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夏休み開始!
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俺は洸の言葉を聞いていたから、色んな所に行きたいと思ってたことを知ってる。
去年の夏入院して遊べなかった時、来年は元気になってるからたくさん遊びに行こうなんて親と計画を立てていたのかもしれない。それを励みに頑張ってきたのかもしれない。
その思いを果たす事が出来れば洸の魂はあの世に行けるかもしれない。
俺の「夏の思い出作らないか?」っていう提案に洸は、「作る!作りたい!」と悩む事なく元気に返事した。
そんな洸を見ると俺も嬉しくなって、「よし!行こう!」って元気に羽をパタパタさせて洸の前を飛び回った。
こうしてセミの幽霊と人間の幽霊の夏休みが始まった。
この街の事は知らなかったけど、高く飛んで見渡せば遊園地とかプールとか見つかるんじゃないかと思って俺は飛び上がった。
10メートル上がったところで後ろを見ると洸がいない。下を見ると洸は口をポカンと開けて見上げて立っていた。
「洸?どうした、行かないのか?」俺は戻って来て洸に言った。
「飛べないよ。」
「幽霊って浮けるんじゃないの?ジャンプしてみな?」
洸が飛ぼうとすると、足は地面から離れるが、頭の位置は変わらない奇妙なジャンプだった。何度飛んでみても同じで、透明な板が頭の上にあるようだった。
「無理か。じゃあ、俺が飛んで何か見つけてくるから。」俺はそう言って飛ぼうとした時、洸が両手で俺のお腹をつまんだ。
「僕も飛びたい」洸は真っ直ぐな目で見つめてきた。俺はこの目に弱い。
でも、さすがにセミが人間を持ち上げるのは不可能だ。精一杯頑張ってる姿を見せて無理なら諦めてくれるだろう。
そう考えて俺は飛んだ。浮いた。全く重さを感じないまま昇っていける。
洸は「うわー」とか「すごい」とか言って興奮してた。
「洸!腕、辛くないか?」俺は一応確認した。
「全然大丈夫!片手の指1本でもいけるよ!」
その言葉を聞いた俺は高く舞い上がった。
世界中のセミがこんな高さまで来た事ないだろう。真っ白な雲を突き抜けて前進していく。
下を見ると車が米粒よりも小さく見える。青白い空がどこまでも続いていて地球はとてつもなく広い事を実感した。
「あ!前!」洸が突然叫んだ。
上や横を見てた俺がその声で前を見ると、大きな飛行機が向かって来ていた。
「うわあああああ」と1人と1匹が叫び、その声と同時に飛行機は抜けて行った。
一瞬の間があって俺たちは笑った。
透けていくのがわかってるはずなのにめちゃくちゃ怖くて、その後来る安堵感が面白くてしばらく笑い続けた。
洸がまたやりたいと言うのでそれから飛行機を探したけど、遠くに1機見ただけで同じ体験は出来なかった。
幽霊はワープする事は出来ないし、移動速度も走る速さくらいまでが限界で、「飛行機貫通ゲーム」が出来るかどうかは運次第だった。
そうやって空を飛び回っていると、前方に観覧車が見えた。すぐ横にはジェットコースターも見える。
これは!と思って近付いてみると、プールも併設された遊園地があった。
「洸!遊園地もプールもあるぞ!どっち先に行きたい?」俺は聞いた。
「プール見に行きたい!」
「よし!まずはプールだ!」俺は全力で突っ込んで行って飛び込んでやろうと思ったけど、水面が近付いてきた時、洸が叫んだ。
「ちょっと待って!」俺は水面ギリギリで浮き上がりプールサイドに着地した。
「なんだどうした?」
「泳げないから怖くて…。」
「おいおい。プールに行きたいんじゃなかったのか?俺たちは貫通できるんだぜ?無敵だぞ。それに、息しなくていいから苦しくない」
