1 / 35
太郎、産まれる
しおりを挟む
昔々関西のあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。2人には子供は居ませんでしたが、とても仲がよく毎日幸せに暮らしていました。
そんなある日の朝、おじいさんは山へ薪拾いに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが、おじいさんの靴下を念入りに洗っていると、川上の方から高さが1mくらいはある大きな桃が岩に当たったりして回転しながら流れてきました。
「なんやこれえええ!!」おばあさんは大きな声で叫ぶと、小走りで桃の方へ駆け寄りました。桃はたくさん岩に当たった為か傷だらけではありましたが、桃からは甘い香りがするので、おばあさんは葉っぱの部分を引っ張って川岸に上げました。上げたはいいものの、この大きな桃を担いで帰るのは無理だと判断したおばあさんは、山にいるおじいさんを呼びに行きました。
「おーい!じいさんやー!」薪を拾っているおじいさんを見つけると、おばあさんは大きな声で呼びました。「じいさん!川にこーんな大きな桃が流れてきたんよ。1人じゃ運ばれへんからちょっと手伝って」
「ついにボケたかばあさん」
「ボケてへんわ。ええからついて来て!」そう言うとおばあさんは早歩きで山を下りて行くので、おじいさんも後をついて行きました。
「ほらあれ」おばあさんが指さした方を見ておじいさんは驚きました。
「まじやん」
おじいさんは桃に駆け寄ると桃を触ってみました。手触りはちゃんとした桃だったので、家に持って帰る事にしました。
「こんな大きな桃は食べきられへんから、ご近所さんに持って行ってやろか」そう言いながらおじいさんは桃を持ち上げてみました。「軽っ。ばあさん、これ中身詰まってへんで」
「ほんまか。もう腐っとるんかな。ちょっと食べてみてや」
そうおばあさんに言われたおじいさんは、斧で少しだけ果肉を削って食べてみました。
「あ、うまいわ。ええ桃や。ばあさんも食べてみ」おじいさんはもう1度桃を削って、果肉をおばあさんに渡しました。
「あ、ほんま甘くて美味しいわ。表面しか実は無いかもしれんけど、こんだけ大きかったら結構な量食べれるやろ」
「せやな」そう言って、おじいさんは桃を両手で持ち上げると、おばあさんと2人で家まで運びました。
扉を開けて桃を家の中に運び込むと、2人は座って休憩する事にしました。会話が無くても気まずくなる事などない2人はゆっくりしていましたが、しばらくするとおばあさんは立ち上がりました。
「小分けにして配るから包丁取ってくるわ」
「おう」おじいさんはそう言うと、なんとなく桃に目をやりました。すると、カタッと桃が動きました。
「ん?」見間違いかと思いましたが気になったので、おじいさんは桃の目の前まで移動し、桃を良く見ました。すると、もう1度桃がカタッと動きました。
「ああああ・・・。ば、ばあさん・・・!」おじいさんは驚いて尻もちをつきました。
その声を聞いたおばあさんは、包丁を持って戻ってきました。「じいさんどうしたん?変な声出して」
「も、桃が動いたんやあ・・・」
「あんたこそボケたか」
「ほんまやて・・・。近くまで来てよう見ててみい」
おじいさんに言われたおばあさんは桃のそばまで来てじっと観察しました。すると、桃の中からドンッという音が鳴り、桃が揺れました。
「あぁ!ほんまや!」おばあさんは凄く驚きました。
「なんや、呪われた桃なんかもしれん。持って帰ってきたらあかんかったんや」おじいさんは険しい顔で呟きました。
「せやったら、もう1回川に流しに行こか?」
「あぁ。それがええわ。祟りにでも遭ったらたまらん」おじいさんがそう言うと、2人でもう1度桃を持ち上げようとしました。その時、おばあさんの手が果汁で滑り桃が転がってしまいました。
「あぁ!ばあさんなんちゅうことしたんや!」おじいさんは怒りました。
「滑ってもうたんや。堪忍してください」と桃にあばあさんは手を合わせました。すると、横向きになった桃の中から再びドンッという音がしました。2人が驚き桃を凝視していた次の瞬間!
