたどいた!」」
という声と共に、人垣の中から鎧を身に付けた兵士らしき二人組が出てきた。…街を見廻る兵士かな? もしそうであるのなら、この二人に聞けばいいんじゃね? と思ったのだが、
「お前が通報にあった男だな? ……貴方が通報にあった方のようですね?」
何故言い直したし、
「…え~と。お聞きしたいのですが、…闇ギルドの構成員ではないですよね?」
登場時の威勢はどこにいったんだ? というか、闇ギルドってなんだよ。俺は人畜無害の一般PCだぜ?
…自身の悪党顔がここまで恐れられるとは、…NPCにもそう思われるなんてな。…まぁいいけど、反応が本当に人間らしくて驚くわ。
…人々が見守る中、俺達は互いの事情を話し、
「…申し訳ない! まさか客人の方だったとは。」
「別に気にせんでもいいぞ。…悪党顔なのは自覚しているし、慣れてもいるしな。」
兵士の二人は俺に頭を下げ、俺はいつも通りの対応。こういうのは日常茶飯時で、慣れているのは本当だし。
「だがしかし、通報があったとはいえ大変失礼なことを。…何とお詫びすればいいか。」
別にこの二人が悪いわけでもなし、ましてや俺のことを通報した人も悪くはない。まぁ俺自身、悪いことをしていないと胸を張って言えるからそう思えるんだろうけど。この二人の兵士、真面目そうだよな。大丈夫大丈夫と言っても、なんかダメそうだよな。うーむ、…そう考えると思い付くのはただ一つ。
「客人かどうかは分からんけど、…聞きたいことがある。お二人のオススメの宿、それを教えてはくれないだろうか?」
俺的にお詫びよりもそっちの方がありがたい、というかお詫びでそれを教えてくれ!
…というわけで、不審者扱いのお詫びに街を案内して貰えることに。
「なるほどな。客人であるキミはこの街に来て間もないから、何処に何があるのか分からないって訳だな?」
「そうなんだよ。同じPC…客人? に聞けばいいのだろうけど、俺を見ては逃げ出す奴ばかりで聞けやしない。周囲の行き交う人達は言わずもがな、…でお二人の登場ってわけさ。内容はどうであれ、助かったよ。それに、見廻っているのなら良い情報を持っている…だろ?」
色々なことを尋ねるならNPC、PCよりも良い情報を知っている筈。街の人に尋ねるのが基本だろ?
「顔はあれだけど、キミは心が広いな! それに頭の方もキレるときた! 見廻りの俺達が詳しくないってことはあり得ない、詳しくなけりゃ街の治安は守れやしないしな。…いいぜ! 俺達が案内してやるよ。」
「おう、期待させてもらうぜ? お二人さん。」
そして俺は、二人の後に続いて雑踏の中へと足を踏み入れた。因みにNPCの人々は、俺が兵士と共にいるからか…散ることがなかったことを言っておく。
上を見ると突き抜けるような青空、周囲に目を向けるとレンガ造りの家々が建ち並んでいる。まるで中世ヨーロッパ? な街並みだ。TVゲームのRPG世界に自分がいる、…そんな感じがして一人感動に身を震わせる。これが最先端技術、これがVR、これが『F.E.O』の世界! …凄すぎるぜ!
…数分後、俺は我にかえり現在地を確認する。まぁ見る限りは街中だよな、始まりの街ってところか? …で、
「俺の立つ場所は…噴水広場になるよな、目の前に噴水があるし。何となくだが、ここが街の中心?」
俺の目の前にある大きな噴水、これを中心に東西南北に舗装された道が続いている。多分これがこの街のメインストリート、人が多くて途切れることがない。多種多様な容姿を持つ人々、見ているだけで興奮する。様々な種族が目に映り、ああ…ファンタジーなんだなぁ~と改めて思う。
見る限り、ここにいる人々はNPC。俺のようなお上りさん状態が一人もいないし、…他のPCは何処にいるのだろうか? キョロキョロと視線をさ迷わせるが、それっぽい奴がいない。それどころか、理由は分からんけど…俺の周囲から人々が遠ざかる。…何故? …何というかビビっているのか? 恐らくNPCだとは思うんだけど、人々の反応が不思議で仕方がない。それと同時に再び感動する、…NPCの反応が人のようなんだぜ? 感動しない方が可笑しいだろ。
遠巻きに俺を見る人々、NPCが気になるがそれよりもだ。まずはステータスを確認しなければな、設定した通りか見ないと。
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【ステータス】
名前:ティル
種族:人間
性別:男
LV:1
HP:80
MP:40
STR:8
DEF:8
INT:8
AGL:8
DEX:15
MED:8
LUK:11
【SP】:0
【スキル】
〈投擲〉〈鍛冶〉〈調合〉〈鑑定〉〈採取〉
【固有スキル】
〈俺流〉NEW!
