奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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約束

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ウィンさんが試験に落ちた。

何で?実技試験の時は最後の方まで残ってたし、筆記だってそこまで悪い点数をとった訳でもないはず。なのに何で?
……理由はわからないが、ウィンさんが試験に落ち、私だけ受かったことには変わらない。

「……ライ」

「……はい」

「合格おめでとう。そんなに……気まずい顔、しないでよ。……私の分まで、頑張って。ね?」

ウィンさんは落ちて辛いはずなのに、私の合格を祝ってくれる。
今にも泣きそうな顔してるのに、それを隠して、言葉を掛けてくれる。
こんないい友人に、私はどう対応すれば良いのだろう。

「ほら、笑って?」

……言葉は自然とあふれでるもの。

「ウィンさん!」

「ん?」

「私はこれから忙しくなると思います。でも!」

「手紙だって送ります。何も、もう会えない訳じゃないんです!だから……」

「来年、の、入団式で、私、待ってますから!」

「!!」

だから、ウィンさん。

「それまで、諦めないでください!」

私達奴隷は、いつどこで奴隷商人に連れ戻されるかわからない。
だから騎士団に入ることで、自分の身を守ることが出来る。
騎士団には、奴隷商人も中々手が出せないから。

でも、ウィンさんは落ちてしまった。
……だったら、彼女のことは誰が守るというのだ?
……私しかいない。
初めてで来た友人を、簡単に失ってたまるものか。

ウィンさんは、強い。

だから、来年の入団式。
立場は違うかもしれないけど、そこで再開したいです。

多分ウィンさんはこれから王都を離れるだろうから。
次会うのは、来年の入団式。

それまで、ウィンさんのことは出来るだけ気にかけていよう。

「約束です!」

「……うん。約束、だね」

小指を絡み合わせる。

どこかで学んだ。
約束をするときは自分と相手の小指を絡ませて、言葉を紡ぐ。

「「指切りげんまん嘘ついたら はりせんぼん飲ーます」」

「「指切った!」」

また来年だね。ウィンさん。
その時には、今よりもっと成長した姿を見せれるといいな。


一時間後。

私達は訓練場で、入団式をしていた。
今、総長であるジーク·アーモン公爵の話が終わった。
今から班の振り分けと、班ごとで模擬戦を行うらしい。

「まず、39番、第5班!198番、第7班!~」

受験番号順に呼ばれていく。

「~1569番、第1班!2953番、第4班!~」

……!?え、?今なんて?
私の番号呼ばれた?第1班って、作戦とか立てるから、優秀な人が就くんじゃなかった?
しかも、就く人はだいたい騎士団に3年以上いる人だって聞いたことある。

……マジかよ

その後の班振り分けは、呆然としていて何も耳に残らなく、周りにいる人にじろじろ見られた。
でもこれは不可抗力だから、仕方がない。

……これからが不安だ。
何も起きなければいいが、確実に何か起こるだろうな。
なんせ新人が第1班に就くなんて前代未聞。
いくら上からの指示だからって、不満を抱く人はいるだろうし、突っ掛かってくるひと悶着少からずはいるだろう。
一番怖いのは、先輩騎士や、年上騎士に舐められた時。
余り強く出て揉め事を起こすのも嫌だ。 

まあ、最悪、潰して口止めすれば問題ないが。
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