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第2話
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現在、俺は見知らぬ空を見ている。
空と言っても、見覚えのある地球の空ではない。
温かな光で満たされた輝く空だ。
周囲は白一色で地平線が見えない。
足元は、柔らかい綿の大地を踏みしめているようにフワフワしている。
――ここが所謂、天国だろうか……?
――まさか地獄ではないだろうな。人助けをして地獄行きでは、死ぬに死ねない。
俺がキョロキョロと辺りを観察していると、目の前で光の奔流が起こった。
咄嗟に避けようとするが、……避ける間もなく、光の奔流は収まり、目の前にバスケットボール大の光の玉が出現したと思ったら、突如、頭に声が優しく響いた。
【有栖類。隠し神級クエスト『不遇なる者、その困難に負けず、高潔なる精神を宿し、見知らぬ幼き命を、自らの命と引き換えに救う』クリア】
【クリア報酬3,000,000ポイント】
【有栖類。地球における生。終了確認】
「ほへっ……?」
いきなりの事に俺は、間の抜けた返事をしてしまう。
ちなみに有栖類という俺の名前を急に呼ばれたことも、そのことに拍車をかけた。
「あの、……何が何やら……?」
【私はこの場所『転生の間』において、神々の代理執行を成すもの】
【有栖類。あなたは地球における生を先ほど終えました】
【これにより、この転生の間において転生を行います】
【またその前段階として、準備をここで行います】
【準備とは、前世、ここでは有栖類あなたが地球での生の中で獲得したポイントを使用して、転生先での能力、環境、その他一切のボーナス……】
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
あまりに長々と続く光の玉による説明に、頭が混乱する。
取りあえず頭を整理するために、簡単にまとめてみる。
俺はやはりあのトラックによって死んでしまい、いまは『転生の間』という場所にいる。
事故の際、命と引き換えに子供を助けたため、期せずして隠し神級クエストをクリアした。
そしてクエストクリア報酬として、ポイントをもらった。
クエストやポイントとは何か?
地球では様々な隠しクエストが神様によって設定されている。
そのクエストは基本的に善行を前提とした行動によるものである。
たとえば『周りの人を笑顔にする』といったクエストから『生まれたばかりで弱っている動物を助ける』と言ったものまで様々ある。
生涯を通じて全ての人が、知らず知らずにこの隠しクエストによって評価されている。
クエストクリア報酬はポイントとして与えられ、死んでから『転生の間』で清算が行われるらしい。
与えられるポイントはクリア難易度、善行の大きさによって増減する。
またこのポイントは、不品行により減点される。
そしていま俺がいる場所、すなわち死んでから来る『転生の間』。
この『転生の間』における、人々のポイント平均値は大体100ポイントらしい。
しかし俺のポイントは総計で、3,132,670ポイント。
地球の歴史上でどうやら格段に多いらしい。
俺は子供を命をかけて助ける以外にも、人生を通してかなりのポイントがあったようだ。
見ている人は、見てるということか。
いや、ここでは見ている神様は見ている、と言ったところだろうか。
そして、俺の魂は輪廻の中にあるらしく、地球での生を終えれば転生することになる。
この時、地球でのクエストクリア報酬たるポイントがやっと日の目を見る。
ポイントの範囲内で、次の転生先での生まれる環境、能力、その他もろもろが前もって獲得できるらしい。
それら獲得可能なものはリスト化され、いま俺の目の前で、半透明のウィンドウ画面に映し出されている。
ちなみに、俺の次の転生先は、魔法があるらしい。
獲得可能な能力として、リストに記されている。
さらに、……不老という能力が、1,000,000ポイントで獲得可能らしい。
どんな世界なのだ……。
しかし、不老で、1,000,000ポイントなら……俺の3,132,670ポイント以上を必要とするものって何なのだろうか?
興味はあるが、光の玉に質問しても教えてはもらえないようだ。
王族に生まれる、10,000ポイントなどもある。
偶然、王族に生まれる者もいるだろうが、ここで選択した結果、王族として生まれる者もいると言うわけだ。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
さあ、そろそろ俺も選択しようかと思うのだが……俺の選択肢は1,000,000以上あるらしい。
勇者や魔王まである。
でも、もし魔王に生まれたら、たとえば隠しクエストはどうなるのだろう?
