『天空の島』アリス王と眷属の騎士団~前世での行いが評価され転生する際の善行ポイントが信じられないほどあったので天空の島と城を手に入れた結果~

福冨月康

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第3話

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 強烈な光の後、意識を失ってから目を覚ますと、そこには青い空。
 転生の間とは違い、地球のような青い空が広がっている。

 もう、転生したのかな?

 まあ、そうだろうな。
 この状況で転生ではない理由がない。
 しかし、「はい、チーズ!」ではないけど、何か一言ほしかった。

「はい、転生!」みたいな?

 それにしてもダンジョンマスターは成人の姿で生まれる上、俺は前世の記憶を保持したままだ。
 そのためか生まれ変わった実感がいまいち無いな。

 視線を正面に向けると、ここは地形的に比較的高い位置にあるようだ。
 視線の先は緩やかに傾斜が下がっていく。
 巨大な石やら灌木の茂に邪魔されず、ずいぶん先に巨大な森や湖らしきものも見える。
 ……いや、海だろうか?
 しかし、更にその先に、山々の連なりが見えるから、やっぱり湖かな?
 いや、半島形の構造になっていて、海を囲むように半島の山があれば、海か?

 まあ後で確かめれば良い。
 それよりも、ここはどこだろうか?

 キョロキョロとあたりを見渡して、後ろを見た瞬間。
 一瞬、自分の動きが止まった。

 ――えっ……?

 城がある。
 湖の上に白亜の城が建っている。

 美しいシンメトリー構造で、直線と曲線を上手く組み合わせた、荘厳で華麗な白亜の城。
 西洋風の城? で合っているのだろうか?
 西洋風だが、いままで見たことのない美しい城。
 城の真ん中、半ばほどから水が滝のように流れ落ち、城の周りにある堀を満たす。

 その美しさに、思わず息を呑む。
 物語や、神話の世界のようだ。

 ……。

 ……俺の目の前には、城に向かう橋が架かっている。
 ここで、ぼーと、突っ立っていてもしょうがない。取りあえず、城に向かうか?
 ここがどこだか、確認せねば。

 まあ当然、大前提としてここは転生先の世界であろうが。
 その転生先の世界の、どこなのか?
 それを知らねば何も始まらない。

 なぜなら正確な情報は、身の安全に直結する。
 正確な情報を知らずに、ブラック企業だと入社後に気づいても遅いんだ!
 早急に現状を確認せねばならない!

 慎重に、しかし、可及的速やかに情報収集だ!

 いや、しかし、ここが紛争地帯や、人間差別社会だったらどうする?
 捕まって奴隷とか、嫌だよ俺は。

 おもわず、固まってしまう俺。
 ……情けない。
 ……へたれだな。

 とは言え、ビビッても仕方あるまい。普通そうだ。
 こんな場面でグイグイいく奴の方が、生存本能が薄いと思う。
 地球では、ビビリの兵士のほうが、長生きすると、どこかで聞いた気がする。
 取り敢えず、安全な日本の感覚では駄目だろう。

『山で道に迷ったら、その場に止まれ!』の精神である。

 そう考えると、ラノベの主人公達のグイグイさたるや、無謀を通り越してもはや勇者だな。
 ……まあ実際、彼らは物語の中で勇者かそれに準ずる者達ではあるが。

 しかしそれにしても、ここがどこか何かヒントになる物がないかな。
 と再びキョロキョロ。

「んっ?」

 足元で何かがキラリと光る。
 視線を落とす……と、

 ……と、……!!!

 目を下に向けた俺の視線の先には、俺がいた。



 そう、俺は裸だった!

 大草原で!

 生まれたままの姿!

 俺はいまこの世界に生まれたばかりだから、言葉通りの意味で生まれたまま!

 おまわりさん! この人です! 呼ばれちゃう状態だ! 日本だったら!

 良かった、異世界で。……あれ? もしかして異世界でもアウトかな?
 ……アウトだろうな、普通に考えて。
 あの城の技術水準的に、裸族は考えにくい。

 どうしよう……服! お城にいけない!
 どこかの童話のような展開だ。

 ついでに靴もない! ガ、ガラスの靴が!

 いや、ふざけている場合ではない、それよりも、足元のキラリが……。
 もしや、昆虫型などの小型モンスターとか? 
 ……刺激しないように恐る恐る辺りを見る。

 あれっ? ……アイテムが散らばっている。

 剣、鎧、杖、指輪、本、マジックアイテム、その他もろもろ。

 どうやらこのアイテムが光ったらしい。
 そう言えば、光の玉に、

――指輪とか選択して、魚に生まれたらどうするんですか?

 と聞いた時

――【神様からのギフトとして、生まれた魚の近くに指輪が現れる】

 と言っていた。
 生まれた、魚の、近くに、現れる。
 生まれた、俺の、近くに、現れる。

 ってことは、このアイテムは俺のアイテムで……。

 あの城は……。

 ダンジョンか!
 あの城が!
 城型ダンジョン!
 一国一城の主!
 ってことは、この場所は、天空島か!
 やった!
 俺、島持ち、城持ち!
 今回の人生勝ち組!

 急いでアイテム回収、城に向かわねば。
 俺の城に!

 しかし、多いな、この剣やら鎧やら……。最後は結構適当に選んでしまったし。
 鎧とか、どうすればいいんだ? 着るにしてもでかいし、重そうだ。

 そう言えば、ポイントで貰ったマジックバッグがあったはずだ。
 どれくらい入るか解らないが……。

 マジックバッグを探している途中で、服とローブを見つけた。
 こんなのも選択したかな?
 正直、最後のほうは細々し過ぎて適当だった。

 俺には少し大きめのズボンとハイネックの上着。
 黒を基調に金糸がアクセントとして使われている。

 何はともあれ、急いで着てみると、スッと体に合うように大きさが変化した。
 マジックアイテムだったのか!
 そういえばマジックシルクの服、上下があった。
 これがそれかな?

 大きさの調整以外どんな効果があるのかは解らない。
 でも通気性もいいし、保温・保湿効果があるらしく着心地も良い。
 ポイント的に大した事なかった様に記憶しているが、当りアイテムのようだ。

 鑑定魔法が取れていれば、更に詳しい事が解ったかも知れないが……。
 ない物ねだりはしても意味がないか。

 ローブも黒に金糸が使われている。
 光沢があり、軽くてスベスベの肌触り。
 まるで、王のローブのようだ。

 これは確か、何かのたてがみのローブだったか?
 羽織ると足元まで隠れる、ゆったりとした仕様。
 大きさに変化はないが、素晴らしい一品であることは素人の目でも解る。

 アイテムの中に鏡があったので見てみると意外と似合っている……のだが。
 ……これが俺か?

 15歳くらいの少年の姿がそこにある。
 ダンジョンマスターは初めから成人・成獣などに値する成長した姿で生まれると聞いている。

 ならばこの世界では15歳くらいが成人なのだろうか?
 たぶんそう言う事なのだろう。

 顔は前世の俺に似ている。
 前世をベースに、若干ほりが深くなって瞳がやや大きくなった感じだ。

 顔が前世と似ているのは何故だろう?
 今世では親もいないし、前世の魂を引き継いで生まれている事も影響しているのだろうか?
 細かい事は分からないが、今のところ不都合が無いし良しとしよう。

 それよりも鏡の下にあった小さなポーチが気になって手に取ってみる。

 これが、マッジクバッグだろうか?
 取りあえず近くにあった剣に、バッグの口の部分を当ててみる。
 ……入らない。

「収納!」

 ……入らない。
 大声出したのに恥ずかしい。……誰も見てないのが、せめてもの救いか。

 マジックバッグは、このポーチではないのかな?
 ふっと思いつき、剣を手に取りもう一度言ってみる。

 二度も間違えるとショックがでかいので、今度は小さい声で。

「収納」

 手の中から剣が消える。
 どうやらこれが正解だったようだ。
 
 後は簡単である。
 同様にして次々とアイテムを収納していく。

 その作業をしばらくしたところで、真珠色のピンポン玉くらいの卵を8個見つけた。

 数的にもそうだが、ふしぎな感覚で直感的にこれが『眷属の卵』だと感じる。
 そのためこれだけは内ポケットにソッと入れておく。
 こうしておくと俺の魂と呼応して、時期が来れば孵ると何となく分かったからだ。

 『眷属の卵』所有者としての本能なのかもしれない。
 卵と親子的な繋がりでもあるのだろうか?
 生まれてくるのが楽しみなような、ちょっと不安なような気がする。

 さらにアイテム収納の作業を続けると、すべてのアイテムが収まった。
 けっこう大量にあったので少しほっとする。
 ただ指輪は色々な効果があるはずなので、出来るだけ付けて置いた。
 十本の指全てにつけると、かなり違和感があるが……まあいいか、異世界だし。

 その後いくつか実験して解った事だが、バッグから出したい時はバッグを触りながら、出したい物を念じると出てくる。
 ただし、剣がいくつか収納されている場合、剣とだけ念じると剣が全てが出てきてしまう。
 限定して一本の剣を出したければ、その剣の具体的なイメージを持って念じる必要があるようだ。
 ちなみに入れるときも、入れたい物を触ってさえいれば、収納と念じるだけで入れることが出来た。

 さあ、後はブーツを履いたら、いよいよ城に入場するか。

 あっ! このブーツ履くと、体が軽くなる!
 垂直跳びで軽く2メートル以上はいけそうだ。

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