ドンッ!という音と共に、おじいさんが削って薄くなっていた部分を蹴破って、小さな足が出てきました。
「うわああ!」2人は声を揃えて驚きました。
「あ、足や・・・」おばあさんは桃から出ている足を見て言いました。
「人が入っとるんか?」とおじいさん。
「子供の足やな。祟りとか言うてる場合ちゃうな。出したらんと」おばあさんはそう言うと、包丁を使って桃を切る事にしました。
「ほなら、ワシが押さえとくから」おじいさんは桃を両手で固定しました。おばあさんは中の子供を傷つけないように慎重に包丁で桃を切りました。
そして、中が見えるほどの穴が開いた時、桃は先端の部分からパカーンと開き男の子の赤ちゃんが産声をあげました。
そんなある日の朝、おじいさんは山へ薪拾いに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが、おじいさんの靴下を念入りに洗っていると、川上の方から高さが1mくらいはある大きな桃が岩に当たったりして回転しながら流れてきました。
「なんやこれえええ!!」おばあさんは大きな声で叫ぶと、小走りで桃の方へ駆け寄りました。桃はたくさん岩に当たった為か傷だらけではありましたが、桃からは甘い香りがするので、おばあさんは葉っぱの部分を引っ張って川岸に上げました。上げたはいいものの、この大きな桃を担いで帰るのは無理だと判断したおばあさんは、山にいるおじいさんを呼びに行きました。
「おーい!じいさんやー!」薪を拾っているおじいさんを見つけると、おばあさんは大きな声で呼びました。「じいさん!川にこーんな大きな桃が流れてきたんよ。1人じゃ運ばれへんからちょっと手伝って」
「ついにボケたかばあさん」
「ボケてへんわ。ええからついて来て!」そう言うとおばあさんは早歩きで山を下りて行くので、おじいさんも後をついて行きました。
「ほらあれ」おばあさんが指さした方を見ておじいさんは驚きました。
「まじやん」
おじいさんは桃に駆け寄ると桃を触ってみました。手触りはちゃんとした桃だったので、家に持って帰る事にしました。
「こんな大きな桃は食べきられへんから、ご近所さんに持って行ってやろか」そう言いながらおじいさんは桃を持ち上げてみました。「軽っ。ばあさん、これ中身詰まってへんで」
「ほんまか。もう腐っとるんかな。ちょっと食べてみてや」
そうおばあさんに言われたおじいさんは、斧で少しだけ果肉を削って食べてみました。
「あ、うまいわ。ええ桃や。ばあさんも食べてみ」おじいさんはもう1度桃を削って、果肉をおばあさんに渡しました。
「あ、ほんま甘くて美味しいわ。表面しか実は無いかもしれんけど、こんだけ大きかったら結構な量食べれるやろ」
「せやな」そう言って、おじいさんは桃を両手で持ち上げると、おばあさんと2人で家まで運びました。
扉を開けて桃を家の中に運び込むと、2人は座って休憩する事にしました。会話が無くても気まずくなる事などない2人はゆっくりしていましたが、しばらくするとおばあさんは立ち上がりました。
「小分けにして配るから包丁取ってくるわ」
「おう」おじいさんはそう言うと、なんとなく桃に目をやりました。すると、カタッと桃が動きました。
「ん?」見間違いかと思いましたが気になったので、おじいさんは桃の目の前まで移動し、桃を良く見ました。すると、もう1度桃がカタッと動きました。
「ああああ・・・。ば、ばあさん・・・!」おじいさんは驚いて尻もちをつきました。
その声を聞いたおばあさんは、包丁を持って戻ってきました。「じいさんどうしたん?変な声出して」
「も、桃が動いたんやあ・・・」
「あんたこそボケたか」
「ほんまやて・・・。近くまで来てよう見ててみい」
おじいさんに言われたおばあさんは桃のそばまで来てじっと観察しました。すると、桃の中からドンッという音が鳴り、桃が揺れました。
「あぁ!ほんまや!」おばあさんは凄く驚きました。
「なんや、呪われた桃なんかもしれん。持って帰ってきたらあかんかったんや」おじいさんは険しい顔で呟きました。
「せやったら、もう1回川に流しに行こか?」
「あぁ。それがええわ。祟りにでも遭ったらたまらん」おじいさんがそう言うと、2人でもう1度桃を持ち上げようとしました。その時、おばあさんの手が果汁で滑り桃が転がってしまいました。
「あぁ!ばあさんなんちゅうことしたんや!」おじいさんは怒りました。
「滑ってもうたんや。堪忍してください」と桃にあばあさんは手を合わせました。すると、横向きになった桃の中から再びドンッという音がしました。2人が驚き桃を凝視していた次の瞬間!
