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後輩 ガリウスSide
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彼女の話を聞いている時、僕らは何も言い出さなかった。否、言い出せなかった。彼女か内側に秘めているものが少し明るみになっただけなのに、言葉がでなかったのだ。
彼女の考え方はただ日常を過ごしているだけでは身に付くことができないはずのことばかりで…ふと、似たような考え方を持っている人を思い出した。
奴隷。かつて保護した奴隷にそっくりだった。
その奴隷はまだ十三歳だったが、その子供も死は救済だ、死は地獄から逃れられる最後の砦だ、そう言っていた。その子供にそっくりだった。主張もそれを言っている時の目も、雰囲気も。まるで姿形が変わっただけで中身はその子供のように…
だからこそ、ゾッとした。ライがどういう育ちをしてきたのかが気になった。
一つの説として元々奴隷で今は解放されている、という説。正直これが一番有力だが、そうだとしたらどうやって解放されたのか気になる。
殆どの場合、解放されるのは国に保護された時。でもその場合だと、成人になるまでは国に保護…王宮内で過ごす決まりになっている。
これはターリスク王国だけではなく、殆どの国でそう決まっているため、この説はあまり現実的ではない。
キーカルと目線を合わせながら、どう報告するか頭を働かす。
実は僕たち三人がこうして第七班の援助にきたのは、それだけが理由じゃない。まあ、考えればわかる話で、人手が足らないからと言った理由で他の班を見学中の新人をわざわざ見学中止にしてまでも送り込むかって言われたら絶対にNoだ。
そもそも第一班は結構バタバタしていると言われているが、全員が常に忙しいかといわれればそういうわけではない。まだまだ未熟な新人を使う程忙しくはない。
それに第三班の一部も送り込まれているし、ぶっちゃけ僕たち二人だけでもなんとかなるのだ。一応僕たちはライの教育係だが、ライは優秀だし、常に行動しなくても何とかなる。
ライが派遣された主な理由として、第七班の取り調べ対象は騎士団の中で今回のような命を捨てようとする人が一番多い。そういった人と話して、ライがどんな反応をするか見るため。
なんだかんだで、上司達もライのことが気になっているっぽい。疑っているというよりは、心配しているという感じかな?
まあ、ライは騎士団の妹的存在から余計に心配なんだろうけど。かなり前から騎士団にいる人なんかはライのこと娘みたいに思っている人もいるみたいだし。
まあ、そういうことで僕たちはこのことを班長達に報告しないといけないんだけど…報告しづらい。ライの考えの一辺を知ってしまったがゆえに、人のプライベートに土足で踏みいった感じで、罪悪感がやばい。
捜査で必要なこととは理解しているものの敵でもなんでもない味方にこれをやっていると思うとやはり思うところがある。
キーカルも珍しく黙り込んでいるし、ライはこちらに見向きもせずに何か考え込んでいるようだし、場の雰囲気は最悪だ。
誰でもいいからこの雰囲気どうにかしてくれ…と心で叫んでいた時、タイミングよく誰かが帰ってきたようだ。しかも、一人ではなく複数人。
その中に見知った気配を感じる。この気配は確か…
「カリナン!」
「ライ!久しぶりだね!先輩方、初めまして」
第三班でライと同期のカリナン。確かどっかの男爵家の次男だった気がする。遠距離戦が得意でよくライとペアを組んでいる奴だった…気がする。
その場で適当に自己紹介をする。当然といえば当然なのだが、ライはカリナンと接する時と僕たちと接する時では全然違っていてびっくりした。まあ、表情は相変わらずピクリともしないのだが。
二人のやり取りを微笑ましく見ていると、キーカルが小声で話しかけてきた。
「なあ…ガリウス」
「何?班長の報告、キーカルがしてくれるのかい?」
「ちげぇよ!…そうじゃなくて、カリナンにライのこと聞けば少しは何かわかるんじゃねぇの?見た感じ、俺らより仲いいし。俺らが知らない情報も持ってる可能性あるぜ」
「ん~確かにそうだけど…なんかずるくない?」
「…それはそうだが、お前だって知りたいだろ?ライのこと」
「まあそうだけど…まあ、聞くだけ聞いてみるか…」
本当は自分の手で知りたかったが、僕たちは個人で動いているわけではなくて班長…自分達の上司に頼まれているわけで…使えるものはどんどん使って情報を収集しなければならないのだ。
個人で動いている分には全然妥協できるところも、上司が絡んでくると途端に妥協できなくなるからな…調査が終わって何もなかったらライになんか奢るか…
少し罪悪感を抱きながらもカリナンを呼び出したキーカルについていく。先輩二人に呼び出されて明らかに緊張している様子のカリナン。端から見ても可哀想になってくる。
「あの…先輩達が私に何か…?私何かやらかしましたっけ?」
「いや全然。むしろ優秀だと思うよ?ライもよく君のこと優秀だって言ってるし。ここに呼んだのは、一個聞きたいことがあるから」
「…何ですか?答えれる範囲なら答えますよ」
