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【新婚旅行編】七日目:安心出来る、もう確信しちゃっている
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「ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、私達は夢を守るべく日々を過ごしております」
彼が続けながら、何かを指し示すかのように手のひらを上にして伸ばすと、ぽぽんと可愛らしい効果音が鳴った。星が弾けるようなエフェクトまで。
キラキラとした煌めきが落ち着いた時、その手の先に、デフォルメで描かれたサターン様とヨミーン様、そしてバアルーン様が現れていた。
レタリーンさんと違ってアニメ調に描かれた彼らが、これまたミニチュアのように可愛らしくデフォルメされたお城の前で、それぞれ思い思いにポーズを決める。
ホール内に流れているBGMも、落ち着いたクラシック調のものから、明るくポップな感じに変わっていたのだが。
「私達自身の夢は勿論のこと、外の世界の皆様方の夢も……ですが……」
何やら言い辛そうにレタリーンさんが言葉を濁した途端、止まってしまった。代わりに聞こえてきたのは、ちょっぴり不安になるような音の旋律。
「私達の星であるヨミーン様が、太陽であるサターン様が、お二人を支えて下さっているバアルーン様が、私の尊敬する方々が、どれほど尽力なさっても消し去ることは出来なかったのです」
俺達の目の前で、一人ずつ暗闇に溶けるように消えていってしまう。どこか辛そうな顔をしてヨミーン様が、悲しそうな顔をしてサターン様が、何かを堪えるように眉間にシワを刻んでバアルーン様が。
「誰かの苦しみから、悲しみから、そして怒りから……生まれてきてしまう『悪夢』ばかりは」
最後にレタリーンさん自身も。彼らを消し去ってしまった暗闇。ホール全体をひと息に包みこんだ黒が、生き物のように蠢き出す。
モヤモヤ渦巻く影の塊がいくつも枝分かれしていき、飛びかかってくる。ムチのようにしなりながら勢いよく、一直線に俺たちに向かって伸びてくるそれは、まるで陰で出来た人の腕のようだった。
「うぇっ、うっひゃあっ」
声を抑えられなかった。驚きが、困惑が、恐怖に塗り替えられてしまう。反射的に俺は助けを求めていた。現実から逃れるように固く目を閉じて、すぐ隣で座っている彼に抱きついていた。
「ばっ、バアルっ……バア、ル」
「大丈夫、大丈夫ですよ、アオイ……」
逞しくも優しい彼の腕が、俺を包みこんでくれる。大きな手のひらが頭を、背中を優しく撫でてくれる。
不思議だ。この瞬間にも影で作られた腕は迫ってきているだろうに、安心出来る。もう確信しちゃっている。バアルが側に居てくれるなら絶対に大丈夫だって。
落ち着いたからだろう。俺は自然と目を開けることが出来ていた。逃げることなく、ちゃんと見ることが出来たところで気がついた。
「あれ……? 何ともない?」
いきなり顔面に向かって剛速球を投げられたような、そんなスピード感で迫ってきていた影の手は、すでに俺達を捕らえていた。でも、何ともない。
その不気味な形をした手に触れられている部分は確かに冷たい。冷蔵庫の中の冷気に触れたみたいにひんやりする。
だが、それだけだ。俺達を脅かそうと、お化け屋敷のキャストみたいにウネウネと腕を揺らしているものの、それ以上の何かをしてくる様子はない。これって?
「此方の黒いモヤは、最初の光のように害のない演出でございます」
疑問を浮かべたところで、バアルさんがすぐに答えをくれた。
彼が続けながら、何かを指し示すかのように手のひらを上にして伸ばすと、ぽぽんと可愛らしい効果音が鳴った。星が弾けるようなエフェクトまで。
キラキラとした煌めきが落ち着いた時、その手の先に、デフォルメで描かれたサターン様とヨミーン様、そしてバアルーン様が現れていた。
レタリーンさんと違ってアニメ調に描かれた彼らが、これまたミニチュアのように可愛らしくデフォルメされたお城の前で、それぞれ思い思いにポーズを決める。
ホール内に流れているBGMも、落ち着いたクラシック調のものから、明るくポップな感じに変わっていたのだが。
「私達自身の夢は勿論のこと、外の世界の皆様方の夢も……ですが……」
何やら言い辛そうにレタリーンさんが言葉を濁した途端、止まってしまった。代わりに聞こえてきたのは、ちょっぴり不安になるような音の旋律。
「私達の星であるヨミーン様が、太陽であるサターン様が、お二人を支えて下さっているバアルーン様が、私の尊敬する方々が、どれほど尽力なさっても消し去ることは出来なかったのです」
俺達の目の前で、一人ずつ暗闇に溶けるように消えていってしまう。どこか辛そうな顔をしてヨミーン様が、悲しそうな顔をしてサターン様が、何かを堪えるように眉間にシワを刻んでバアルーン様が。
「誰かの苦しみから、悲しみから、そして怒りから……生まれてきてしまう『悪夢』ばかりは」
最後にレタリーンさん自身も。彼らを消し去ってしまった暗闇。ホール全体をひと息に包みこんだ黒が、生き物のように蠢き出す。
モヤモヤ渦巻く影の塊がいくつも枝分かれしていき、飛びかかってくる。ムチのようにしなりながら勢いよく、一直線に俺たちに向かって伸びてくるそれは、まるで陰で出来た人の腕のようだった。
「うぇっ、うっひゃあっ」
声を抑えられなかった。驚きが、困惑が、恐怖に塗り替えられてしまう。反射的に俺は助けを求めていた。現実から逃れるように固く目を閉じて、すぐ隣で座っている彼に抱きついていた。
「ばっ、バアルっ……バア、ル」
「大丈夫、大丈夫ですよ、アオイ……」
逞しくも優しい彼の腕が、俺を包みこんでくれる。大きな手のひらが頭を、背中を優しく撫でてくれる。
不思議だ。この瞬間にも影で作られた腕は迫ってきているだろうに、安心出来る。もう確信しちゃっている。バアルが側に居てくれるなら絶対に大丈夫だって。
落ち着いたからだろう。俺は自然と目を開けることが出来ていた。逃げることなく、ちゃんと見ることが出来たところで気がついた。
「あれ……? 何ともない?」
いきなり顔面に向かって剛速球を投げられたような、そんなスピード感で迫ってきていた影の手は、すでに俺達を捕らえていた。でも、何ともない。
その不気味な形をした手に触れられている部分は確かに冷たい。冷蔵庫の中の冷気に触れたみたいにひんやりする。
だが、それだけだ。俺達を脅かそうと、お化け屋敷のキャストみたいにウネウネと腕を揺らしているものの、それ以上の何かをしてくる様子はない。これって?
「此方の黒いモヤは、最初の光のように害のない演出でございます」
疑問を浮かべたところで、バアルさんがすぐに答えをくれた。
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