魔王として人間を大量殺戮なんかした場合、不品行により減点されないのか?
そうなれば転生時えらい事になるのでは?
光の玉に確認したところ、魔王とは魔に属する者なので、魔に属する者にとっての善行をすればクエストのクリアになるらしい。
魔に属する者にとって人間の殲滅が正しい善行で、そこに人間の殲滅という隠しクエストが設定されていれば、当然、人間の殲滅でクエストクリアになるわけだ。
……………………言葉を失う事実発覚、ダナ。
光の玉の説明では、転生先の世界における、光と影のようなものだと言う。
光があれば、そこには影が出来る。
光が正しくて、影が悪いと言うわけではない。
そこに光があるのだから、影があるのは当然である。
言い換えれば、光と影があるその状態こそが正しいと言うわけだ。
とにかく、次に行く世界はそうあるように創られているのだから、そうなのだと受け入れるしかない。
地球の物理法則にいくら文句を言っても、決して物理法則が変わることはないのと同様だ。
それは神様が創った、その世界の法則の一部なのだから。
それはそれとして、何を選ぶべきか……。
おっ!
前世の記憶を持ち越す能力が300,000ポイントだ。
これはぜひ獲得しよう。地球の記憶を持ち越せるものなら持ち越してみたい。
まさに、第二の人生だ。
光の玉の説明にしたがって、記憶持ち越しの能力を選択する。
さっそく一つ決まったし、次は何にしようか?
と思った直後!
俺の目の端にうつったのは、天空島のダンジョンマスター(ダンジョンランクA)2,000,000ポイント。
ダンジョンマスターがある!
確かに、魔王や勇者があるのだから、ダンジョンマスターがあっても変ではない。
しかし気になるのはダンジョンランクAというランク。
光の玉に聞いてみると、【Sランクの下、上から二番目のランクのダンジョンという意味】だと言われた。
上から二番目?
俺のリストには、AからFまでのランクのダンジョンマスターがあるがSは無い。
Sランクのダンジョンマスターは、俺の3,132,670ポイント以上を必要とするのだろうか?
まあ知ったところで、どうと言うわけではないが。
ポイント的に不可能なわけだし。
しかしダンジョンマスター……。
どうだろう?
俺は人付き合いも、いまいち苦手だし。
しかも天空島のダンジョン。
篭もっちゃおうかな?
もともと俺は人見知りする性格だ。
本来友達を作りやすいはずの学校でも、友達の少ないほうだった。
いや、友達と言うより、あれは知人達と言った方が正しいか。
それに件のブラック企業は、生きる為に仕方なく仕事をしている場所だった。
友達などできようはずも無い。
仕事場以外に友達を求めても、休日・休暇もほとんど取れず、忙しすぎてそんな時間も無かった。
かといって、あの会社に辞めると言う勇気もなかったのだが……。
まあ時間があったところで、受身体質の俺が積極的に友人を作りにいけたかは疑問もある。
そう考えれば、良い選択肢かなとも思う。
光の玉によれば、天空島はダンジョン内にあるダンジョンコアを通じて、天空を自由に移動可能らしい!
【もちろん、結界の張ってあるような場所などは侵入できない可能性がある】と言われた。
何がもちろんかは、もちろん解らないが!
ともかく、この天空島のダンジョンなら世界中を渡って行けるということか。
勇者にダンジョン討伐されたら、目も当てられないわけだが……。
しかし逆に勇者生まれても、魔王や魔に属する者達に狙われる可能性もある。
そんな事などを考えれば、どんな存在でもリスクゼロはありえないわけで……。
その他にも光の玉にいろいろ聞いてみたが、あまり答えてくれない。
何故かと問うたところ、【運命は自ら切り開くもの。大まかな外観以外、細かな説明は不要】とのこと。
ちなみに詳しいダンジョンの仕様は、転生先でダンジョンマスターになった際に分かるようだ。
……前世では世界中のいろいろな場所に行ってみたいと思っていた。
……世界を飛び回る天空島。
……ロマンだな。
……生きる価値は前世で証明した。次世は後悔のない自由な人生を生きてみようか?
