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訓練④
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森の奥へと足を向けてから数時間。そろそろ夜営の準備をしたいところ……なのだが、私はとある魔物と向き合っていた。
時は数十分前に遡る。
上級魔物に出会ったら刺激しないように逃げ、それ以外の魔物を狩る。そんな行動を続けて暫くが経ち、野営のための場所確保をしようとしていた。
「~~~~!」
何処からか聞き馴染みのある声が聞こえた。私は慌ててそちらに向かう。声がする方向からは、複数の人の気配と共に、上級魔物の気配もしたからだ。ただ、声がするまではその人はベテラン騎士だと思っていた。そんな真剣に気配を読んでいないから、人の強さの区別がつかなかったからだ。人や獣人、魔族などと違い、魔物は個体ごとの強さが割りとはっきりとついている。だから軽く気配を読むだけでなんとなく上級魔物であるかどうかがわかるのだが…今回はそれが裏目にでた。最初にしっかりと確認しておけばよかったな。少し後悔しながらもそちらに向かうとカリナンが三人の騎士を背中に、上級魔物と向き合っていた。三人は足や腕などを怪我しており、とても戦える状況ではなさそうだ。とはいいカリナンもそれなりに体力を失っており、見るからに疲弊している。
憶測ではあるが、怪我をしている三人がやられそうな所にカリナンが来て、助けたってところか。
ただ、今の状況的にカリナンがこのまま倒せるとは思わない。カリナンが弱いわけではないが、薙刀を使っているわけではないし、かなりの近距離戦だ。それと今まで余り気にしてこなかったが、カリナンの適正魔法は水。確か水流魔術も取得していた筈。どちらも近距離戦で使えるような技はなかった筈。それも今カリナンが苦戦している一種の要因なのだろう。
カリナンが向き合ってる魔物は私も余り戦ったことがない。奴隷時代に三回ほどあるが、いずれも倒さずに逃げることに徹したため、弱点なども余り知らない。
そうこうしている内にカリナンが吹っ飛ばされ、木に衝突した。幸い目立った怪我はせずすぐに立ち上がったが、痛みが残るのか、顔をしかめている。これ以上はカリナンだけでなく、怪我をしている三人も危険。そう判断した私はカリナンの元へと駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「ライ!?どうしてここに?」
「近くでカリナンの声が聞こえたので。このままだとカリナンだけでなく、怪我をしている三人も危険だと思って」
三人はどうやらカリナンと同じ第三班のようだ。だからこそ、カリナンは必死に守っていたのかもしれない。
「そこの三人は歩けるようなら茂みに避難してください。カリナン。疲れているところ申し訳ないですが、手伝ってくれませんか?」
「勿論だよ。元々私が戦ってたわけだしね」
この魔物を一人で倒せる程私は強くない。カリナンには申し訳ないが、今回は二人で倒した方がいい。懸念材料として、お互い適正武器ではないことだが、そこは仕方ない。一先ずこの魔物を倒すことだけを考えないと。
目の前の魔物は急に現れた私に警戒して攻撃してこない。ある程度の頭脳があるのだろう。低級魔物なら構わず突っ込んでくるだろう。
三人が茂みに入ったのを確認し、私達は何時もの訓練の通りに位置につく。
「なんかライがいるだけで心強いよ」
「私も、カリナンがいると安心して背中を見せられます」
正面には唸り声をあげてる上級魔物。
こいつに勝つ。勝てればいい。手段は選ばない。何十とある作戦の中から一番いい選択肢を……
時は数十分前に遡る。
上級魔物に出会ったら刺激しないように逃げ、それ以外の魔物を狩る。そんな行動を続けて暫くが経ち、野営のための場所確保をしようとしていた。
「~~~~!」
何処からか聞き馴染みのある声が聞こえた。私は慌ててそちらに向かう。声がする方向からは、複数の人の気配と共に、上級魔物の気配もしたからだ。ただ、声がするまではその人はベテラン騎士だと思っていた。そんな真剣に気配を読んでいないから、人の強さの区別がつかなかったからだ。人や獣人、魔族などと違い、魔物は個体ごとの強さが割りとはっきりとついている。だから軽く気配を読むだけでなんとなく上級魔物であるかどうかがわかるのだが…今回はそれが裏目にでた。最初にしっかりと確認しておけばよかったな。少し後悔しながらもそちらに向かうとカリナンが三人の騎士を背中に、上級魔物と向き合っていた。三人は足や腕などを怪我しており、とても戦える状況ではなさそうだ。とはいいカリナンもそれなりに体力を失っており、見るからに疲弊している。
憶測ではあるが、怪我をしている三人がやられそうな所にカリナンが来て、助けたってところか。
ただ、今の状況的にカリナンがこのまま倒せるとは思わない。カリナンが弱いわけではないが、薙刀を使っているわけではないし、かなりの近距離戦だ。それと今まで余り気にしてこなかったが、カリナンの適正魔法は水。確か水流魔術も取得していた筈。どちらも近距離戦で使えるような技はなかった筈。それも今カリナンが苦戦している一種の要因なのだろう。
カリナンが向き合ってる魔物は私も余り戦ったことがない。奴隷時代に三回ほどあるが、いずれも倒さずに逃げることに徹したため、弱点なども余り知らない。
そうこうしている内にカリナンが吹っ飛ばされ、木に衝突した。幸い目立った怪我はせずすぐに立ち上がったが、痛みが残るのか、顔をしかめている。これ以上はカリナンだけでなく、怪我をしている三人も危険。そう判断した私はカリナンの元へと駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「ライ!?どうしてここに?」
「近くでカリナンの声が聞こえたので。このままだとカリナンだけでなく、怪我をしている三人も危険だと思って」
三人はどうやらカリナンと同じ第三班のようだ。だからこそ、カリナンは必死に守っていたのかもしれない。
「そこの三人は歩けるようなら茂みに避難してください。カリナン。疲れているところ申し訳ないですが、手伝ってくれませんか?」
「勿論だよ。元々私が戦ってたわけだしね」
この魔物を一人で倒せる程私は強くない。カリナンには申し訳ないが、今回は二人で倒した方がいい。懸念材料として、お互い適正武器ではないことだが、そこは仕方ない。一先ずこの魔物を倒すことだけを考えないと。
目の前の魔物は急に現れた私に警戒して攻撃してこない。ある程度の頭脳があるのだろう。低級魔物なら構わず突っ込んでくるだろう。
三人が茂みに入ったのを確認し、私達は何時もの訓練の通りに位置につく。
「なんかライがいるだけで心強いよ」
「私も、カリナンがいると安心して背中を見せられます」
正面には唸り声をあげてる上級魔物。
こいつに勝つ。勝てればいい。手段は選ばない。何十とある作戦の中から一番いい選択肢を……
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