『天空の島』アリス王と眷属の騎士団~前世での行いが評価され転生する際の善行ポイントが信じられないほどあったので天空の島と城を手に入れた結果~

福冨月康

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第15話

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 やはり俺には美少女と上手く会話する術は皆無のようだ。
 再びマロンが顔を真っ赤にして、固まってしまった。

 ついに俺は石化の魔法使いだな!

 ……そんなフォローを自分に入れてみても、まったくテンションは上がらない。
 

 が、いまさら後悔してもあとの祭りである。
 他に何か言おうにも次の言葉が出てこない。

 と言うか余計な事を言った場合、再び傷口を広げる可能性がある。
 なので、

「まあ、その、大切といっても色々な意味ではあるがな……」

 などと訳の分からない言葉をつなげるのが精一杯。

 マロンは「はい……」と答えながら顔をさらに赤くする。

 ……マロンの態度を見ていると、何故か俺まで顔が赤くなる。
 こういう場面でどうすべきか、もはや俺の頭脳では選択肢が無い。
 完全にフリーズ状態だ。

 ……それにしても、こっち方面での前世の記憶も壊滅的なまでの役立たずだな……。

 まったく上手い言葉が見つからない。
 この場を一瞬で切り抜ける為の、女子との高度な会話スキルが欲しい……。

 ……これ以上考えていても、良い言葉など浮かびスそうも無い。
 仕方が無いので『大切』の意味を俺なりに誠意をもって細かく説明する。
 すると、

「我が君。……あの、図々しいお願いとは思いますが……」

 とマロンが上目遣いで俺に何かを言いたそうにしてくる。

「……な、なんだ?」

 今度も何か言葉を選び間違えたかと思って、動揺しながらも先を促す。

「はい。……眷属として大切って……私の事・・・を大切と思って頂いている……と思っていて良いでしょうか……?」 

 と恥ずかしげに、そしてじゃっかん自信なさげに尋ねてくる。
 当然、マロン本人が大切なのと同義である。
 なので、

「……そ、そうだ」

 と俺もやや恥ずかしげに返答する。
 すると、

「……は、はい。ありがとうございます」

 と小声で言いながら、顔を赤くして俯くマロン。
 ……しかしマロンは可愛い。

 それを言うと石化の魔法がかかってしまうので言わないけど。

 ともあれ、『大切』の意味は上手く説明できてよかった。



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



 さて、マロンの問題も無事片付いたし、やっと次だ。

 侵入者の事もあるしもう一度『ダンジョンコア』を通して天空島を確認したかったのだ。
 あとは、それに付随して、食料となりそうな物も見ておきたかった。

 当然この広さだから、全てなど見れないけど。
 城の周辺をチェックするぐらいはしたい。



 ……とは言うものの、一時間ほど見てみるが、城の周りに怪しい影などは確認できない。

「このあたりは誰もいないようだな」

「はい。あの者達だけだったようでございます」

 一緒に確認していたマロンにも、異常は確認できなかったようだ。
 もし見落としていたらと不安はある。
 しかし、いつまでも確認していては切りが無い。

 それならば、取り敢えずは次に移る方が建設的な判断だろうかと思う。
 現状、木の実とキノコなどを採りに行こうかと思うわけだが……。

 残念な事に城の周りには目ぼしい物はなかった。
 ただ幸いな事に、最初に『遠見』で島を見たとき、外周部にそれらしきものがあった。

 俺もマロンも食料は必要だし、それを確保しようと思う。

 良く分からない木の実やキノコなどは毒の心配もあるが、マロンは『浄化』が使える。
 マロンは聖精霊との親和性が高いエルフ種で『聖なる癒し』という回復まで行なえるのだ。

 まさにマロンは癒し系だな……。
 天使か!
 マロン。お前は実は天使だな!

 ……。

 ……さて。
 馬鹿を言っていないで次に進まないと。

 俺は取り敢えずダンジョンコアに『遠見』を使い、木の実がある場所を確認する。

 すると俺があたりをつけた外周部の森に、イチゴのような形の木の実がなっている。
 先程はサッと見ただけだったが、良く見ると、他にもキノコや栗のようなものもある。

 これだけあれば、二人には十分過ぎるほどある。

 さっそく採りに行こうと思うが、留守番はどうしようか?
 ……ガーゴイル、甲冑騎士、ゴーレム。
 侵入者の事を考えれば俺かマロンが残っても良いのだが……。
 ガーゴイルあたりを供に、俺が行くの良いかもしれない。
 いや、いっそのこと一人で行くか?

 しかしマロンを置いて俺が一人で行くとなると……、

「我はこれから、あれらを一人で採集しに行くつもりだが……」

「いけません。供をお連れにならず外出など。危険すぎます」

 俺が一応そう言って、マロンの反応を確かめてみる。
 すると予想通りマロンは即座に異を唱える。

「ふむ、そうか……」

「ですから私が我が君の供」

「ならばゴーレムを供に連れて行くか」

「えっ? あのっ」

「しかしゴーレムでは、採集は手伝えないか。あの手ではな……」

「で、でしたら!」

「いっそマロンとガーゴイル共にまかせるか?」

「えっと……その」

「しかし我自身も現物を見たいしな……」

「な、ならば私が供を致しますので、ご一緒させてくださいませ。我が君」

「む、そうか。マロンが手伝ってくれるか?」

「は、はい! どうかお傍に侍る事をお許し下さい」

 思った通り、マロンを身を乗り出して自薦してくる。
 まあ本当のところやや悩む。
 どの組み合わせでも利点もあればその逆もある。
 今回は、マロンの可愛い売り込みに負けるか?

 正直、木の実の採集くらいなら、留守番は必要ない気もする。
 実は、ダンジョンは俺が指定した者以外が城に侵入すると、それを俺に知らせる機能がある。

 しかも城に入ってすぐにあったはずのダンジョンコアルーム。
 このコアルームは、今は最上階に移動している。
 防御モード終了後に一定時間が経つと、自動的にそうなる仕組みなのだ。

 ゆえに入って直ぐにダンジョンコアがある、という危険性は心配ないのである。
 あえて言うのであれば、あの盗賊団が来たときが一番危なかった。
 ……まあ警戒するほどの敵でもなかったが。

 そういう訳で現在、俺のダンジョンは最上階のダンジョンコアルームや『宝物の間』の階層など、一部を除いて一階層から初期状態の階層が続いている。

 具体的には横幅、高さ200メートル、長さ200キロの何も無い空間。
 全面が橋と同じ素材の白い石で出来ている。
 ただダンジョンの場合は、石から僅かな光が漏れているようだ。

 この巨大通路は終点まで行くと、高さ200メートルの階段があって、次の階層に続く。
 それが延々と繰り返される。

 200キロを200階層。単純計算でも、40000キロ。
 ……『コアルーム』の階層とかを計算に入れるともうちょっと短いけど……地球を約1周の距離だ。

 これだけ広ければいざという時も、俺とマロンが戻ってくる時間が稼げるだろう。

 それなら俺もマロンも留守をしても大丈夫かな、とも思うわけだ。
 それに二人とも食事を必要とするため、色々と現地で見て、分かっていた方が良いとも思う。

「分かった。マロンに供をしてもらおうか」

「はい。ありがとうございます我が君」

 俺の言葉に嬉しそうにマロンが返事をして来る。
 この顔を見れば、もう断れそうもない。
 俺は「うむ」と返事をしてマロンも一緒に連れて行く事にする。

 そこで俺は場所の最終確認のため最後にもう一度、外周部を大写しにする。
 と、

「ん?」

「どう致しました? 我が君」

「ああ。あの外周部の下の方だが……」

 俺は答えつつ、ダンジョンコアに映し出されたある部分を指差す。

「あれは……」

「そうだ。人がいる」

 そう言いながら出来るだけ映像を大きくする。
 そこには数十人の人間と思われる者達。

 そして、船?

 一瞬、自分の目を疑ってしまうが、空を浮く帆船が、天空島に横付けされている。
 ……天空島が存在し、魚が空を飛ぶ世界なら、船が浮いてもおかしくないか。

 人間の大きさから割り出せば、全長は大体30メートルくらいだろうか。

「我が君……」

「そうだな……木の実採集の場所にも近いし、取り敢えずあれから少し離れた場所に『限定転移』して様子を見に行こうか」

「はい」
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