良いかもしれない。
後悔のない自由な人生。
うん、そうしよう。
……天空島のダンジョンマスター(ダンジョンランクA)2,000,000ポイント、チェック!
…………ダンジョンマスターにチェックしてしまった。
………………いいのか? 本当に?
まあ、悩んでも始まらない。次に行こう。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
次に目に留まったのは、眷属の卵(眷属8体)800,000ポイント。
8個の卵はセットで分割では取得できないらしい。
生まれてくる眷属も、保持者の魂の格により様々なようだし……。
かなりのポイントを使用しなければならないが……。
色々と考えたが、人付き合いは苦手でも、異世界で完全なボッチとかは嫌だ。
……信用できる仲間。必要。絶対。
眷属なら裏切らない! はず?
と言うわけで、眷属の卵(眷属8体)を選択。
さらに次の選択へと目を移したとき、種族選択項目が多いことに気付く。
ふっと疑問に思い、念のため転生した姿について光の玉に質問すると、
【ダンジョンマスターはダンジョンと共に世界に生まれ、その姿は初めから成人・成獣などに値する成長した姿で、一定以上の思考能力を最初から持っている。
ただし、種族を選択しなければ、ゴブリンの姿や、オークの姿など、あらゆる可能性がある】
というご助言をくれた。
よって次は、生まれる種族を選択せねばならない。
……だって、オークのダンジョンマスターとか嫌だし。
ちなみに、選択できる種族は、
ゴブリン 5ポイント。
リザードマン 35ポイント。
獣人 60ポイント。
人間 100ポイント。
ドワーフ 150ポイント。
エルフ 3000ポイント。
エルダーリッチ 100,000ポイント。
エルダードワーフ 125,000ポイント。
ドラゴン 300,000ポイント。
エンシェントエルフ350,000ポイント。
ダブルエルフ 350,000ポイント。
……などなど他にも様々ある。
ダブルエルフってなんだ? と思い、光の玉に聞いてみると【エルフとダークエルフのハーフ】とのこと。
エルフとダークエルフのハーフって、聞いたこと無いな?
ラノベやゲームは生前そこそこやってはいたが、俺が知らないだけか?
結構有名なのかな? まあいいか。
それよりも種族の選択だ。
前世の記憶との連続性で言えば、人間のほうが違和感は無いだろう。
ただダンジョンマスター人間、と言う点では若干違和感がある。
それを言うならダンジョンマスターエルフ、とかも同じか。
どうするか……。ポイントの大きな種族のほうが優位性があるような……。
まあ、人間でいいか?
俺、人間だし!
第二の人生だ。
前世の記憶持ち越しをとったのもそのためなのだから。
人間100ポイント、チェック。
後は、32,570ポイント。
取りあえず人間を選んだし、装備品を厳選しておこう。
せめて、自分を強化せねばなるまい。
剣、鎧、杖、ローブ、盾、服、指輪、良く解らない様々なマジックアイテムに魔道書などを選択する。
ちなみに、自身を強化するための、身体強化や魔法スキルなどは選択できなかった。
光の玉曰く【有栖類とダンジョンコアの魂が融合しているが故、ポイントがあっても無理なこともある】とのこと。
【言い換えるならば、ドラゴンのブレスを人間が吐けない様に、ダンジョンコアに人間やそれに類する者たちのスキルを設定は出来ない】と言われた。
……俺、人間じゃなくてダンジョンコアなの?
人間型ダンジョンコア? まあダンジョンコアは別にあるらしいけど。
まっ、いいか。
とにかく、光の玉は例の如くあまり説明してくれないから、勘と大人の判断力で可能な限りの装備品、財宝、アイテムを選択する。
幼き子供には望むべくも無い判断力よー、とか思いながら。
……疲れているのかな。
48時間寝てないし。
いや、死んだから関係ないのか?
しかし指輪とか選択して、魚に生まれたらどうするのかな?
光の玉曰く【神様からのギフトとして、生まれた魚の近くに指輪が現れる】らしい。
そーですか。
なるほど。
本を選択したら、水の中だから濡れちゃうね!
