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主なしの奴隷
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その日、私は歓喜した。
-嗚呼、ようやくこの"生き地獄"から解放されるーと。
◇
私は違法奴隷。先程私の飼い主が魔物に教われ、死亡した。
本来、飼い主が死亡した場合、殆どの奴隷は次の飼い主のところへ行くように命令されているため、自由になることはない。ただ私の飼い主は幸運なことにその命令を怠っていた。そのため私は"主なしの奴隷"となったのだ。因みに奴隷という立場を解放するためには、特殊な儀式をしなければならないので、飼い主が死亡したからといって、奴隷じゃなくなるわけではない。
さて、ここでこの国、グラード王国について知識をまとめよう。ここ、グラード王国は東側は海、西側は他国に面しているそれなりに大きい王国だ。
身分は上から、王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、平民だ。全体の7割が平民で、子爵と男爵は平民とにた生活を送っているところが多い。
次に種族について。この世界では色々な種族がごちゃ混ぜになっている。種族間関係なしに子供も産める。
一番多いのが人族。全体の6割を占める。多いがゆえに、人族こそがこの世界の王だ、といっている人達もいる。
二番目に多いが獣人族。全体の3割を占める。種類が一番多い種族。白猫族だったり、獅子族だったり、とにかく多い。それぞれの獣にあった特性をもつ。身体能力が高く、魔力もそれなりにある。
一番少ないのが魔族。全体の1割を占める。魔力が圧倒的に多いが、身体能力は余り高くない。ただ、この3つの種族が全力で戦った場合、勝ち残るのは魔族だ。
最後に奴隷について。奴隷は基本的にどこの国でも違法。
前は死刑囚が死刑になるまで合法的に奴隷になることはあったが、ここ最近はそれすらも違法になった。違法の理由については主に3つある。
1つ目の理由は、奴隷になると飼い主の命令を無視することが出来ないからだ。
たとえば、飼い主が奴隷に向かって「死ね」というだけで奴隷は死ななければならなくなる。もし言うことを聞かなかったら、奴隷は命令を遂行するまで死ぬほど痛い痛みをずっと受けなければならない。痛みがなくなる時は命令を遂行した時か、飼い主が命令を解除した時か、自分が死んだ時だ。
つまり、奴隷になった時点でその奴隷は人権を失い、飼い主の駒として生きなくてはならないのだ。その扱いは、家畜と同じかそれ以下だろう。
2つ目の理由は、奴隷という立場を解放する条件が難しいからだ。
奴隷にするには奴隷のチョーカーを嵌めて、魔力を籠めながら契約書を書くだけ。
にも関わらず、解放するにはまず、奴隷の保有可能魔力より多い魔力を第三者が籠め、その後に奴隷が四肢の内、どれかを切り落とすことで解放が出来る。
これ以外に解放する方法は2つほどあるが、どちらも失敗する可能性が非常に低く、しかも失敗するとほぼ100%死ぬ。
失敗しても死なない可能性があるのは今言った方法のみ。
3つ目の理由は、奴隷になった時点でその人の名前がなくなるからだ。
この世界では名前がとても重要視される。貴族階級、王族階級になると、名前プラス家名が付け足されるが、家名よりも名前の方がよっぽど重要視される。名前がないということは奴隷、もしくはそれに準ずる人達、ということがすぐにわかる。
何故名前が重要視されるかと言うと、大昔、まだ聖女という職業がありふれていなかった時代。名前は1人ひとり神殿から授かっていたのだ。生まれてきた赤ん坊は平民だろうが貴族だろうが王族だろうが皆、神殿に行き、名前を授かる。
今ではそんな風に名前を授かることは出来ないが、大昔の
「名前は天からの授かり物だから命と同等に扱おう」
という考え方が今でも残っているのだ。
つまり、そんな大事な名前を奪うなどという行為は絶対に許されない、というわけだ。
……ここ、グラード王国を除いた国は
何故かこの国、違法奴隷を禁じている癖に奴隷商人達を野放しにしているのだ。理由は分からないが。
だから私はこの国が嫌いだ。だから私は隣国のターリスク王国に行く。その国はグラード王国よりも大きい王国で、奴隷商人達の捕獲に積極的だ。
私はそこで騎士になり、私みたいな"生まれた瞬間から奴隷"という人達を減らしたい。
……なんてことは言わない。私はそんなに善人ではない。
……というか、正直言ってさっさとこの腐りきった世界から逃げ出したい。でも……
ー誰かを助けて、自分の存在価値を見出だしてから死ぬー
ってのも、悪くない、かな。
ーあの日、自分の命を惜しまずに私を救ってくれた、あの時の少年のようにー
◇
とりあえず、自分の立ち位置とかも理解できたので、早速この場を離れたいのだが、ここは魔物が出る。飼い主を襲った魔物は私を見つけることなくこの場を去ったが、次会った時、また見逃してくれるかどうかはわからない。
わからない以上、まずは自分がどれだけの戦う手段を持っているのかを確かめなければならない。
「状態確認」
そう唱えると、目の前に半透明の画面が出てくる。
名前:無し
状態:違法奴隷(主なし)、栄養失調
種族:黒狼族
年齢:十五
性別:女
魔力:256,900/256,900
装備:奴隷のチョーカー、ぼろ布
肉親関係:母 死亡(黒狼族)、父 死亡(魔族)
適性武器:鎌、投げナイフ
適性魔法:雷(火、風)
