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来てくれた
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次の日…というよりその日の朝方。
勿論寮の管理人に怒られた末、班長にも呼び出されて注意を受けた。班長は注意と言うにはやんわり過ぎた気もしたが。班長は最初なんだし誰にでも失敗はあるだろ的な意見らしい。
因みに色々聞かれたけど森に入ってたとしか説明してない。事情を説明してもよかったがそれだと少女を言い訳に使ったというか…少女のせいだと言っているような気がして嫌だった。私がもっと効率的に探せばあんなに遅くにならなかったかもしれないのだから。
色々怒られたけど解放されて今は訓練中。第一班の作戦立案の練習中だ。戦う相手は同じでも状況や場所によって難易度が変わるため苦手な訓練の一つだ。講師役の先輩騎士と議論していると扉がノックされた。
「第三班所属のカリナンです。第一班班長がライをお呼びです」
「え?」
入ってきたのはカリナン。普段来ない、来るはずのはいカリナンがどうしてと思ったのだが…班長が呼んでるって何事?
もしかして新しい情報でも入ったのだろうか。だとしてもわざわざカリナンを遣うほどだろうか。わざわざ違う班の人を?そんな手間のかかることするだろうか。私なら絶対にしないだろう。機密情報は関係者以外関わらせない方がいい。たとえ呼びに来る人であろうと。
しかも場所もな…指定された場所は騎士団本部の出入り口の門。そんなところに呼び出されたのは初めてだ。もしかして急に遠征に行ってこいとかかな…班長の事だし否定できないのがな…前例があるのだし。
もしそうだとしたら…流石に嫌だな。昨日の結構背中痛いからな。走る分には問題ないが馬に乗るとなると…覚悟はしとくか…
少し緊張しながら呼ばれた場所に行くとそこには昨日のリアちゃんとその母親そしてカール班長がいた。
「お待たせしてすみません。カール班長…と…リアちゃんにリアちゃんのお母さん」
「ああ…そんな待ってないから大丈夫。それでは私はこれで」
え?カール班長離れてったんだけど…え、これ私どうすればいいの?パニック状態なんですけど。誰かこの状況説明してくれないか?
「…えっと、何かありましたか?リアちゃんの事について…足の怪我とか…病院行って何かありましたかね…?」
「あ、いえ全然そんな感じではなくて…ほらリア」
「あ、の…あのね!お姉ちゃん、名前ね、おしえてほしいの」
「な、名前ですか?名前はライといいます。昨日教えればよかったですね」
「ライお姉ちゃん!あのね、昨日たすけてくれてありがと!これ!」
「リアちゃんが無事でよかったです。これは手紙と…ヘアピンですか?」
「すみません。リア、どうしても昨日のお姉さんに直接渡したいって言って連れてきたんです手紙とヘアピンです」
「今までね、ためてきたお金でね、買ったの!ライお姉ちゃんににあうと思って!」
「え、いいんですか?今まで貯めてきた大事なお金なのに私のために使って…リアちゃんの為に使っていいんですよ?」
「いいの!命のおんじんだから!」
「…ありがとうございます。大事に使いますね」
舌足らずに話すリアちゃんの視線に合わせるためしゃがんだが…腰が痛い。目の前の二人にバレないようにしながら立ち上がる。リアちゃんから貰ったものをよく見ると手紙の方にはまだ安定していない文字で"おねえちゃんへ"と書かれている。
リアちゃんが書いてくれたことが一目でわかるそれをヘアピンと一緒に胸ポケットに入れお礼を言うと満面の笑顔でどういたしましてと言われた。何となく達成感を感じ、背中の痛みも和らいでいく気になれる。
「本当にありがとうございました。病院に行ったところそこまで酷い怪我ではなかったのと応急処置が適切だったということで大事には至りませんでした」
「それは良かったです。次万が一こういうことがあったら迷わず捜索願を出して下さいね。リアちゃんの為にも」
「はい。本当にありがとうございました。上着と新品のタオルまで貸してくださって…」
お礼と共に渡された袋にはリアちゃんに貸していた上着と新品のタオルが入っていた。そういえばタグ外してなかったから新品であること丸わかりだったな…ちょっと反省。
袋の中を見ていると中に湿布が入っていることに気づいた。こんなの貸した覚えないんだけどな…と思いリアちゃんの母親の方を見る。
「あの、これ…」
「リアを助けるため崖を飛び降りたと聞きました…言いにくいかもしれないので…リアには秘密にしておきますね」
「…ありがとうございます」
…何でわかったのだろうか。もしかしたら戦闘職が経験アリの人なのかもな。歩き方とかしっかりしてるし。
「それでは私達はこれで」
「わざわざこんなところまでありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
「ライお姉ちゃん!ありがとう!」
「いえ。また会ったら色々話しましょう」
「バイバイ!」
去っていく二人を見送り訓練に戻ろうと踵を返したところ…目の前にカール班長が。いつの間に…気配すら感じなかったのだが。流石なのだが…この人に追い付ける日は来るのだろうかとも思ってしまう。
「ライ」
あ、何か言われる。
班長の第一声でしばらく訓練に戻れないことがわかった。その時の私の目はさぞ遠くを見ていたんだろうなと後になって思った。
勿論寮の管理人に怒られた末、班長にも呼び出されて注意を受けた。班長は注意と言うにはやんわり過ぎた気もしたが。班長は最初なんだし誰にでも失敗はあるだろ的な意見らしい。
因みに色々聞かれたけど森に入ってたとしか説明してない。事情を説明してもよかったがそれだと少女を言い訳に使ったというか…少女のせいだと言っているような気がして嫌だった。私がもっと効率的に探せばあんなに遅くにならなかったかもしれないのだから。
色々怒られたけど解放されて今は訓練中。第一班の作戦立案の練習中だ。戦う相手は同じでも状況や場所によって難易度が変わるため苦手な訓練の一つだ。講師役の先輩騎士と議論していると扉がノックされた。
「第三班所属のカリナンです。第一班班長がライをお呼びです」
「え?」
入ってきたのはカリナン。普段来ない、来るはずのはいカリナンがどうしてと思ったのだが…班長が呼んでるって何事?