ドンッ!という音と共に、おじいさんが削って薄くなっていた部分を蹴破って、小さな足が出てきました。
「うわああ!」2人は声を揃えて驚きました。
「あ、足や・・・」おばあさんは桃から出ている足を見て言いました。
「人が入っとるんか?」とおじいさん。
「子供の足やな。祟りとか言うてる場合ちゃうな。出したらんと」おばあさんはそう言うと、包丁を使って桃を切る事にしました。
「ほなら、ワシが押さえとくから」おじいさんは桃を両手で固定しました。おばあさんは中の子供を傷つけないように慎重に包丁で桃を切りました。
そして、中が見えるほどの穴が開いた時、桃は先端の部分からパカーンと開き男の子の赤ちゃんが産声をあげました。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
陸のくじら侍 -元禄の竜-
陸 理明
歴史・時代
元禄時代、江戸に「くじら侍」と呼ばれた男がいた。かつて武士であるにも関わらず鯨漁に没頭し、そして誰も知らない理由で江戸に流れてきた赤銅色の大男――権藤伊佐馬という。海の巨獣との命を削る凄絶な戦いの果てに会得した正確無比な投げ銛術と、苛烈なまでの剛剣の使い手でもある伊佐馬は、南町奉行所の戦闘狂の美貌の同心・青碕伯之進とともに江戸の悪を討ちつつ、日がな一日ずっと釣りをして生きていくだけの暮らしを続けていた……
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
明治仕舞屋顛末記
祐*
歴史・時代
大政奉還から十余年。年号が明治に変わってしばらく過ぎて、人々の移ろいとともに、動乱の傷跡まで忘れられようとしていた。
東京府と名を変えた江戸の片隅に、騒動を求めて動乱に留まる輩の吹き溜まり、寄場長屋が在る。
そこで、『仕舞屋』と呼ばれる裏稼業を営む一人の青年がいた。
彼の名は、手島隆二。またの名を、《鬼手》の隆二。
金払いさえ良ければ、鬼神のごとき強さで何にでも『仕舞』をつけてきた仕舞屋《鬼手》の元に舞い込んだ、やくざ者からの依頼。
破格の報酬に胸躍らせたのも束の間、調べを進めるにしたがって、その背景には旧時代の因縁が絡み合い、出会った志士《影虎》とともに、やがて《鬼手》は、己の過去に向き合いながら、新時代に生きる道を切り開いていく。
*明治初期、史実・実在した歴史上の人物を交えて描かれる 創 作 時代小説です
*登場する実在の人物、出来事などは、筆者の見解や解釈も交えており、フィクションとしてお楽しみください
上意討ち人十兵衛
工藤かずや
歴史・時代
本間道場の筆頭師範代有村十兵衛は、
道場四天王の一人に数えられ、
ゆくゆくは道場主本間頼母の跡取りになると見られて居た。
だが、十兵衛には誰にも言えない秘密があった。
白刃が怖くて怖くて、真剣勝負ができないことである。
その恐怖心は病的に近く、想像するだに震えがくる。
城中では御納戸役をつとめ、城代家老の信任も厚つかった。
そんな十兵衛に上意討ちの命が降った。
相手は一刀流の遣い手・田所源太夫。
だが、中間角蔵の力を借りて田所を斬ったが、
上意討ちには見届け人がついていた。
十兵衛は目付に呼び出され、
二度目の上意討ちか切腹か、どちらかを選べと迫られた。
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
三国志〜終焉の序曲〜
岡上 佑
歴史・時代
三国という時代の終焉。孫呉の首都、建業での三日間の攻防を細緻に描く。
咸寧六年(280年)の三月十四日。曹魏を乗っ取り、蜀漢を降した西晋は、最後に孫呉を併呑するべく、複数方面からの同時侵攻を進めていた。華々しい三国時代を飾った孫呉の首都建業は、三方から迫る晋軍に包囲されつつあった。命脈も遂に旦夕に迫り、その繁栄も終止符が打たれんとしているに見えたが。。。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる