『天空の島』アリス王と眷属の騎士団~前世での行いが評価され転生する際の善行ポイントが信じられないほどあったので天空の島と城を手に入れた結果~

福冨月康

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第13話

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 若干望まない形ではあったが、戦闘が終わったので、男達の持ち物を検分して見る。

 この世界のお金であろう硬貨、銅28枚・銀12枚。
 小石ほどの大きさの宝石数個。
 剣・鎧・ナイフ。
 携帯食とおもわれる、乾し肉? とパン?らしきもの。
 ビンとその中に入っている用途不明の液体。
 その他、用途の分からない品が数個。

 その用途の分からない品の中には、三人が共通して持っている物もあった。
 
 大判くらいの大きさで、赤黒い色の怪しく光る石。
 盗賊団の証明書的なものだろうか?

 ここに来た目的は何か?
 どうやって来たのか?
 何かのヒントになるかと思って検分したが、特にそれらしいものは無い。

 俺に『鑑定』のスキルでもあれば多少違うかもしれないけど……。
 今後何かの役に立つかもしれないし、一応マッジクバッグに入れておく。

 今はこれ以上考えても仕方ない。
 それよりも他の侵入者の事も警戒しなければならないので、マロンとモンスターを連れ念の為に城の周囲を見てまわる。
 と、橋の向こうにウツボもどきが横たわっている。

「我が君、あれはダンジョンコアで見たものでは……」

「確かに、だが……」

 俺は違和感を感じて『遠見』を使って更に周囲を見てみる。
 どうやら数百メートル先にも、ウツボもどきが二匹いるみたいだ。

 この二匹も手前のウツボもどき同様に横たわっている。
 良く見ると三匹とも息も絶え絶えと言う感じで、口から泡を吹いているウツボもどきもいる。

 しかもこの三匹。三匹ともが鞍をつけている。

「同種ではあるが、鞍を付けている。ダンジョンコアで見た個体では無いようだな」

「はい。ですが、そう致しますと何処から来たのでしょうか?」

 確かに何処から来たのか気にはなる
 が、予想は付く。
 恐らくあの男達と共に来たのだろう。
 数もちょうど合う。

 しかしこのウツボもどき、騎乗が出来るのかな?
 鞍が付いているのだから当然できるか……。
 となると、外周部にいたウツボもどきの事もある。
 あわせて考えれば、乗り捨てながら城まで来たのか?
 それなら外周部にもウツボもどきがいた説明が付く。

 それで素早く城まで到達したという事かな?

 外周部のウツボもどきは乗り捨てられたとはいえ、結構なスピードで飛んでいた。
 俺が『遠見』を使ってダンジョンコア越しに島を見ていた時間は2、3時間。
 その前にもマロンが生まれたり、あれこれと考え事をしていた。
 確かに可能なのかもしれない……。

 しかしそんなに急いで城まで来たのか?
 ダンジョン領域は素早く通り抜けて、ダンジョンに至るのがこの世界の常識なのだろうか。

 ……一番魔石とやらに関係があるのか?

 一応ガーゴイルからは魔石を回収しておいたが……。
 うっすらと虹色で、ピンポン玉ほどの大きさのものだった。

 ……まあこれが魔石かどうか、異世界初心者の俺には正直分からないのだが。
 モンスター達に魔石の回収を命じたら持って来たので、間違いないと思う。

 しかし、先程も思ったが、今はこれ以上考えても仕方ないか。
 ともあれ、分からない事は徐々に情報収集しながら確認して行くしかない。
 悩んでいても安全は確保されないのだ。
 次に進むしかないだろう。