もしかして新しい情報でも入ったのだろうか。だとしてもわざわざカリナンを遣うほどだろうか。わざわざ違う班の人を?そんな手間のかかることするだろうか。私なら絶対にしないだろう。機密情報は関係者以外関わらせない方がいい。たとえ呼びに来る人であろうと。
しかも場所もな…指定された場所は騎士団本部の出入り口の門。そんなところに呼び出されたのは初めてだ。もしかして急に遠征に行ってこいとかかな…班長の事だし否定できないのがな…前例があるのだし。
もしそうだとしたら…流石に嫌だな。昨日の結構背中痛いからな。走る分には問題ないが馬に乗るとなると…覚悟はしとくか…
少し緊張しながら呼ばれた場所に行くとそこには昨日のリアちゃんとその母親そしてカール班長がいた。
「お待たせしてすみません。カール班長…と…リアちゃんにリアちゃんのお母さん」
「ああ…そんな待ってないから大丈夫。それでは私はこれで」
え?カール班長離れてったんだけど…え、これ私どうすればいいの?パニック状態なんですけど。誰かこの状況説明してくれないか?
「…えっと、何かありましたか?リアちゃんの事について…足の怪我とか…病院行って何かありましたかね…?」
「あ、いえ全然そんな感じではなくて…ほらリア」
「あ、の…あのね!お姉ちゃん、名前ね、おしえてほしいの」
「な、名前ですか?名前はライといいます。昨日教えればよかったですね」
「ライお姉ちゃん!あのね、昨日たすけてくれてありがと!これ!」
「リアちゃんが無事でよかったです。これは手紙と…ヘアピンですか?」
「すみません。リア、どうしても昨日のお姉さんに直接渡したいって言って連れてきたんです手紙とヘアピンです」
「今までね、ためてきたお金でね、買ったの!ライお姉ちゃんににあうと思って!」
「え、いいんですか?今まで貯めてきた大事なお金なのに私のために使って…リアちゃんの為に使っていいんですよ?」
「いいの!命のおんじんだから!」
「…ありがとうございます。大事に使いますね」
舌足らずに話すリアちゃんの視線に合わせるためしゃがんだが…腰が痛い。目の前の二人にバレないようにしながら立ち上がる。リアちゃんから貰ったものをよく見ると手紙の方にはまだ安定していない文字で"おねえちゃんへ"と書かれている。
リアちゃんが書いてくれたことが一目でわかるそれをヘアピンと一緒に胸ポケットに入れお礼を言うと満面の笑顔でどういたしましてと言われた。何となく達成感を感じ、背中の痛みも和らいでいく気になれる。
「本当にありがとうございました。病院に行ったところそこまで酷い怪我ではなかったのと応急処置が適切だったということで大事には至りませんでした」
「それは良かったです。次万が一こういうことがあったら迷わず捜索願を出して下さいね。リアちゃんの為にも」
「はい。本当にありがとうございました。上着と新品のタオルまで貸してくださって…」
お礼と共に渡された袋にはリアちゃんに貸していた上着と新品のタオルが入っていた。そういえばタグ外してなかったから新品であること丸わかりだったな…ちょっと反省。
袋の中を見ていると中に湿布が入っていることに気づいた。こんなの貸した覚えないんだけどな…と思いリアちゃんの母親の方を見る。
「あの、これ…」
「リアを助けるため崖を飛び降りたと聞きました…言いにくいかもしれないので…リアには秘密にしておきますね」
「…ありがとうございます」
…何でわかったのだろうか。もしかしたら戦闘職が経験アリの人なのかもな。歩き方とかしっかりしてるし。
「それでは私達はこれで」
「わざわざこんなところまでありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
「ライお姉ちゃん!ありがとう!」
「いえ。また会ったら色々話しましょう」
「バイバイ!」
去っていく二人を見送り訓練に戻ろうと踵を返したところ…目の前にカール班長が。いつの間に…気配すら感じなかったのだが。流石なのだが…この人に追い付ける日は来るのだろうかとも思ってしまう。
「ライ」
あ、何か言われる。
班長の第一声でしばらく訓練に戻れないことがわかった。その時の私の目はさぞ遠くを見ていたんだろうなと後になって思った。
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