73 / 120
国境へ
しおりを挟む
門のところに行くと既に二人がいて、待ってくれていた。
「ガリウス先輩。キーカル先輩。遅くなってすみません」
「いや。急に言われたからね。仕方ないよ。俺達も今来たところだし」
「ああ。それより早く行くぞ。ここから国境となるとどれだけ頑張っても二日はかかる。夜は下宿先も見つけなければならないし悠長にしている暇はないぞ」
キーカル先輩の言った通りここから国境までは馬を乗り継いだりして、最大限急いでも二日はかかる。でも当然ながら馬は疲れるし都合よく馬借ができるところなんてそう多くはない。そう考えると、大体三日~四日はかかるだろう。
持ち物の確認だけしてすぐに出発する。
基本的に私は2人の後ろをついていくだけなので、馬を走らせることに集中できる。いくら慣れてきたとはいえ、まだ馬との信頼関係は完成していない。たまにではあるが、言うことを聞いてくれないこともある。だから進路を考えなくてもいいのはかなり助かる。だからこそ、失敗は許されないのだが。
先輩達は迷いもなく進んでいく。勿論国境に行くのが初めてというわけではないだろうが、それでも地図も見ずに進めるのは流石としか言いようがない。
出発して暫くが経った。もうすぐで王都を出ることができるのだが、昼御飯を食べていないせいで体力の消耗が激しい。一応食料は持ってきたものの食べるタイミングが全然ない。片手操縦できる技術は持っていないしどうしたものか…
「…ライ、お腹空いた?」
「?いえ。全然まだ大丈夫です」
「「はあ…」」
計ったかのようにガリウス先輩が聞いてくるものだからビックリした。
お腹は空きまくっているが休憩している暇なんてないので、大丈夫だとアピールをしたら、なぜか二人に溜め息をつかれた。
「あのなぁ…腹が空いては戦ができぬって言うだろ?別にお腹空くのは当たり前なんだから、強がってんじゃねぇよ」
「そうそう!集合場所、昼御飯も食べずに来てくれたんでしょ?よくここまで我慢したよって感じだよ」
我慢と言うより…体力の消耗が激しくて嫌だな、と思っただけでお腹空いたという感覚はないんだよな…というより、奴隷時代は一日に一食すらも怪しい状況だったのでお腹が空いているという状況が当たり前だったんだよな…
まあそんなこと言うわけにもいかないから、反論せずに肯定しておく。そのまま流れで休憩になった。
昼御飯代わりに持ってきたのは、サンドウィッチ。その中でも、カツサンドを持ってきた。
サンドウィッチは五年前から急に流行り始めた食べ物で、北方の国のある人物が編み出した食べ物だ。
その人物はサンドウィッチ以外にも、うどんやカレーなど今では一般的料理として食べられるものを作った人物で、噂によると《異世界人》だとか。
その人物は国の保護を受けているため素性を知っている人は殆どいないようで、《異世界人》だという説はあながち間違っていないのではと思っている。
そんなことを思いながらも昼御飯を食べ、また出発する。
ターリスク王国はここら辺の国では珍しい、山々が王都とその周辺の街を囲んでいる地形でその山々を抜けるためにかなりの時間を使う。
勿論すぐに抜けられる抜け道みたいなのはあるのでそこを使っているのだが…途轍もなく狭いのだ。どのくらいかというと馬一匹通すのが精一杯、というぐらいだ。
これにはちゃんと理由があって、簡単に言うと敵に襲撃されたとしても国の要である王都には入れないように、という防衛のためだ。
詳しく説明しようとすると、ターリスク王国の千年間の歴史を辿る羽目になるので割愛するが。
30分程進んでようやく抜け道を出る。ここからはひたすらに走りまくるだけだ。とはいっても、ここからが長いんだが。
取り敢えず、もう日が暮れてきたのに加え馬達が疲れた様子を見せてきたので、近くの街で休むことにした。
「ここから一番近い街というと…ここですかね?」
「うん、そうだね。確かこの町は宿屋もあった筈。キーカルもそれでいい?」