ともあれ、やっと選択が終わった。
そして、その事を光の玉に告げたとたん、俺は強烈な光に包まれ再び意識を失った。
空と言っても、見覚えのある地球の空ではない。
温かな光で満たされた輝く空だ。
周囲は白一色で地平線が見えない。
足元は、柔らかい綿の大地を踏みしめているようにフワフワしている。
――ここが所謂、天国だろうか……?
――まさか地獄ではないだろうな。人助けをして地獄行きでは、死ぬに死ねない。
俺がキョロキョロと辺りを観察していると、目の前で光の奔流が起こった。
咄嗟に避けようとするが、……避ける間もなく、光の奔流は収まり、目の前にバスケットボール大の光の玉が出現したと思ったら、突如、頭に声が優しく響いた。
【有栖類。隠し神級クエスト『不遇なる者、その困難に負けず、高潔なる精神を宿し、見知らぬ幼き命を、自らの命と引き換えに救う』クリア】
【クリア報酬3,000,000ポイント】
【有栖類。地球における生。終了確認】
「ほへっ……?」
いきなりの事に俺は、間の抜けた返事をしてしまう。
ちなみに有栖類という俺の名前を急に呼ばれたことも、そのことに拍車をかけた。
「あの、……何が何やら……?」
【私はこの場所『転生の間』において、神々の代理執行を成すもの】
【有栖類。あなたは地球における生を先ほど終えました】
【これにより、この転生の間において転生を行います】
【またその前段階として、準備をここで行います】
【準備とは、前世、ここでは有栖類あなたが地球での生の中で獲得したポイントを使用して、転生先での能力、環境、その他一切のボーナス……】
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あまりに長々と続く光の玉による説明に、頭が混乱する。
取りあえず頭を整理するために、簡単にまとめてみる。
俺はやはりあのトラックによって死んでしまい、いまは『転生の間』という場所にいる。
事故の際、命と引き換えに子供を助けたため、期せずして隠し神級クエストをクリアした。
そしてクエストクリア報酬として、ポイントをもらった。
クエストやポイントとは何か?
地球では様々な隠しクエストが神様によって設定されている。
そのクエストは基本的に善行を前提とした行動によるものである。
たとえば『周りの人を笑顔にする』といったクエストから『生まれたばかりで弱っている動物を助ける』と言ったものまで様々ある。
生涯を通じて全ての人が、知らず知らずにこの隠しクエストによって評価されている。
クエストクリア報酬はポイントとして与えられ、死んでから『転生の間』で清算が行われるらしい。
与えられるポイントはクリア難易度、善行の大きさによって増減する。
またこのポイントは、不品行により減点される。
そしていま俺がいる場所、すなわち死んでから来る『転生の間』。
この『転生の間』における、人々のポイント平均値は大体100ポイントらしい。
しかし俺のポイントは総計で、3,132,670ポイント。
地球の歴史上でどうやら格段に多いらしい。
俺は子供を命をかけて助ける以外にも、人生を通してかなりのポイントがあったようだ。
見ている人は、見てるということか。
いや、ここでは見ている神様は見ている、と言ったところだろうか。
そして、俺の魂は輪廻の中にあるらしく、地球での生を終えれば転生することになる。
この時、地球でのクエストクリア報酬たるポイントがやっと日の目を見る。
ポイントの範囲内で、次の転生先での生まれる環境、能力、その他もろもろが前もって獲得できるらしい。
それら獲得可能なものはリスト化され、いま俺の目の前で、半透明のウィンドウ画面に映し出されている。
ちなみに、俺の次の転生先は、魔法があるらしい。
獲得可能な能力として、リストに記されている。
さらに、……不老という能力が、1,000,000ポイントで獲得可能らしい。
どんな世界なのだ……。
しかし、不老で、1,000,000ポイントなら……俺の3,132,670ポイント以上を必要とするものって何なのだろうか?
興味はあるが、光の玉に質問しても教えてはもらえないようだ。
王族に生まれる、10,000ポイントなどもある。
偶然、王族に生まれる者もいるだろうが、ここで選択した結果、王族として生まれる者もいると言うわけだ。
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さあ、そろそろ俺も選択しようかと思うのだが……俺の選択肢は1,000,000以上あるらしい。
勇者や魔王まである。
でも、もし魔王に生まれたら、たとえば隠しクエストはどうなるのだろう?
