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【新婚旅行編】七日目:漫画や小説、ゲームなどでは王道でしかないハプニングの切っ掛け
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お互いの中身が、人格が入れ替わってしまうっていう、漫画や小説、ゲームなどの創作物では王道でしかないハプニング。なんでまた俺達がそんな目に合っているのかというと、その切っ掛けは少し前のこと。
今回、テーマパークを訪れた最大の目標だったお城を無事満喫出来た俺達は、レストランで紅茶とスコーンを楽しんだ後、別のエリアへと向かってみることに。
訪れたのは西のエリア。空も建物も常にオレンジ色に、夕焼けに染まっているエリアだった。
夕焼けといえば、やっぱり海なんだろうか。エリアの大半を術で作られた海が占めており、豪華客船のような大きな船や小型のボートが、穏やかな海の上を漂っている。
いくつもの乗り場があるみたいだから、それらは術による演出ではなく、チケットさえ買えば実際に乗れるのだろう。すでにご乗船中な皆様は、船の上から水平線に沈みゆくままの夕景色を楽しめているハズだ。
因みに、客船の中でしか行われていない特別なイベントもあるのだとか。こちらでも、サターン様やヨミーン様に会えたりするんだろうか。
他にも、ついつい目が引かれるアトラクション達が、影絵のようなレールに導かれながら夕焼け空を自由に飛ぶように駆けていくジェットコースターや、ゆっくりと回る観覧車。遠くから眺めるとUFOの円盤みたいな展望台など、少し歩きながら見渡していただけでも色々とあった。
とはいえ、俺達のお目当ては最初っから決まっていたのだけれども。
「どうぞ、ごゆっくり。不思議な世界へ、いってらっしゃい!」
サーカスの団員さんのような奇抜で明るい格好をしたスタッフさんに手を振られながら、ひとりでに開いた真っ赤な扉の向こうへとバアルさんと手を繋いで入っていく。
ひと回り大きな手にエスコートしてもらいながら、部屋の中央にあるソファーが囲むテーブルまで近づいていったところで、まるでタイミングを見計らっていたかのよう。背にしていた両開きの大きな扉が、ホラー映画のように大げさな音を立てながら勢いよく閉められた。
「ひぇっ……」
まさか、こんな有りがちなドッキリ要素から始まるとは。いきなりの音による奇襲に俺は、隣で寄り添ってくれてる、真っ直ぐに背を伸ばした長身に飛びついてしまっていた。
腕だけでなく全身を使って抱きついてしまっていても、筋肉質な身体はビクともしない。大きくて立派な大黒柱にでも飛びついたみたいだ。
ビクともしなかったのは身体だけでなくメンタルの方も。平然と、何事もなかったかのように穏やかな微笑みを浮かべながら、バアルさんはすかさず俺の頭や背中を宥めるように撫でてくれている。
「び、びっくりした……」
「大丈夫ですか、アオイ?」
「うん……まだ、ちょっと心臓がドキドキしちゃってるけど」
よしよしと撫でてくれる手はそのままに、バアルさんはシャープな顎に細く長い指を当て、凛々しい眉を片方下げた。
「ふむ……予め調べていたテーマパークの説明には書かれておりませんでしたが……もしや、お化け屋敷のような要素もあるのでしょうか?」
「えぇ……俺、びっくりさせられるのって苦手なんだけど……」
偽物だってのは、ちゃんと驚かす役の人がいるってのは分かっている。
けれども、あの薄暗い、いかにも出ますよっていう雰囲気の中を歩くってだけでも、おっかなびっくりになってしまうのだ。そんな常にビクビクしている状況で巧みに驚かしてくるもんだから、心臓に悪いったらありゃしない。
そういうドキドキ感を味わうことが醍醐味だってのは分かってるんだけどさ。でも、苦手なもんは仕方がないだろう?
だからさ、そういうお化け屋敷っぽいアトラクションは、今回は一旦保留ってことで、事前にバアルさんとも話し合っていたっていうのに。
今回、テーマパークを訪れた最大の目標だったお城を無事満喫出来た俺達は、レストランで紅茶とスコーンを楽しんだ後、別のエリアへと向かってみることに。
訪れたのは西のエリア。空も建物も常にオレンジ色に、夕焼けに染まっているエリアだった。
夕焼けといえば、やっぱり海なんだろうか。エリアの大半を術で作られた海が占めており、豪華客船のような大きな船や小型のボートが、穏やかな海の上を漂っている。
いくつもの乗り場があるみたいだから、それらは術による演出ではなく、チケットさえ買えば実際に乗れるのだろう。すでにご乗船中な皆様は、船の上から水平線に沈みゆくままの夕景色を楽しめているハズだ。
因みに、客船の中でしか行われていない特別なイベントもあるのだとか。こちらでも、サターン様やヨミーン様に会えたりするんだろうか。
他にも、ついつい目が引かれるアトラクション達が、影絵のようなレールに導かれながら夕焼け空を自由に飛ぶように駆けていくジェットコースターや、ゆっくりと回る観覧車。遠くから眺めるとUFOの円盤みたいな展望台など、少し歩きながら見渡していただけでも色々とあった。
とはいえ、俺達のお目当ては最初っから決まっていたのだけれども。
「どうぞ、ごゆっくり。不思議な世界へ、いってらっしゃい!」
サーカスの団員さんのような奇抜で明るい格好をしたスタッフさんに手を振られながら、ひとりでに開いた真っ赤な扉の向こうへとバアルさんと手を繋いで入っていく。
ひと回り大きな手にエスコートしてもらいながら、部屋の中央にあるソファーが囲むテーブルまで近づいていったところで、まるでタイミングを見計らっていたかのよう。背にしていた両開きの大きな扉が、ホラー映画のように大げさな音を立てながら勢いよく閉められた。
「ひぇっ……」
まさか、こんな有りがちなドッキリ要素から始まるとは。いきなりの音による奇襲に俺は、隣で寄り添ってくれてる、真っ直ぐに背を伸ばした長身に飛びついてしまっていた。
腕だけでなく全身を使って抱きついてしまっていても、筋肉質な身体はビクともしない。大きくて立派な大黒柱にでも飛びついたみたいだ。
ビクともしなかったのは身体だけでなくメンタルの方も。平然と、何事もなかったかのように穏やかな微笑みを浮かべながら、バアルさんはすかさず俺の頭や背中を宥めるように撫でてくれている。
「び、びっくりした……」
「大丈夫ですか、アオイ?」
「うん……まだ、ちょっと心臓がドキドキしちゃってるけど」
よしよしと撫でてくれる手はそのままに、バアルさんはシャープな顎に細く長い指を当て、凛々しい眉を片方下げた。
「ふむ……予め調べていたテーマパークの説明には書かれておりませんでしたが……もしや、お化け屋敷のような要素もあるのでしょうか?」
「えぇ……俺、びっくりさせられるのって苦手なんだけど……」
偽物だってのは、ちゃんと驚かす役の人がいるってのは分かっている。
けれども、あの薄暗い、いかにも出ますよっていう雰囲気の中を歩くってだけでも、おっかなびっくりになってしまうのだ。そんな常にビクビクしている状況で巧みに驚かしてくるもんだから、心臓に悪いったらありゃしない。
そういうドキドキ感を味わうことが醍醐味だってのは分かってるんだけどさ。でも、苦手なもんは仕方がないだろう?
だからさ、そういうお化け屋敷っぽいアトラクションは、今回は一旦保留ってことで、事前にバアルさんとも話し合っていたっていうのに。
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