「君、ライのことどこまで知ってる?」
「?どこまでといいますと…」
「…単刀直入に言うと…君、ライの過去のこと、聞いたことある?」
彼女の考え方はただ日常を過ごしているだけでは身に付くことができないはずのことばかりで…ふと、似たような考え方を持っている人を思い出した。
奴隷。かつて保護した奴隷にそっくりだった。
その奴隷はまだ十三歳だったが、その子供も死は救済だ、死は地獄から逃れられる最後の砦だ、そう言っていた。その子供にそっくりだった。主張もそれを言っている時の目も、雰囲気も。まるで姿形が変わっただけで中身はその子供のように…
だからこそ、ゾッとした。ライがどういう育ちをしてきたのかが気になった。
一つの説として元々奴隷で今は解放されている、という説。正直これが一番有力だが、そうだとしたらどうやって解放されたのか気になる。
殆どの場合、解放されるのは国に保護された時。でもその場合だと、成人になるまでは国に保護…王宮内で過ごす決まりになっている。
これはターリスク王国だけではなく、殆どの国でそう決まっているため、この説はあまり現実的ではない。
キーカルと目線を合わせながら、どう報告するか頭を働かす。
実は僕たち三人がこうして第七班の援助にきたのは、それだけが理由じゃない。まあ、考えればわかる話で、人手が足らないからと言った理由で他の班を見学中の新人をわざわざ見学中止にしてまでも送り込むかって言われたら絶対にNoだ。
そもそも第一班は結構バタバタしていると言われているが、全員が常に忙しいかといわれればそういうわけではない。まだまだ未熟な新人を使う程忙しくはない。
それに第三班の一部も送り込まれているし、ぶっちゃけ僕たち二人だけでもなんとかなるのだ。一応僕たちはライの教育係だが、ライは優秀だし、常に行動しなくても何とかなる。
ライが派遣された主な理由として、第七班の取り調べ対象は騎士団の中で今回のような命を捨てようとする人が一番多い。そういった人と話して、ライがどんな反応をするか見るため。
なんだかんだで、上司達もライのことが気になっているっぽい。疑っているというよりは、心配しているという感じかな?
まあ、ライは騎士団の妹的存在から余計に心配なんだろうけど。かなり前から騎士団にいる人なんかはライのこと娘みたいに思っている人もいるみたいだし。
まあ、そういうことで僕たちはこのことを班長達に報告しないといけないんだけど…報告しづらい。ライの考えの一辺を知ってしまったがゆえに、人のプライベートに土足で踏みいった感じで、罪悪感がやばい。
捜査で必要なこととは理解しているものの敵でもなんでもない味方にこれをやっていると思うとやはり思うところがある。
キーカルも珍しく黙り込んでいるし、ライはこちらに見向きもせずに何か考え込んでいるようだし、場の雰囲気は最悪だ。
誰でもいいからこの雰囲気どうにかしてくれ…と心で叫んでいた時、タイミングよく誰かが帰ってきたようだ。しかも、一人ではなく複数人。
その中に見知った気配を感じる。この気配は確か…
「カリナン!」
「ライ!久しぶりだね!先輩方、初めまして」
第三班でライと同期のカリナン。確かどっかの男爵家の次男だった気がする。遠距離戦が得意でよくライとペアを組んでいる奴だった…気がする。
その場で適当に自己紹介をする。当然といえば当然なのだが、ライはカリナンと接する時と僕たちと接する時では全然違っていてびっくりした。まあ、表情は相変わらずピクリともしないのだが。
二人のやり取りを微笑ましく見ていると、キーカルが小声で話しかけてきた。
「なあ…ガリウス」
「何?班長の報告、キーカルがしてくれるのかい?」
「ちげぇよ!…そうじゃなくて、カリナンにライのこと聞けば少しは何かわかるんじゃねぇの?見た感じ、俺らより仲いいし。俺らが知らない情報も持ってる可能性あるぜ」
「ん~確かにそうだけど…なんかずるくない?」
「…それはそうだが、お前だって知りたいだろ?ライのこと」
「まあそうだけど…まあ、聞くだけ聞いてみるか…」
本当は自分の手で知りたかったが、僕たちは個人で動いているわけではなくて班長…自分達の上司に頼まれているわけで…使えるものはどんどん使って情報を収集しなければならないのだ。
個人で動いている分には全然妥協できるところも、上司が絡んでくると途端に妥協できなくなるからな…調査が終わって何もなかったらライになんか奢るか…
少し罪悪感を抱きながらもカリナンを呼び出したキーカルについていく。先輩二人に呼び出されて明らかに緊張している様子のカリナン。端から見ても可哀想になってくる。
「あの…先輩達が私に何か…?私何かやらかしましたっけ?」
「いや全然。むしろ優秀だと思うよ?ライもよく君のこと優秀だって言ってるし。ここに呼んだのは、一個聞きたいことがあるから」
「…何ですか?答えれる範囲なら答えますよ」
「君、ライのことどこまで知ってる?」
「?どこまでといいますと…」
「…単刀直入に言うと…君、ライの過去のこと、聞いたことある?」
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