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第13話 ~様子が変だ。

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《ステータスオープン》により俺の規格外なスキル数と称号数が判明、それを知り飛び出していった父上を見送り自主的に修行再開。《隠蔽術》を習得して数日後、父上と母上が揃って帰って来た。出迎えたんだけど母上の様子が少し変、…いつもなら直ぐ様抱き着いてくる筈なのだかそれがない。…どうしたんだ?



挨拶もそこそこに、フラフラと家の中へ入っていく母上。それを見送ってから気付く違和感、…母上の周囲って澱んでいたっけか? 闇とは違うナニカを感じた。怪訝な顔でいると父上が、



「…お前も気付いたかミュゼよ。ルセリナの様子が変なのだ、…いつもの調子ではない。…それにあの澱み、…あれは一体何なのだ?」



そんなことを俺に言ってきた。やっぱりというか流石というか、父上も気付いていたようだ。………父上は平常だよな?













母上は自身の部屋に閉じ籠ったまま出てこず、俺も声を掛けようかと思ったんだけどね。…入りづらいんよ、…そんな雰囲気を扉越しに放ってません? 母上。そんな感じで部屋の前を彷徨いていて気付く、…こんな感じのことを何処かで経験したような? と。修行がてら領地内を走り回っていた時、ゴブリンとかを討伐していた時、……そこらをやっていた時にこのような感じ方をした時があった。



…何だっけかなぁ~、…思い出せないけど思い出さなきゃ駄目な気がする。…山奥の薄汚い場所、…廃墟というか廃教会? …そこでこのような空気に触れたような? …そこでどうしたんだっけ?



そんなことを考えていると父上が現れて、



「ミュゼよ話がある、…俺の執務室へ来なさい。」



と言ってきたので、父上の後に続き執務室へ。そこで父上は俺に向き直り、



「正式にレイチェル・アンデバラン嬢とエジュル・ラングード嬢、この二人がミュゼの婚約者と決まった。準備が済み次第…挨拶をしに行くぞ、まずは公爵閣下の下へと行くのが常識ではある。」



そこで言葉を区切り、視線を母上の部屋の方へ。……その反応を見るに、母上がああなったのは公爵家で…ってことかね? そう考えると最初に向かう先は、



「…が、何やらきな臭さを感じるが故にまずは王都の神殿へと向かう。挨拶と共に婚約者であるエジュル嬢との顔合わせ、そして一応…ミュゼのステータスも見て貰う予定だ。」



…になるでしょうな。母上の様子も変だし、その公爵の下へと行った父上もきな臭いと思っているようだし、…その公爵家でどうなっていたのかね? 気になるわ。



とにかく公爵家のレイチェル嬢よりも先に、まずは神殿のエジュル嬢へと会いに行くこととなった。その段取りを父上と話し合い、三日後に王都の神殿へと向かうことになった。あちらさんも同じく迎える段取りがあると思うから、早馬で俺達が向かうってことを知らせておく。アポなしは失礼だもんな、常識ッスよ常識。













婚約者との面会の件はこれで良いとして、…後は母上のことだがどうしたものか。父上も公爵家へ行って数日間滞在したわけだが、母上のように変な様子は一切ない。父上も少しだけ気分が悪かったみたいだが、家…というか領地に入ったら元に戻ったとか。…しかし母上は長いこと公爵家にて世話になっていたらしく、父上とは違い領地に入っても変なまま。一体全体何なのさ、…確実に公爵家が原因だよね?



父上に公爵家の様子を聞いてみれば、別に変わった所は思い浮かばないとか。ただ公爵閣下の顔色が普段よりも白かったっていうのはあった、それ以外は見知っている公爵閣下そのものだったらしい。他の者も同じで、母上もその時はいつも通りであったようだが、



「…そういえば、最後にミュゼの婚約者であるレイチェル嬢が見送りに出てきたな。暫く見ぬ内に恐ろしい程綺麗になっていた、…溢れだす妖しい魅力がそうさせているのだろうか?」



俺の婚約者であるレイチェル嬢は妖しい魅力に溢れた美少女らしい、……めっちゃ怪しく感じるのは気のせいか?



「…今思えば、彼女の妖しい魅力に毒されて気分が悪くなったような気がする。ルセリナのほんわかオーラも飲み込まれていた? ………ということはレイチェル嬢が原因になるのか? きな臭さを感じたのも彼女が現れてから、…というか妖しい魅力ではなく澱んでいたと考えれば?」



少しずつ思い出しては首を捻る父上。…その言葉を聞く限り婚約者が黒に近いよね? まだよく分からんけどその怪しい娘が婚約者なの? ……大丈夫なんか?



婚約者と決まった以上は挨拶をせねば失礼にあたる、…たとえどんな理由があろうとも。そういうわけできな臭かろうが、レイチェル嬢が極めて怪しかろうが面会はせねばならない。父上も多少の影響はあったようで、…混乱が見られるが先に神殿へ向かうと判断したのは流石と言えよう。多少の混乱があろうともきな臭さを忘れずに向かう先を決めるとは、…父上に対しての尊敬がうなぎ登りだぜ!



…因みに母上のことは様子見ってことで、…ただの体調不良って線もあるし。様子次第で三日後の神殿訪問は留守番となろう、…まぁ当然だよね。







────────────────────







次の日、母上はどうなったかな? …と思った俺は部室の前へ。するとどうだろう、部屋の中からあの雰囲気というか気配というか、そういうものが一切感じなくなったのだ。…どういうことだと思ったけど、母上の安否が最優先。



「…母上、部屋にいらっしゃいますか? …お加減の方はよろしいでしょうか?」



ノックをして扉越しに声を掛ければ、中からバタバタとした音が。本能的に危ないと察知し、扉から離れようと試みたけど一歩及ばず。勢いよく開けられた扉から伸ばされた手、それに捕まって…、



「ああミュゼちゃん、私の可愛いミュゼちゃん! …私を見捨てないでくれていたのね? …嬉しいわ!!」



俺は母上に抱き締められて頬擦りをされていた。いつも以上に力が強い! マジでどうしたんだ!?



「は…母上! 私が母上を見捨てるなんてことはあり得ません! ……ですから力を緩めて、…お願い!!」



母上を侮っていた、…後衛職なのに馬鹿力! ……母上に締め殺されるぅ~!!?













その後ネムとダリア、そして父上の登場により解放された俺。解放されたというか何というか、母上は父上達を見て俺の時と同じようなことを言って喜んだ。あの変だった母上がいつも通りの騒がしさに戻り、呆気に取られながらも素直に喜ぶ父上達。騒がしかろうがやはり母上はこうでないと、よかったよかった。



…で、元に戻った母上に話を聞いてみれば、



「あのね? 最初はいつも通りだったのよ? …でもね? 婚約話が進むにつれて何か変だなって。ミハイルが来た時は消えていたんだけど帰った後はね? …何かこう一気に心が変になっていって、…私は今まで悪夢を見ていたのよ! とびっきりの悪夢をね!!」



恐ろしい悪夢を見ていたという。父上的にはいつもの母上と映っていたみたいだが、内面では変になっていたようだ。それはそれでショックを受けている父上、…仲良し夫婦だもんね?



話を聞く限り、公爵家が可笑しいっていうのは確実だな。その原因が婚約者と決まったレイチェル嬢、…黒に近いってことなんだけどね? …危険であるけど会わねばならない、格下の男爵家はツライですな。唯一の救いは先に神殿へ向かうってこと、……どうなるんでしょうね? ホント。
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