「ああ。近いといってもここから20分程度かかる。早く移動するぞ」
「はい」
その街は無名の街だがある程度は栄えている街のようで、宿屋も数件あるようだ。
この国では全ての街に名前をつけていると、とんでもない量になるのでかなり栄えてないと名前をつけていない。例えば、上級貴族である伯爵以上の位の貴族の本家がその街に二人以上いることなどだ。
そんなわけで、ある程度栄えているが名前のついていない街というのはかなりあり、私達が向かっている街もそのうちの一つ、というわけだ。
暫く馬を走らせようやく到着した。門番がいたが身分証明書を見せるとすぐに退いてくれた。それどころか上位敬礼までしてくれた。彼らも一応騎士の筈だが普通の敬礼じゃないんだな、と思っているとガリウス先輩が教えてくれた。
「俺達は王都で雇われた、いうなれば王族直轄の騎士団だ。対して、街にいる騎士団はその街が必要だと判断して作った、いうなれば自衛団。王族に直接認められた訳じゃない。だから同じ騎士でも立場はこっちの方が上ってわけ」
「成る程…」
確かに、その街ごとに私達の騎士団が配属されたら肝心の王都や国境の守りが薄くなってしまう。
それに、もしその街に配属されたとしてもその街のことをよくも知らない奴らに街を守られても不安なだけだろう。となると王都側からしても街側からしても、街独自で騎士団を作ってもらった方がやりやすいのだろう。
その分去年みたいに内乱をおこされるとかなり大規模になるのだが。
その後は何とか宿屋を見つけ、夜ごはんを食べて就寝した。
「ガリウス先輩。キーカル先輩。遅くなってすみません」
「いや。急に言われたからね。仕方ないよ。俺達も今来たところだし」
「ああ。それより早く行くぞ。ここから国境となるとどれだけ頑張っても二日はかかる。夜は下宿先も見つけなければならないし悠長にしている暇はないぞ」
キーカル先輩の言った通りここから国境までは馬を乗り継いだりして、最大限急いでも二日はかかる。でも当然ながら馬は疲れるし都合よく馬借ができるところなんてそう多くはない。そう考えると、大体三日~四日はかかるだろう。
持ち物の確認だけしてすぐに出発する。
基本的に私は2人の後ろをついていくだけなので、馬を走らせることに集中できる。いくら慣れてきたとはいえ、まだ馬との信頼関係は完成していない。たまにではあるが、言うことを聞いてくれないこともある。だから進路を考えなくてもいいのはかなり助かる。だからこそ、失敗は許されないのだが。
先輩達は迷いもなく進んでいく。勿論国境に行くのが初めてというわけではないだろうが、それでも地図も見ずに進めるのは流石としか言いようがない。
出発して暫くが経った。もうすぐで王都を出ることができるのだが、昼御飯を食べていないせいで体力の消耗が激しい。一応食料は持ってきたものの食べるタイミングが全然ない。片手操縦できる技術は持っていないしどうしたものか…
「…ライ、お腹空いた?」
「?いえ。全然まだ大丈夫です」
「「はあ…」」
計ったかのようにガリウス先輩が聞いてくるものだからビックリした。
お腹は空きまくっているが休憩している暇なんてないので、大丈夫だとアピールをしたら、なぜか二人に溜め息をつかれた。
「あのなぁ…腹が空いては戦ができぬって言うだろ?別にお腹空くのは当たり前なんだから、強がってんじゃねぇよ」
「そうそう!集合場所、昼御飯も食べずに来てくれたんでしょ?よくここまで我慢したよって感じだよ」
我慢と言うより…体力の消耗が激しくて嫌だな、と思っただけでお腹空いたという感覚はないんだよな…というより、奴隷時代は一日に一食すらも怪しい状況だったのでお腹が空いているという状況が当たり前だったんだよな…
まあそんなこと言うわけにもいかないから、反論せずに肯定しておく。そのまま流れで休憩になった。
昼御飯代わりに持ってきたのは、サンドウィッチ。その中でも、カツサンドを持ってきた。
サンドウィッチは五年前から急に流行り始めた食べ物で、北方の国のある人物が編み出した食べ物だ。