魔王として人間を大量殺戮なんかした場合、不品行により減点されないのか?
そうなれば転生時えらい事になるのでは?
光の玉に確認したところ、魔王とは魔に属する者なので、魔に属する者にとっての善行をすればクエストのクリアになるらしい。
魔に属する者にとって人間の殲滅が正しい善行で、そこに人間の殲滅という隠しクエストが設定されていれば、当然、人間の殲滅でクエストクリアになるわけだ。
……………………言葉を失う事実発覚、ダナ。
光の玉の説明では、転生先の世界における、光と影のようなものだと言う。
光があれば、そこには影が出来る。
光が正しくて、影が悪いと言うわけではない。
そこに光があるのだから、影があるのは当然である。
言い換えれば、光と影があるその状態こそが正しいと言うわけだ。
とにかく、次に行く世界はそうあるように創られているのだから、そうなのだと受け入れるしかない。
地球の物理法則にいくら文句を言っても、決して物理法則が変わることはないのと同様だ。
それは神様が創った、その世界の法則の一部なのだから。
それはそれとして、何を選ぶべきか……。
おっ!
前世の記憶を持ち越す能力が300,000ポイントだ。
これはぜひ獲得しよう。地球の記憶を持ち越せるものなら持ち越してみたい。
まさに、第二の人生だ。
光の玉の説明にしたがって、記憶持ち越しの能力を選択する。
さっそく一つ決まったし、次は何にしようか?
と思った直後!
俺の目の端にうつったのは、天空島のダンジョンマスター(ダンジョンランクA)2,000,000ポイント。
ダンジョンマスターがある!
確かに、魔王や勇者があるのだから、ダンジョンマスターがあっても変ではない。
しかし気になるのはダンジョンランクAというランク。
光の玉に聞いてみると、【Sランクの下、上から二番目のランクのダンジョンという意味】だと言われた。
上から二番目?
俺のリストには、AからFまでのランクのダンジョンマスターがあるがSは無い。
Sランクのダンジョンマスターは、俺の3,132,670ポイント以上を必要とするのだろうか?
まあ知ったところで、どうと言うわけではないが。
ポイント的に不可能なわけだし。
しかしダンジョンマスター……。
どうだろう?
俺は人付き合いも、いまいち苦手だし。
しかも天空島のダンジョン。
篭もっちゃおうかな?
もともと俺は人見知りする性格だ。
本来友達を作りやすいはずの学校でも、友達の少ないほうだった。
いや、友達と言うより、あれは知人達と言った方が正しいか。
それに件のブラック企業は、生きる為に仕方なく仕事をしている場所だった。
友達などできようはずも無い。
仕事場以外に友達を求めても、休日・休暇もほとんど取れず、忙しすぎてそんな時間も無かった。
かといって、あの会社に辞めると言う勇気もなかったのだが……。
まあ時間があったところで、受身体質の俺が積極的に友人を作りにいけたかは疑問もある。
そう考えれば、良い選択肢かなとも思う。
光の玉によれば、天空島はダンジョン内にあるダンジョンコアを通じて、天空を自由に移動可能らしい!
【もちろん、結界の張ってあるような場所などは侵入できない可能性がある】と言われた。
何がもちろんかは、もちろん解らないが!
ともかく、この天空島のダンジョンなら世界中を渡って行けるということか。
勇者にダンジョン討伐されたら、目も当てられないわけだが……。
しかし逆に勇者生まれても、魔王や魔に属する者達に狙われる可能性もある。
そんな事などを考えれば、どんな存在でもリスクゼロはありえないわけで……。
その他にも光の玉にいろいろ聞いてみたが、あまり答えてくれない。
何故かと問うたところ、【運命は自ら切り開くもの。大まかな外観以外、細かな説明は不要】とのこと。
ちなみに詳しいダンジョンの仕様は、転生先でダンジョンマスターになった際に分かるようだ。
……前世では世界中のいろいろな場所に行ってみたいと思っていた。
……世界を飛び回る天空島。
……ロマンだな。
……生きる価値は前世で証明した。次世は後悔のない自由な人生を生きてみようか?