【称号】
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……設定通りで安心したがただ一つ違う、空白だった【固有スキル】の欄にスキルがあった。あの最後の問いに答えれば貰えるモノだったな、さて…一体どんなスキルかなっと。……〈俺流〉? 何じゃこりゃ?
〈俺流〉:数多の可能性を全て自己流にアレンジすることで、他とは違う成長を導く。【成長率+補整(特殊)】
内容を見るに、この〈俺流〉はレアスキルなんだろうな。まぁラッキーってことだよな、うん。【成長率+補整(特殊)】っていうのがどんなモノか気になるけど、自ずと行動していれば分かるだろう。とりあえずステータスはこんなものか、さて…次はアイテムだな。
俺はステータスウインドウを閉じ、アイテムボックスを見てみた。中身は…っと。
〔初心者用投げナイフ〕×50
〔剥ぎ取りナイフ〕×1
〔初心者用ポーション〕×5
三種類のアイテムが入っているな、とりあえず投げナイフの情報でも…、
〔初心者用投げナイフ〕:〈投擲〉を選択して始めた方に支給される練習用の投げナイフ。威力を期待してはいけない。 STR+1
これはあれか? キャラ作成時に〈投擲〉を選んだから貰えたんか? …そう考えると、〈剣〉を選んでいたら剣が、〈槍〉を選んでいたら槍が貰えるってことになるんだな。丸腰で放り出さないあたり、運営の優しさを感じるぜ。まぁ威力は流石に弱いけどな、…忘れないように装備しておこう。因みに他の装備は〔布の服〕〔布のズボン〕〔皮の靴〕…最初から装備されていた、…まぁこれは当然か。服を着ていなかったら変態だもんな、うん。……下着ってあるんだろうか?後で確認してみよう。
他のも一応、確認しとかないと。
〔剥ぎ取りナイフ〕:冒険者・生産者なら誰でも持っている剥ぎ取り用のナイフ。対象に突き刺すことで素材を入手することが出来る。
刺すだけで素材が手に入る便利ナイフか、紛失しないようにしないと。
〔初心者用ポーション〕:初めてプレイをする方に支給されるポーション。HPを20回復させる。
回復アイテムが五本、これはありがたい。初めてプレイをする方ってあるけど、βテスター達は貰えないってことになるのか? もしそうなると、芹菜は貰えないってことだよな? …βテスターの初期装備とかってどうなんだろう、テスト時の物を持ち越せたり出来るんかな? ちょっと気になってみたり。
アイテムボックスの中身を確認した俺は、所持金も確認してみる。え~と、1,500Gか。この金額でどれ程のことが出来るのかは分からん、故に何処かの店に行って物価を調べなければ。
自分自身の確認を終えた俺は、歩きながら考える。この次は何をやるべきだろうか? …と。む~ん…と考える俺の目の前を、
「早くフィールドへ行こうぜ!」
「おぉさ! 戦闘を体験してこそだよな!」
なんて言いながら走り去っていく。…今の二人はPCだよな? やっとこ俺と同じ存在を見付けたわけだが、フィールドに戦闘か。あの二人は街の外へ向かっていったようだ、…俺も気になるな。次に何をやるべきか悩んでいたところだし、俺も戦闘というモノを体験してみたい。そう考えた俺は、二人が走り去った方向へと足を向ける。…VRでの戦闘、…どんなものだろうか? TVゲームよりも迫力はあるよな、今のこの光景を見る限り。この身で体験する戦闘とまだ見ぬ魔物、それにドキドキしながらフィールドへ向かう。…さぁ、俺を楽しませておくれ!
