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訓練⑥
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魔物を倒せし、息を吐く。
私が最後に使った魔術はエリクトリック·ショックだ。感電させるだけの魔術だが、魔力を込めれば感電死させることもできる。魔力の消費が激しいが、さっきの一撃で仕留めるためには仕方なかったと考えている。
それにしても、怪我をしている三人をどうするかぎ問題だ。このまま続けても危ないし棄権することになるとは思うが、せめて応急措置ぐらいはしておきたい。カリナンが無線機の魔道具でベテラン騎士に伝えて貰っているので時季にくるとは思うが、何分で着くかも判らない。しかもじっくりと怪我の様子を見ると、未だに出血が止まっておらず、このままだと命の危険も出てくる。圧迫止血をしているものの、手が足りない。三人の騎士はかなり憔悴した様子で、荒い息をしている。
私は自身のマントを切り裂き、その布を手当てに使う。幸いこのマントは魔力修復がついているので新しく買う必要もない。
止血部分に布を当て、きつく縛る。これで少しはましになるだろうが、危ない状況であることには変わらない。しかも、この辺りには血が大量に散っていて、その臭いに釣られて魔物が来ても可笑しくない。カリナンも動けるとはいえ負傷しているし、無理はさせたくない。かといって移動しようにも馬もないし、三人を担ごうにも手が足りない。風魔法で運ぼうにも、二人以上の他人を運ぶなんてしたことないし、コントロールできるかもわからない。どうするか。
そんなことを思っていると、連絡し終えたようで、カリナンがこちらにやってきた。
「取り敢えず近くの安全な場所に避難してろ、だって。どうする?この辺だとここが一番安全な場所だったけど、今は血の臭いとかで危ないよね…」
「そうですね…取り敢えず三人を移動させようにも方法が…」
「だよね…でも、先輩達がいつ来るかわからない以上、いつまでもここに居座るわけにはいかないよね」
「取り敢えず、カリナンの手当てだけやってしまいましょう。見せてください。簡単な手当てならできるので」
その後、カリナンの手当てをやった後も少し考えたが、結局いい案はでず、交代で辺りの警戒をする、という結論になった。
本当はカリナンの傷が開くといけないから私一人でやる、と言ったのだが、カリナンの強い意思に負けたのだ。
三人の状態はかなり悪く、傷口から細菌が入ったのか頬が赤くなっている。額を触ると明らかに熱く、熱があることは明白だ。
カリナンに綺麗な水を出してもらい、マントをタオル代わりに額に当てているが、ちゃんとしたところで治療を受けた方がいいだろう。
数十分後。寄ってくる魔物を蹴散らし看病をしていると、遠くから馬の走る音が聞こえた。先輩達だ。
徐々にその音は近づき姿を見せたのは、ベテラン騎士の一人と、馬が二匹だった。
カリナンと顔を見合わせ、ほっと安堵する。いくら二人態勢とはいえ、いつ魔物が来てもいいように看病側に回っても気を張っていたから、かなり疲れた。途中でかなり強い魔物にも襲われ、私もカリナンもかなりの怪我を負っていた。
かなりヤバイと思っていたところに救助に来てくれたのだから、その安心感は計り知れないものだ。
三人の騎士を馬に乗せた後先輩は、三人の状態がかなり危ないということですぐに去っていった。
「ライ。ありがとう」
「こちらこそ」
私達は拳を付き合わせる。大変だったが、私一人ではやばかったし、何度もカリナンに助けられた。お礼を言うのはこっちなのだ。
「それじゃ、また後で」
「はい。また」
私達は別々の方向へと進む。あくまで今回は特別。今からは訓練のルールに乗っ取って協力プレイはやらない。次に会うのは明日の訓練終了の合図が鳴ってからだ。
私が最後に使った魔術はエリクトリック·ショックだ。感電させるだけの魔術だが、魔力を込めれば感電死させることもできる。魔力の消費が激しいが、さっきの一撃で仕留めるためには仕方なかったと考えている。
それにしても、怪我をしている三人をどうするかぎ問題だ。このまま続けても危ないし棄権することになるとは思うが、せめて応急措置ぐらいはしておきたい。カリナンが無線機の魔道具でベテラン騎士に伝えて貰っているので時季にくるとは思うが、何分で着くかも判らない。しかもじっくりと怪我の様子を見ると、未だに出血が止まっておらず、このままだと命の危険も出てくる。圧迫止血をしているものの、手が足りない。三人の騎士はかなり憔悴した様子で、荒い息をしている。
私は自身のマントを切り裂き、その布を手当てに使う。幸いこのマントは魔力修復がついているので新しく買う必要もない。
止血部分に布を当て、きつく縛る。これで少しはましになるだろうが、危ない状況であることには変わらない。しかも、この辺りには血が大量に散っていて、その臭いに釣られて魔物が来ても可笑しくない。カリナンも動けるとはいえ負傷しているし、無理はさせたくない。かといって移動しようにも馬もないし、三人を担ごうにも手が足りない。風魔法で運ぼうにも、二人以上の他人を運ぶなんてしたことないし、コントロールできるかもわからない。どうするか。
そんなことを思っていると、連絡し終えたようで、カリナンがこちらにやってきた。
「取り敢えず近くの安全な場所に避難してろ、だって。どうする?この辺だとここが一番安全な場所だったけど、今は血の臭いとかで危ないよね…」
「そうですね…取り敢えず三人を移動させようにも方法が…」
「だよね…でも、先輩達がいつ来るかわからない以上、いつまでもここに居座るわけにはいかないよね」
「取り敢えず、カリナンの手当てだけやってしまいましょう。見せてください。簡単な手当てならできるので」
その後、カリナンの手当てをやった後も少し考えたが、結局いい案はでず、交代で辺りの警戒をする、という結論になった。
本当はカリナンの傷が開くといけないから私一人でやる、と言ったのだが、カリナンの強い意思に負けたのだ。
三人の状態はかなり悪く、傷口から細菌が入ったのか頬が赤くなっている。額を触ると明らかに熱く、熱があることは明白だ。
カリナンに綺麗な水を出してもらい、マントをタオル代わりに額に当てているが、ちゃんとしたところで治療を受けた方がいいだろう。
数十分後。寄ってくる魔物を蹴散らし看病をしていると、遠くから馬の走る音が聞こえた。先輩達だ。
徐々にその音は近づき姿を見せたのは、ベテラン騎士の一人と、馬が二匹だった。
カリナンと顔を見合わせ、ほっと安堵する。いくら二人態勢とはいえ、いつ魔物が来てもいいように看病側に回っても気を張っていたから、かなり疲れた。途中でかなり強い魔物にも襲われ、私もカリナンもかなりの怪我を負っていた。
かなりヤバイと思っていたところに救助に来てくれたのだから、その安心感は計り知れないものだ。
三人の騎士を馬に乗せた後先輩は、三人の状態がかなり危ないということですぐに去っていった。
「ライ。ありがとう」
「こちらこそ」
私達は拳を付き合わせる。大変だったが、私一人ではやばかったし、何度もカリナンに助けられた。お礼を言うのはこっちなのだ。
「それじゃ、また後で」
「はい。また」
私達は別々の方向へと進む。あくまで今回は特別。今からは訓練のルールに乗っ取って協力プレイはやらない。次に会うのは明日の訓練終了の合図が鳴ってからだ。
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