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第18話 ~会いに行く準備。
しおりを挟む爽やかな朝が来ました。婚約者であるエジュル嬢へ会いに行くまで後一日、正確に言うなら後四日になるか。…馬車での移動が三日もあるからね、長い道のりである。まぁ今回は父上と母上も一緒だから退屈はしないだろう、特に母上が騒がしいしね。……そう考えると、…今から疲れるなぁ~。
父上と母上が揃って領地を離れても大丈夫なのか? そう思うだろうけど大丈夫なんだなこれが。素質調べの時も二人は不在であったし、その時も無事に領地を色々なことから守り切っている。それは優秀な使用人達のお陰である、その中でも執事のヒョードルが超人だからね。国内でも上位の実力みたいだし、父上と母上を敵に回す貴族もほぼいない。そして我が私兵団もどこぞの精霊騎士団を余裕で超えて国内最強と言ってもいい、『楽なものです。』とヒョードルは余裕だし。…頼りになるねヒョードルは、…名前からして強そうだし。
共に行く使用人はネムとダリアの他三人、護衛は五人の少数。全員戦える者だから襲われても返り討ちに出来るだろう、…俺も十分強いわけだし。災害級の魔物でなければやられない我らが一行、万全でありますよ。
…で朝食が終わって何をするか、日課の修行…鍛練はやるにしてもね。明日の朝にはこの屋敷を発つわけだから、俺も俺なりに準備をしておこうかね? エジュル嬢の所はともかく、レイチェル嬢の所では悪魔が待っている。一応自作の剣の他に、懐にナイフを忍ばせておくのがいいだろう。ナイフには光の精霊の恩恵が少しはある、悪魔に有効であろう。俺の《破邪》と合わせれば決定打になるやも!
ならば父上や母上、護衛達にもその武器を渡せばいいだろう…と思うだろ? だが残念なことにそれは出来ないのだ。所詮は五歳児、どんなに能力が高くとも体力には限界があるわけで。自分用の剣とナイフの二本を作るのが精一杯、鍛冶は厳しいからそれ以上の数を作るのはちょっとね…。しかも俺的に完璧な物ではない、故に人様に渡して使わせるなんてとても出来やしない。プロではないからね、…そこらは分かって欲しい。
武器はこれでいいとして、他には着替えとかか? …ってこれは母上とかネムとダリア、使用人達が用意する物であろう。俺が手を出せば邪魔になるか、…そうなるとどうする? ………う~んと考えて思い付いた。俺から婚約者へ何かプレゼントを贈るのはどうだろうか? 俺が今までに何となくで作った物、そう…ヤバいヤツをプレゼントするのだ。
昨日の話で厳重に保管としたのだが、これから両家は強く結ばれることになる。俺の規格外っぷりを説明し協力して貰うのだから、その分のささやかな恩恵をプレゼントしてもバチは当たるまい。…賄賂みたいな物になるのかな? 下心はない…とはいまいち言い切れないが、相手方のことを考えた心尽くし的な物を選んでプレゼントしよう。サプライズにしたいし移動の邪魔になるからこの袋・・・に入れておいて、父上達にも…内緒でいいか。準備で忙しそうだからね、現地報告でもいいだろう。…たぶん怒られることはないと思う、…質問はされると思うが。
まず最初に会うエジュル嬢に対してのプレゼント、…何が良いかを考えてみる。…え~と、母上からの情報によると彼女は人外扱いをされているとのこと。エジュル嬢自身が美しいということもあるけど、彼女が所持しているスキルがある意味強力であることが影響しているらしい。未知の類いである月と森の属性も宿しているようで、…たったそれだけのことで人外扱いか。神殿側はエジュル嬢の味方で貴族や世間から彼女を守っている、…今回の婚約に対しても彼女はとても喜んでいるらしい。へぇ~…喜んでいるのか、俺的にも嬉しいね。…でスキルによってシルバーウルフを従えていると、…俺と同じ《従魔》を所持しているわけだな?
そう考えると贈る物はそれに因んだ物が良いだろうか? …と言ってもそれ系のヤバい物は一つしかないわけで、
〔美毛のブラシ〕〈水〉の精霊の力で汚れを落とし、〈火〉と〈風〉の精霊の力で毛を乾かし解かす。そして〈森〉の精霊の力で毛を美しく仕上げることが出来る至高の動物・魔物専用のブラシであり、準精霊具。
こういう物があるのだ。精霊具である眼帯を作って騒いでいた癖に、準精霊具があるんかい! と思われるかもしれない。しかしながら俺も知らなかったのだ! 何となく作って出来が良いから大事にしまっておいた物が、《聖魔の瞳》で鑑定すればコレって…俺もビックリっすわ!
…でコレは《従魔》があるからいずれは…ってことで、こそこそ作成したものである。素質調べの日からそんなに経ってはいないがこの逸品に至るまで、相当数のブラシを作っては売っての小遣い稼ぎをしてきた。…売った物の中にヤバい物がなかった、…それを切に願いたい。…まぁとにかく素晴らしい物だから手元に残しておきたい、しかし今のところ何も従えていないわけで。これから先も未定、このまま袋の肥やしになるぐらいならってことだ。それに同じような物なら作れそうだし、エジュル嬢を喜ばせたいしね。
…プレゼントを渡した後、先達として《従魔》のことも聞きたいな。修行を中心に行動をしているから、《従魔》よりも他のスキルの方に力を注いでいる。持ってはいるけれど使ったことがない、使おうと思えば使えるんだろうけどもね。強力なスキル故の何かしらのデメリットがあるかもしれない、…それを考えるとどうにも後回しに。そういうことでエジュル嬢と会うのも楽しみだけど、話を聞くのも楽しみだったりしているわけなのだ。
エジュル嬢の次に会うのがレイチェル嬢、悪魔に憑かれている可能性が非常に高い婚約者。会うのは危険だが、俺の婚約者となる令嬢故に会わないわけにはいかない。母上が憑かれるぐらいだからな、本当にヤバい存在だよ…悪魔って奴は。公爵家の方々も憑かれた母上と同じ、ほぼ敵方と考えた方がいい。何だか恐いよね? …レイチェル嬢の下へ会いに行くのは。
…が、憑かれた母上を助けることが出来たのだから婚約者達も助けたい。母上の話から察するに、レイチェル嬢以外の方々は助けることが出来るだろう。憑かれた母上と似たり寄ったりっぽいし、…問題はレイチェル嬢になるわな。悪魔の本体? が憑いていると思うし、恐らく誰よりも長く憑かれているのだろう。…そんな彼女を俺は、…精霊の力を借りてになるが救えるのだろうか?
……とと、救えない方寄りに考えちゃあダメだよな。絶対に救ってみせる! という心構えでいなければ、何せ俺の婚約者なのだから。そういうわけで、助かる前提でプレゼントを用意しなければ。聞くところによると、レイチェル嬢は完璧少女とのこと。故に何をプレゼントしても有効活用してくれそうだけど、さて…何を贈ろうか?
とりあえず過去に作った物を片っ端から鑑定し、贈るに相応しい物を探す。途中でネムとダリアが手伝いに来てくれたが、…そんなにガサゴソしていたかね? と思いつつ探していると見付けた。
〔悪意のフィルター〕目に見えない悪意を精霊の力にて感知、視覚によって見ることが出来るようになる伊達眼鏡。上位鑑定系スキルかユニーク鑑定系スキルを所持していなければ、ただの伊達眼鏡と化す準精霊具。
こんな物を俺は作っていたんだなぁ~…。
う~ん…と思い出してみれば作っていたなコレ、ナニカが見える眼鏡は作れるのか? …なんて思って適当に。レンズの部分はネムとダリアが用意してくれて、フレームの部分を自分で作ったんだっけ。…で作ったは作ったんだけどただの伊達眼鏡、かけても何も見えやしない普通の伊達眼鏡。ガラクタ認定してしまい込んだんだっけ? …今以上にガキだったからなぁ~、当時五歳未満で作れたって事実が凄いんだけどもね。
この伊達眼鏡が凄いってーのは分かった、本来であれば自分で使うのが一番なんだが必要ないんだよな。俺の《聖魔の瞳》は何でも見えるモノ、かけた所で効果が被るが故に必要なし。そしてレイチェル嬢は《精霊の目》という上位スキル? ユニークスキル? を持つ、たぶんだが俺の《聖魔の瞳》よりも格が下だと予想する。ならばこの〔悪意のフィルター〕が役立つだろう、…役立つといいな。
婚約者の二人に贈るプレゼントを用意した俺は、軽く瞑想等の鍛練をしてから明日に備えて早めに就寝した。明日は婚約者の下へ行く、しかも久々の親子揃ってだ。楽しみではあるが不安もある、…悪魔との対峙は確実だからな。しかしながら俺には頼もしい精霊達がいる、…精霊達を信じればきっと大丈夫。…大丈夫な筈、…………ぐぅ~。
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