奴隷少女は騎士となる

灰色の街。

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ギルド

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次の日の朝8時。私は"ギルド"と書かれた看板がある建物の前にいた。
結局、昨日は宿を取ることができなくて、野宿した。
でも、夕食は確保できたので、不幸中の幸いだ。

……それにしても。ギルドってでかいんだな。
中に入ると、奥には酒場、手前には武器屋。と、冒険者が寄りやすいようになっているようだ。

「ねぇ、さっきから動かないけど大丈夫?」

少しの間止まっていたので心配したようだ。赤狐族の女の子が話しかけてきた。

「はい。大丈夫です。初めてギルドに来たので、びっくりしてしまって」

「あー。それはびっくりしても仕方ないわ。私も最初来たとき、驚いたもん」

何だろう。少し、違和感を感じた。
別に怪しいとかではなく、何かを隠されているような、そんな感じがするのだ。

「私の名前はウィン。あなたは?」

「……ライです」

「あはは。そんなに警戒しなくてもいいのに。ライの言うことも分かるよ。私を見てると、何かを隠されているような感じがするんでしょ?」

「!!」

何で分かったのだ?

「何で分かったのかと言うとね……私も同じだからだよ」

そう言うとウィンさんは自身の首元を少し見せた。私にしか分からないような角度で。

「な、んで……」

そこには、"私と同じ"チョーカーがあった。

「……続きは外でしよっか」

あまりの衝撃で私はただ、頷くことしか出来なかった。

だってそうだろう?
奴隷生活から解放されるなんて、全体の1割ぐらいしかいない。
そしてその1割の中の9割が騎士などによって保護された奴隷だ。
私みたいに奴隷でありながらも、奴隷生活から解放されるなんてほぼ、というか全くと言っていいほどいない。
にも関わらず、この王都に私と同じ人がいるのだ。びっくりしない方がおかしい

私が混乱している内に裏路地に着いたようだ。辺りにはほとんど人がいない。

「さて、混乱していると思うけど改めて自己紹介するね。私は違法奴隷。17歳。赤狐族。宜しくね?」

「……違法奴隷の15歳です。黒狼族です。こちらこそ宜しくお願いします」

「15!?それにしてはやけに大人びてるね。表情も全く動かないし、お人形さんみたい!」

私の頬を揉んでくる。だが、不思議と嫌な感じはしない。
むしろ、少し心地好くも感じる。
それから10時間程度、ウィンさんと話ながら王都の観光などをした。お昼は奢ってもらった。ありがたい。
同じ奴隷という立場だからか、共通の話題が沢山あって、楽しかった。

「あ……こうしてる場合じゃない。もうすぐ騎士の試験申し込み期限が終わっちゃうんだった!……ライはこれからどうするの?」

「!!私も、騎士になろうと思ってました」

めっちゃ偶然だな。
というか申し込み期限が終わりそうなら早く行かないと。

「まじ!?ここまでくると運命共同体じゃん!」

こんなあっさり決めていいのか。運命共同体。
心の中で突っ込みを入れながら、私達はギルドに戻って、騎士の入団試験申し込み用紙を出した。
用紙には、名前、出身、何族か、適性武器、適性魔法を書く欄があった。
ウィンさんの適性魔法とかは教えてもらえなかったが、決して弱いわけではないと思う。
王都観光の途中で、魔物を倒した話とか聞かせてくれたから。
適性魔法を知るのは後のお楽しみってことなのかな。

ちなみに、直接的な約束はしてないが、私もウィンさんも、お互いが奴隷であることは誰にも言ってはいけないと分かっていたし、相手もその事を分かっていると確信を持っている。

「ライ」

「何ですか?」

「敬語、止めない?」

「癖ですので」

こればかりは物心付いた時より前からの癖だから。申し訳ないけど、仕方ない。

「そっか……まぁでも!友達だよね!」

「はい」

友達というか、親友。ウィンさんの言葉を借りるなら運命共同体、だろうか。

「一緒に騎士になって、入団式の日、また会おうね!」

「もちろんです」

ウィンさんはこれから森に行って試験までの1週間を修行して過ごすようだ。
対する私は服を買い揃えたり、武器を買ったりと、物資の調達をする予定。
だから暫くは会えない。出会って1日も経っていないが、少し寂しく思う。
この感情はきっと、奴隷であったら味わえない感情だ。
私は今日、また一つ、学習した。
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