良いかもしれない。
後悔のない自由な人生。
うん、そうしよう。
……天空島のダンジョンマスター(ダンジョンランクA)2,000,000ポイント、チェック!
…………ダンジョンマスターにチェックしてしまった。
………………いいのか? 本当に?
まあ、悩んでも始まらない。次に行こう。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
次に目に留まったのは、眷属の卵(眷属8体)800,000ポイント。
8個の卵はセットで分割では取得できないらしい。
生まれてくる眷属も、保持者の魂の格により様々なようだし……。
かなりのポイントを使用しなければならないが……。
色々と考えたが、人付き合いは苦手でも、異世界で完全なボッチとかは嫌だ。
……信用できる仲間。必要。絶対。
眷属なら裏切らない! はず?
と言うわけで、眷属の卵(眷属8体)を選択。
さらに次の選択へと目を移したとき、種族選択項目が多いことに気付く。
ふっと疑問に思い、念のため転生した姿について光の玉に質問すると、
【ダンジョンマスターはダンジョンと共に世界に生まれ、その姿は初めから成人・成獣などに値する成長した姿で、一定以上の思考能力を最初から持っている。
ただし、種族を選択しなければ、ゴブリンの姿や、オークの姿など、あらゆる可能性がある】
というご助言をくれた。
よって次は、生まれる種族を選択せねばならない。
……だって、オークのダンジョンマスターとか嫌だし。
ちなみに、選択できる種族は、
ゴブリン 5ポイント。
リザードマン 35ポイント。
獣人 60ポイント。
人間 100ポイント。
ドワーフ 150ポイント。
エルフ 3000ポイント。
エルダーリッチ 100,000ポイント。
エルダードワーフ 125,000ポイント。
ドラゴン 300,000ポイント。
エンシェントエルフ350,000ポイント。
ダブルエルフ 350,000ポイント。
……などなど他にも様々ある。
ダブルエルフってなんだ? と思い、光の玉に聞いてみると【エルフとダークエルフのハーフ】とのこと。
エルフとダークエルフのハーフって、聞いたこと無いな?
ラノベやゲームは生前そこそこやってはいたが、俺が知らないだけか?
結構有名なのかな? まあいいか。
それよりも種族の選択だ。
前世の記憶との連続性で言えば、人間のほうが違和感は無いだろう。
ただダンジョンマスター人間、と言う点では若干違和感がある。
それを言うならダンジョンマスターエルフ、とかも同じか。
どうするか……。ポイントの大きな種族のほうが優位性があるような……。
まあ、人間でいいか?
俺、人間だし!
第二の人生だ。
前世の記憶持ち越しをとったのもそのためなのだから。
人間100ポイント、チェック。
後は、32,570ポイント。
取りあえず人間を選んだし、装備品を厳選しておこう。
せめて、自分を強化せねばなるまい。
剣、鎧、杖、ローブ、盾、服、指輪、良く解らない様々なマジックアイテムに魔道書などを選択する。
ちなみに、自身を強化するための、身体強化や魔法スキルなどは選択できなかった。
光の玉曰く【有栖類とダンジョンコアの魂が融合しているが故、ポイントがあっても無理なこともある】とのこと。
【言い換えるならば、ドラゴンのブレスを人間が吐けない様に、ダンジョンコアに人間やそれに類する者たちのスキルを設定は出来ない】と言われた。
……俺、人間じゃなくてダンジョンコアなの?
人間型ダンジョンコア? まあダンジョンコアは別にあるらしいけど。
まっ、いいか。
とにかく、光の玉は例の如くあまり説明してくれないから、勘と大人の判断力で可能な限りの装備品、財宝、アイテムを選択する。
幼き子供には望むべくも無い判断力よー、とか思いながら。
……疲れているのかな。
48時間寝てないし。
いや、死んだから関係ないのか?
しかし指輪とか選択して、魚に生まれたらどうするのかな?
光の玉曰く【神様からのギフトとして、生まれた魚の近くに指輪が現れる】らしい。
そーですか。
なるほど。
本を選択したら、水の中だから濡れちゃうね!
ともあれ、やっと選択が終わった。
そして、その事を光の玉に告げたとたん、俺は強烈な光に包まれ再び意識を失った。
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この作品をスルーして下さい。
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ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
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