スキル:火炎魔術Lv10、暴風魔術Lv10、雷鳴魔術Lv7、空間魔術Lv10
「……まじか」
-嗚呼、ようやくこの"生き地獄"から解放されるーと。
◇
私は違法奴隷。先程私の飼い主が魔物に教われ、死亡した。
本来、飼い主が死亡した場合、殆どの奴隷は次の飼い主のところへ行くように命令されているため、自由になることはない。ただ私の飼い主は幸運なことにその命令を怠っていた。そのため私は"主なしの奴隷"となったのだ。因みに奴隷という立場を解放するためには、特殊な儀式をしなければならないので、飼い主が死亡したからといって、奴隷じゃなくなるわけではない。
さて、ここでこの国、グラード王国について知識をまとめよう。ここ、グラード王国は東側は海、西側は他国に面しているそれなりに大きい王国だ。
身分は上から、王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、平民だ。全体の7割が平民で、子爵と男爵は平民とにた生活を送っているところが多い。
次に種族について。この世界では色々な種族がごちゃ混ぜになっている。種族間関係なしに子供も産める。
一番多いのが人族。全体の6割を占める。多いがゆえに、人族こそがこの世界の王だ、といっている人達もいる。
二番目に多いが獣人族。全体の3割を占める。種類が一番多い種族。白猫族だったり、獅子族だったり、とにかく多い。それぞれの獣にあった特性をもつ。身体能力が高く、魔力もそれなりにある。
一番少ないのが魔族。全体の1割を占める。魔力が圧倒的に多いが、身体能力は余り高くない。ただ、この3つの種族が全力で戦った場合、勝ち残るのは魔族だ。
最後に奴隷について。奴隷は基本的にどこの国でも違法。
前は死刑囚が死刑になるまで合法的に奴隷になることはあったが、ここ最近はそれすらも違法になった。違法の理由については主に3つある。
1つ目の理由は、奴隷になると飼い主の命令を無視することが出来ないからだ。
たとえば、飼い主が奴隷に向かって「死ね」というだけで奴隷は死ななければならなくなる。もし言うことを聞かなかったら、奴隷は命令を遂行するまで死ぬほど痛い痛みをずっと受けなければならない。痛みがなくなる時は命令を遂行した時か、飼い主が命令を解除した時か、自分が死んだ時だ。
つまり、奴隷になった時点でその奴隷は人権を失い、飼い主の駒として生きなくてはならないのだ。その扱いは、家畜と同じかそれ以下だろう。
2つ目の理由は、奴隷という立場を解放する条件が難しいからだ。
奴隷にするには奴隷のチョーカーを嵌めて、魔力を籠めながら契約書を書くだけ。
にも関わらず、解放するにはまず、奴隷の保有可能魔力より多い魔力を第三者が籠め、その後に奴隷が四肢の内、どれかを切り落とすことで解放が出来る。
これ以外に解放する方法は2つほどあるが、どちらも失敗する可能性が非常に低く、しかも失敗するとほぼ100%死ぬ。
失敗しても死なない可能性があるのは今言った方法のみ。
3つ目の理由は、奴隷になった時点でその人の名前がなくなるからだ。
この世界では名前がとても重要視される。貴族階級、王族階級になると、名前プラス家名が付け足されるが、家名よりも名前の方がよっぽど重要視される。名前がないということは奴隷、もしくはそれに準ずる人達、ということがすぐにわかる。
何故名前が重要視されるかと言うと、大昔、まだ聖女という職業がありふれていなかった時代。名前は1人ひとり神殿から授かっていたのだ。生まれてきた赤ん坊は平民だろうが貴族だろうが王族だろうが皆、神殿に行き、名前を授かる。
今ではそんな風に名前を授かることは出来ないが、大昔の
「名前は天からの授かり物だから命と同等に扱おう」
という考え方が今でも残っているのだ。
つまり、そんな大事な名前を奪うなどという行為は絶対に許されない、というわけだ。
……ここ、グラード王国を除いた国は
何故かこの国、違法奴隷を禁じている癖に奴隷商人達を野放しにしているのだ。理由は分からないが。
だから私はこの国が嫌いだ。だから私は隣国のターリスク王国に行く。その国はグラード王国よりも大きい王国で、奴隷商人達の捕獲に積極的だ。
私はそこで騎士になり、私みたいな"生まれた瞬間から奴隷"という人達を減らしたい。
……なんてことは言わない。私はそんなに善人ではない。
……というか、正直言ってさっさとこの腐りきった世界から逃げ出したい。でも……
ー誰かを助けて、自分の存在価値を見出だしてから死ぬー
ってのも、悪くない、かな。
ーあの日、自分の命を惜しまずに私を救ってくれた、あの時の少年のようにー
◇
とりあえず、自分の立ち位置とかも理解できたので、早速この場を離れたいのだが、ここは魔物が出る。飼い主を襲った魔物は私を見つけることなくこの場を去ったが、次会った時、また見逃してくれるかどうかはわからない。
わからない以上、まずは自分がどれだけの戦う手段を持っているのかを確かめなければならない。
「状態確認」
そう唱えると、目の前に半透明の画面が出てくる。
名前:無し
状態:違法奴隷(主なし)、栄養失調
種族:黒狼族
年齢:十五
性別:女
魔力:256,900/256,900
装備:奴隷のチョーカー、ぼろ布
肉親関係:母 死亡(黒狼族)、父 死亡(魔族)
適性武器:鎌、投げナイフ
適性魔法:雷(火、風)
スキル:火炎魔術Lv10、暴風魔術Lv10、雷鳴魔術Lv7、空間魔術Lv10
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