その人物はサンドウィッチ以外にも、うどんやカレーなど今では一般的料理として食べられるものを作った人物で、噂によると《異世界人》だとか。
その人物は国の保護を受けているため素性を知っている人は殆どいないようで、《異世界人》だという説はあながち間違っていないのではと思っている。
そんなことを思いながらも昼御飯を食べ、また出発する。
ターリスク王国はここら辺の国では珍しい、山々が王都とその周辺の街を囲んでいる地形でその山々を抜けるためにかなりの時間を使う。
勿論すぐに抜けられる抜け道みたいなのはあるのでそこを使っているのだが…途轍もなく狭いのだ。どのくらいかというと馬一匹通すのが精一杯、というぐらいだ。
これにはちゃんと理由があって、簡単に言うと敵に襲撃されたとしても国の要である王都には入れないように、という防衛のためだ。
詳しく説明しようとすると、ターリスク王国の千年間の歴史を辿る羽目になるので割愛するが。
30分程進んでようやく抜け道を出る。ここからはひたすらに走りまくるだけだ。とはいっても、ここからが長いんだが。
取り敢えず、もう日が暮れてきたのに加え馬達が疲れた様子を見せてきたので、近くの街で休むことにした。
「ここから一番近い街というと…ここですかね?」
「うん、そうだね。確かこの町は宿屋もあった筈。キーカルもそれでいい?」
「ああ。近いといってもここから20分程度かかる。早く移動するぞ」
「はい」
その街は無名の街だがある程度は栄えている街のようで、宿屋も数件あるようだ。
この国では全ての街に名前をつけていると、とんでもない量になるのでかなり栄えてないと名前をつけていない。例えば、上級貴族である伯爵以上の位の貴族の本家がその街に二人以上いることなどだ。
そんなわけで、ある程度栄えているが名前のついていない街というのはかなりあり、私達が向かっている街もそのうちの一つ、というわけだ。
暫く馬を走らせようやく到着した。門番がいたが身分証明書を見せるとすぐに退いてくれた。それどころか上位敬礼までしてくれた。彼らも一応騎士の筈だが普通の敬礼じゃないんだな、と思っているとガリウス先輩が教えてくれた。
「俺達は王都で雇われた、いうなれば王族直轄の騎士団だ。対して、街にいる騎士団はその街が必要だと判断して作った、いうなれば自衛団。王族に直接認められた訳じゃない。だから同じ騎士でも立場はこっちの方が上ってわけ」
「成る程…」
確かに、その街ごとに私達の騎士団が配属されたら肝心の王都や国境の守りが薄くなってしまう。
それに、もしその街に配属されたとしてもその街のことをよくも知らない奴らに街を守られても不安なだけだろう。となると王都側からしても街側からしても、街独自で騎士団を作ってもらった方がやりやすいのだろう。
その分去年みたいに内乱をおこされるとかなり大規模になるのだが。
その後は何とか宿屋を見つけ、夜ごはんを食べて就寝した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
追い出された万能職に新しい人生が始まりました
東堂大稀(旧:To-do)
ファンタジー
「お前、クビな」
その一言で『万能職』の青年ロアは勇者パーティーから追い出された。
『万能職』は冒険者の最底辺職だ。
冒険者ギルドの区分では『万能職』と耳触りのいい呼び方をされているが、めったにそんな呼び方をしてもらえない職業だった。
『雑用係』『運び屋』『なんでも屋』『小間使い』『見習い』。
口汚い者たちなど『寄生虫」と呼んだり、あえて『万能様』と皮肉を効かせて呼んでいた。
要するにパーティーの戦闘以外の仕事をなんでもこなす、雑用専門の最下級職だった。
その底辺職を7年も勤めた彼は、追い出されたことによって新しい人生を始める……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる