奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

文字の大きさ
上 下
23 / 120

異常事態⑥

しおりを挟む
「「古代魔術!?」」

いきなりもう一人の奴隷商人が消えた。慌てて距離を取る。
奴隷商人が使ったのは今は使える人がほとんどいないと言われる古代魔術。古代魔術は不明なことが多く、対処のしようがない。
突然のことに反応できなかった私達だが、すぐに異変に気付く。

「班長。応援を呼んだ方が良いです。このままだとヤバいです」

「ああ。悪いがもう一度、時間稼ぎを頼む」

奴隷商人の魔力が何十倍にも増え、加えて殺気の量も増えた。さっきより格段と強くなってる。
さすがに2人だときついので、応援を呼んでもらう。さすがにここで連絡するわけにもいかないので少し離れたところで。
それまで、時間稼ぎとしますか。

さっきまで立つのがやっとだったが、先程半獣化したので、体力もある程度回復し、身体能力も上がっている。

「タイマンでやるつもりとか、馬鹿だな。半獣化して何をしようとしているかは知らないが、俺に勝負を挑む時点で敗けは確定してるんだよ!くくっ!」

……なにか言っているが無視だ。今私に求められていることは集中すること。目を閉じ、ありとあらゆる五感を働かせ、ありとあらゆる変化に気付けるように。

「……恐怖で動けないか。良いだろう。すぐに終わらせてやる」

奴隷商人がこちらに来る気配がする。

「くくっそのまま堕ちろ」

そして奴隷商人が手をこちらに伸ばしてきたと同時に私は唱える。空間魔術Lv.10

「裂けろ 割れろ スペシャル·ディスカントユーティ」

この魔術はブラックホールと同じLv.10。魔術の中でブラックホールが効かないのはこの魔術と、古代魔術のみ。
効果は空間を裂くというもの。歪ませるのとは違くて、完全に空間を断つ。

だから今、私の首のすぐ近くは空間が断たれていて、時空の歪みが生じている。因みにこの歪みは時間が経つと戻るので、特に悪影響はない。

「空間を断っただけで俺に勝とうなど……!?」

喋っている間だが、気にせず鎌で攻撃をいれる。
ギリギリで避けられたが、気にせず追撃していく。

「真面目すぎると友だち減ってくぞ?」

煩いな。こいつはなにか喋っていないと死ぬ呪いでもかかっているのか。
大体、仕事中に真面目じゃない方が友だち減るわ。アホなのか。

まあ、私には関係ないが。
というかこいつ、短縮詠唱で古代魔術使ってくるんだが。こういうところで天才を出さなくていいんだよ。めんどくさい。

「ライ!」

20分程、攻防をしているが若干押されぎみになっていた時、班長がカリナンを含めた騎士を連れてやってきた。
裏路地であることを踏まえ、連れてきたのは3人のみ。それでもかなり助かる。

「仲間が増えたところで勝敗は変わらねぇよ。これからお前らは全滅するんだよ」

いい加減なことを抜かしている奴隷商人。
私はカリナンと目を合わせ、会話する。

「(さっさと終わらせましょう。煩いです)」

「(そうだね。……ちゃんと合わせてよ?)」

「(勿論です)」

そして私達は攻撃を加える。
勿論、他の騎士さんや班長も。さすがにベテランなだけあって、息ぴったりだ。

「いい加減お縄についてください。この犯罪者が」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

処理中です...