「それはわかってるんだけど…。」
「溺れた事でもあるのか?」俺はまた洸の右肩に止まった。
去年の夏入院して遊べなかった時、来年は元気になってるからたくさん遊びに行こうなんて親と計画を立てていたのかもしれない。それを励みに頑張ってきたのかもしれない。
その思いを果たす事が出来れば洸の魂はあの世に行けるかもしれない。
俺の「夏の思い出作らないか?」っていう提案に洸は、「作る!作りたい!」と悩む事なく元気に返事した。
そんな洸を見ると俺も嬉しくなって、「よし!行こう!」って元気に羽をパタパタさせて洸の前を飛び回った。
こうしてセミの幽霊と人間の幽霊の夏休みが始まった。
この街の事は知らなかったけど、高く飛んで見渡せば遊園地とかプールとか見つかるんじゃないかと思って俺は飛び上がった。
10メートル上がったところで後ろを見ると洸がいない。下を見ると洸は口をポカンと開けて見上げて立っていた。
「洸?どうした、行かないのか?」俺は戻って来て洸に言った。
「飛べないよ。」
「幽霊って浮けるんじゃないの?ジャンプしてみな?」
洸が飛ぼうとすると、足は地面から離れるが、頭の位置は変わらない奇妙なジャンプだった。何度飛んでみても同じで、透明な板が頭の上にあるようだった。
「無理か。じゃあ、俺が飛んで何か見つけてくるから。」俺はそう言って飛ぼうとした時、洸が両手で俺のお腹をつまんだ。
「僕も飛びたい」洸は真っ直ぐな目で見つめてきた。俺はこの目に弱い。
でも、さすがにセミが人間を持ち上げるのは不可能だ。精一杯頑張ってる姿を見せて無理なら諦めてくれるだろう。
そう考えて俺は飛んだ。浮いた。全く重さを感じないまま昇っていける。
洸は「うわー」とか「すごい」とか言って興奮してた。
「洸!腕、辛くないか?」俺は一応確認した。
「全然大丈夫!片手の指1本でもいけるよ!」
その言葉を聞いた俺は高く舞い上がった。
世界中のセミがこんな高さまで来た事ないだろう。真っ白な雲を突き抜けて前進していく。
下を見ると車が米粒よりも小さく見える。青白い空がどこまでも続いていて地球はとてつもなく広い事を実感した。
「あ!前!」洸が突然叫んだ。
上や横を見てた俺がその声で前を見ると、大きな飛行機が向かって来ていた。
「うわあああああ」と1人と1匹が叫び、その声と同時に飛行機は抜けて行った。
一瞬の間があって俺たちは笑った。
透けていくのがわかってるはずなのにめちゃくちゃ怖くて、その後来る安堵感が面白くてしばらく笑い続けた。
洸がまたやりたいと言うのでそれから飛行機を探したけど、遠くに1機見ただけで同じ体験は出来なかった。
幽霊はワープする事は出来ないし、移動速度も走る速さくらいまでが限界で、「飛行機貫通ゲーム」が出来るかどうかは運次第だった。
そうやって空を飛び回っていると、前方に観覧車が見えた。すぐ横にはジェットコースターも見える。
これは!と思って近付いてみると、プールも併設された遊園地があった。
「洸!遊園地もプールもあるぞ!どっち先に行きたい?」俺は聞いた。
「プール見に行きたい!」
「よし!まずはプールだ!」俺は全力で突っ込んで行って飛び込んでやろうと思ったけど、水面が近付いてきた時、洸が叫んだ。
「ちょっと待って!」俺は水面ギリギリで浮き上がりプールサイドに着地した。
「なんだどうした?」
「泳げないから怖くて…。」
「おいおい。プールに行きたいんじゃなかったのか?俺たちは貫通できるんだぜ?無敵だぞ。それに、息しなくていいから苦しくない」
「それはわかってるんだけど…。」
「溺れた事でもあるのか?」俺はまた洸の右肩に止まった。
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