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街を出て周囲を見回すと、青々とした草原が広がっており目の保養になる。素晴らしい開放感! …ではあるのだが、
「死にくされぇ~!!」
街の中で姿の見えなかったPC達が、
「そっち行ったぞ、逃がすな!」
青く広々とした草原の中に、
「邪魔するんじゃないわよ!それは私の獲物よ!!」
PC達が餌に群がる蟻のように、
「素材GETだぜ!」
魔物達を蹂躙していた。
改めて見回してみれば、草原を埋め尽くすは人の群れ。何てことでしょう…、魔物が沸いた瞬間に狩られるという光景があちこちで。正直…、これじゃあ魔物が可哀想だ。大袈裟に言うとマジでPCが多すぎて満員電車状態、俺の入るスペースがない。俺は大きく溜め息を吐き、ガックリと肩を落とす。これは戦うことを諦めるしかないな、こんな状況の中でなんて戦えるかよ。そう判断した俺は邪魔にならぬよう注意しながら、草原の隅で適当なモノを採取してから街へと戻った。
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出鼻を挫かれた俺は、採取したモノを広げる為に宿を探すが見付からない。…今更だけど、この街の名前さえも知らない俺はダメダメ野郎だな。うーむ、どうすればいいのか? 何処かに案内板的な物があったりしないだろうか? そう思って周囲を注意深く見ながら歩いてみれば、先程と同じように人々が散る。混雑する大通りが歩きやすくなるのは嬉しいのだが、流石にへこむぞ?
…さっきは分からなかったけど、人が散る理由がやっと分かったわ。皆さん俺が恐いんですね? ビビっている反応を見て気付けよ俺。…俺の顔は無駄に悪党顔なんだからよ、頬の傷が更に悪党顔度を高めている。…映画の悪役よりも悪役らしい顔と言われたことがある、勿論顔だけだぞ? リアルの地元では、優しいマフィアと呼ばれていたりします。警察の方にも首領ドンと呼ばれた時は、どんな反応をすればいいのか分からんかった。
んなことより宿だよ宿、案内板もありゃしない。人が避ける為に尋ねることすら出来やしない、…どうすんのさ。チラホラとPCっぽい奴を見掛けるが、俺を見ては脱兎の如く逃げ出す。…イベントキャラと間違っていたりしないかい? 俺は一般のPCですよ? そんな感じで途方にくれかけた時、
「「はいはい、どいたどいた!」」
という声と共に、人垣の中から鎧を身に付けた兵士らしき二人組が出てきた。…街を見廻る兵士かな? もしそうであるのなら、この二人に聞けばいいんじゃね? と思ったのだが、
「お前が通報にあった男だな? ……貴方が通報にあった方のようですね?」
何故言い直したし、
「…え~と。お聞きしたいのですが、…闇ギルドの構成員ではないですよね?」
登場時の威勢はどこにいったんだ? というか、闇ギルドってなんだよ。俺は人畜無害の一般PCだぜ?
…自身の悪党顔がここまで恐れられるとは、…NPCにもそう思われるなんてな。…まぁいいけど、反応が本当に人間らしくて驚くわ。
…人々が見守る中、俺達は互いの事情を話し、
「…申し訳ない! まさか客人の方だったとは。」
「別に気にせんでもいいぞ。…悪党顔なのは自覚しているし、慣れてもいるしな。」
兵士の二人は俺に頭を下げ、俺はいつも通りの対応。こういうのは日常茶飯時で、慣れているのは本当だし。
「だがしかし、通報があったとはいえ大変失礼なことを。…何とお詫びすればいいか。」
別にこの二人が悪いわけでもなし、ましてや俺のことを通報した人も悪くはない。まぁ俺自身、悪いことをしていないと胸を張って言えるからそう思えるんだろうけど。この二人の兵士、真面目そうだよな。大丈夫大丈夫と言っても、なんかダメそうだよな。うーむ、…そう考えると思い付くのはただ一つ。
「客人かどうかは分からんけど、…聞きたいことがある。お二人のオススメの宿、それを教えてはくれないだろうか?」
俺的にお詫びよりもそっちの方がありがたい、というかお詫びでそれを教えてくれ!
…というわけで、不審者扱いのお詫びに街を案内して貰えることに。
「なるほどな。客人であるキミはこの街に来て間もないから、何処に何があるのか分からないって訳だな?」
「そうなんだよ。同じPC…客人? に聞けばいいのだろうけど、俺を見ては逃げ出す奴ばかりで聞けやしない。周囲の行き交う人達は言わずもがな、…でお二人の登場ってわけさ。内容はどうであれ、助かったよ。それに、見廻っているのなら良い情報を持っている…だろ?」
色々なことを尋ねるならNPC、PCよりも良い情報を知っている筈。街の人に尋ねるのが基本だろ?
「顔はあれだけど、キミは心が広いな! それに頭の方もキレるときた! 見廻りの俺達が詳しくないってことはあり得ない、詳しくなけりゃ街の治安は守れやしないしな。…いいぜ! 俺達が案内してやるよ。」
「おう、期待させてもらうぜ? お二人さん。」
そして俺は、二人の後に続いて雑踏の中へと足を踏み入れた。因みにNPCの人々は、俺が兵士と共にいるからか…散ることがなかったことを言っておく。
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