奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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行方不明事件⑬

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先に進むべきか、先輩達を待つか

どうすべきか悩んでいると、かすかな気配を感じた。気配は1人。どこか感じたことがあるような気配だ。どこで感じたかは忘れたが、かなり新しい記憶なので、騎士団の中でなのだろう。ということはこの先に班長達がいる可能性が高い。カール班長の気配は感じられないが、それは私の技量不足のせいだろう。カール班長がやろうと思えば、気配を極限まで消すことはんて容易いだろうし。

本当は今すぐにでも先へ進みたいところなのだが、この先に班長達がいるのであれば、それを押さえ込める程の力を持つ人物もいる可能性が高い。今の私が万全な状態であるならともかく、体力もかなり削られ傷も浅くない。このまま行ったところで、殺されるないしは人質にされることは目に見えている。ここは先輩達を呼んで来るのが得策か。

外に出ると、先輩達が囲まれていた。敵は1人、いや1匹?…ではなかったのだ。先輩達なら勝てるとは思うし、事実余裕そうな顔をしているが、早く班長達のところに向かわなければならない。幸い、敵達は先輩達に夢中でこちらに気付いている様子もない。今がチャンスだ。火炎魔術Lv.9

「焼き尽くせ 更地に変えろ マイリー·フレーム」

かなり魔力を削られたがお陰で一瞬で倒せた。1匹だけ残しておく。この敵達は人の形をして、攻撃の仕方も人そっくりなのに、気配は魔物に近い。そんなの聞いたことも見たこともない。もし突然変異だとしたら早急に研究を進めないといけない。見た目は人そっくりなのだから、気配が分からない一般人が騙され、逃げずに襲われるかもしれない。まあ要するに実験材料として残しておくということだ。
因みにそいつは私の意図を理解した先輩達により、ボロボロの状態で気絶している。

「ありがとな。それで、なんか見つけたのか?」

「はい。隠し部屋を。その奥から班長らしき気配を感じました」

「よし。ちゃんと報告できるじゃねぇか。そんじゃ、行くか」

隠し部屋の場所を伝えると、移動し始める先輩達。
私は少しびくびくしながらついていく。なんせ相手がどのくらいの強さなのかも分からないのだ。ただ、さっきの敵より強いことしか分からない。さっきの敵の襲撃にすら対応できなかった私が行っても足手まといなのではないか。そもそも、実力全てにおいて先輩達より劣っているのに…などと思っていると、ガリウス先輩が近づいてきた。
そして、私の頭を乱暴に撫でてきた。

「あんま変なこと考えんなよ。役にたってんだから。頑張れよ」

「は……」

思わず声がでる。先輩に気付かれるとは思わなかったし、フォローされるとも思わなかった。でも、少し気が楽になった気がする。
私は前を進む先輩の背を追って、声をかける。

「あの、ありがとうございます」

「おうよ!」

そして私達は隠し部屋の前にたどり着く。流石に全員小屋には入れないので私を含めた10人のみ小屋に入り、それ以外は辺りを警戒することとなった。
なぜ新人の私が行くことになったかというと、単純に経験を積ませるためらしい。そのために貴重な10人の中に入ってもいいのかとも思うがそこは第1班だから、ということにしておく。

「…確かに、班長達の気配を感じるな。ライは1人しか感じられなかったようだが、ちゃんと3人いるな。あと…敵らしき気配が10人ってとこか。行けるか?」

「「はい!」」

あと少し。班長達さえ開放できれば勝ちだ。
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