 俺は取り敢えず、ウツボもどき三匹は捕まえて置くように命じて、さらに、

「今後このダンジョンに侵入する者には一切の手加減は不要。橋を超えて来た者は無力化し拘束しろ。それが不可能であれば全力で討滅せよ!」

 と、まだ俺は少し甘いかなと思いつつも命令を残し、ダンジョンコアルームに戻る事にした。



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



 ダンジョンコアルームに戻ったのは、急いでやるべき事があったからなのだが……。

 ……どうも気が散るな。

「マロン! 何か言いたい事があるなら言え」

 俺はそう言って斜め後を振り返る。
 もはやマロンの定位置と化した場所だ。

「え、は、……は、い?」

 と間の抜けた声を出して答える。

「マロン。お前には自由な発言を許可したはずだ。言いたい事があれば言え」

 先程からマロンの強い感情が俺に伝わって気が散るのだ。

 前にもマロンの感情を感じ取った事がある。
 自分の事ながら思い出すだけで赤面してしまう、マロンが俺に向けた感情。
 『無垢な愛情と忠誠心』。

 まあその無垢な愛情が、恋愛の愛情か、王に向ける敬愛か、親に向ける親愛かは分からないのだが……。
 ……どれだろう?
 知りたいような、知りたくないような……。

 いや、今はそれを考える時間では無いか。

 それよりも、どうやら眷属であるマロンが俺に対して強い感情を向けると、俺はそれを感じ取る事が出来るようだ。

 それは良いのだが……良いのか?
 ともかく今は良いとして、先程から強烈な悲しみの感情を俺に向けてくるのだ。

 大体ガーゴイルが倒された辺りからずっとだ……。
 そんなに悲しかったのだろうか?
 優しい子なのは良いのだが、俺に悲しみの感情を向けられると、気になるし、気が散る。

「マロン。お前の話は聞いてやりたいが、俺はいま時間が……」

 と言い掛けて気が付いた。
 マロンの感情が、強烈な悲しみから、大きな驚きとなって俺に向けられている。

 なるほど……そういえば言ってなかったか。

「マロンと言うのはお前の名前だ。今後はそう名乗ると良い」

 俺がそう言うと、マロンの瞳が見開かれ、パッと花が咲いたような喜びの表情になる。

「ありがとうございます! 我が君」

 ……相変わらずの天使っぷりだ。

「お、おう……」

 何が『なるほど……そういえば言ってなかったか』だ。
 何が『お、おう……』だ俺は。

 アホか? アホなのか俺は?

 と、マロンの天使笑顔に動揺した自分に突っ込みを入れつつ、

「気に入ったようで良かったな」

 などと上から目線で言ってみる。

「はい……」

 嬉しそうにはにかむ顔が、また可愛い。

 いや、それよりも!
 俺はやる事があるのだ!
 忙しいのだ!

 ああ、でもマロンの天使笑顔を見る忙しさもあるな。
 ……ありかな?

 ……ありだな!
 この忙しさ!
 ありだな!
 そして俺は、やはりアホだな!

 しかし、いつまでも、こうして遊んでいる訳にもいかない。
 だがしかし、いつまでも、こうして遊んでいたい!

 その為には働かなくては!
 この世界で生き残れる為に、安全・安心・安定を確保するのだ!
 そして、心ゆくまで自由に生きるのだ!
 サッサと仕事をしよう!

「……ところでマロン。先程から何か気になる事があるようだが?」

 俺が改めて問うと、マロンはハッと顔を上げ、とたんに悲しげな表情になる。
 またこんな表情になるとは、聞かなきゃ良かったか?
 と言っても今後の為にも眷属の事はなるべく知っておきたい。
 後で聞こうかとも思ったが、やはり気になる。そして、気が散る。

「我に関する事か? 遠慮なく言え。むしろ黙して秘する事は、礼を欠く行為である」

 まあ、俺の事ではないのは分かっている。
 ガーゴイルの事だろう。
 しかし、マロンのこの優しい気持ちを慰めてやるのも俺の仕事だろうか?
 慣れない事だし、ちょっと恥ずかしさというか、テレはあるけど、しょうがないのか……。

「はい。お恥ずかしながら、……我が君に関する、と申しますか……その、お言葉で……いえ、申し訳ありません。眷属の分際で、私が悪いのでございます。ただ……」

 え、俺? 俺なのか?
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