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【新婚旅行編】七日目:ワインケーキくらいで酔っ払っちゃう俺の好みなんて聞いても
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別のワインラベルのデザインもお城が主役なのだが、それぞれ背景が違っていた。
お城の左上に太陽のシルエットが描かれていたり、お城の真上にオーロラが浮かんでいたり、虹がかかっていたり、はたまた右上に大きな一等星が輝いていたり。
印刷によるものだろうか。それとも、そういったインクがあるのか、お城や星の絵がキラキラとしていて美しい。まるで砕いて粉にした魔宝石をインクに混ぜているようだ。
これは、またバアルさんのラベルコレクションが増えそうだな。結婚式の時にヨミ様達と空けたワインボトルのラベルも、良い記念になりました、って嬉しそうに微笑みながらキレイに外して、大切そうにアルバムに入れていたくらいだし。
つい口角がふにゃふにゃになってしまいそうな、微笑ましい思い出に釣られるように隣を見上げれば、真剣な横顔が目に入った。咄嗟に連れてきてしまったものの、気に入ってくれたみたい。細い顎にしなやかな指を当てながら、凛々しい眉の間にシワを刻みながらワインを吟味していらっしゃる。
「どれにするの?」
鋭く細めてワインを見比べていた眼差しが、はたと俺を捉えた。途端に寄っていたシワがふにゃりと緩んで、真一文字に結ばれていた唇にも柔らかな笑みが浮かんでいく。
「……アオイは、やはり甘めのものの方がお好みでしょう?」
「え? う、うん。甘いのは好き、だけど?」
ワインケーキくらいで酔っ払っちゃう俺の好みなんて聞いても。
そう言うよりも早く、バアルさんは一番右のワインが入っている箱を手に取った。さっきまで悩んでいたのがウソのように迷いなく。
ラベルだけでなく箱のデザインも魅力的で、上品な感じだ。バアルさんと一緒で紳士的なバアルーン様のイメージにぴったり。
濃い緑色の箱には、ラベルにも描かれているお城のシルエットと一緒にバアルーン様らしきシルエットも描かれていた。
「では、此方に致しましょう。此方の方が、甘めで飲みやすいとのことですので」
「ふぇ……」
どうやら、ホントに俺の好みだけで決めてくれたらしい。色々と聞きたいことや言いたいことが満載なのに、どうしようもなく喜びの方が勝ってしまう。変な声が出てしまっていた。
「ちょ、嬉しいけど……バアルが好きなのにしてよ。俺の好みで選んでくれても、俺は」
「此方はノンアルコールですので、ご一緒に楽しめますよ?」
「えっ、ほ、ホントに?」
流し見でしか見ていなかった説明文。その初めの方を彼のしなやかな指がちょん、ちょんと指し示す。そこには確かに、お酒が苦手な人でも大丈夫、と書かれており、ノンアルコール、とも大きな文字でしっかりと追記されていた。
「わっ……ホントだ、やったぁ!」
バアルーン様のお気に入りワインを、バアルさんと一緒に楽しめる。すっかり舞い上がってしまった俺は、ワインの箱を慎重に抱えている彼に飛びつくように抱きついてしまっていた。それも、はしゃいだ声を上げて。
くすくすと何やら微笑ましそうな笑みが聞こえてきたのは、何も緩やかに微笑んだ彼の口元だけではない。周りを見れば、いくつかの微笑ましそうな眼差しと、俺達と同様に買い物を楽しんでいた皆さんと目が合ってしまった。
「あ……」
今更遅いのだけれども、慌てて少し彼から離れる。
離れたんだけれども、たったの半歩で簡単に距離を詰められてしまった。ピタリと身を寄せられてしまっていた。おまけに、さり気なく腰に手を回されて抱き寄せられてしまえば、これ以上悪足掻きのしようがない。
「もう……」
これは仕方がないんだからと、頼もしい長身に軽く寄りかかるように肩を寄せた。嬉しそうにはためく羽の音が聞こえてきた。
お城の左上に太陽のシルエットが描かれていたり、お城の真上にオーロラが浮かんでいたり、虹がかかっていたり、はたまた右上に大きな一等星が輝いていたり。
印刷によるものだろうか。それとも、そういったインクがあるのか、お城や星の絵がキラキラとしていて美しい。まるで砕いて粉にした魔宝石をインクに混ぜているようだ。
これは、またバアルさんのラベルコレクションが増えそうだな。結婚式の時にヨミ様達と空けたワインボトルのラベルも、良い記念になりました、って嬉しそうに微笑みながらキレイに外して、大切そうにアルバムに入れていたくらいだし。
つい口角がふにゃふにゃになってしまいそうな、微笑ましい思い出に釣られるように隣を見上げれば、真剣な横顔が目に入った。咄嗟に連れてきてしまったものの、気に入ってくれたみたい。細い顎にしなやかな指を当てながら、凛々しい眉の間にシワを刻みながらワインを吟味していらっしゃる。
「どれにするの?」
鋭く細めてワインを見比べていた眼差しが、はたと俺を捉えた。途端に寄っていたシワがふにゃりと緩んで、真一文字に結ばれていた唇にも柔らかな笑みが浮かんでいく。
「……アオイは、やはり甘めのものの方がお好みでしょう?」
「え? う、うん。甘いのは好き、だけど?」
ワインケーキくらいで酔っ払っちゃう俺の好みなんて聞いても。
そう言うよりも早く、バアルさんは一番右のワインが入っている箱を手に取った。さっきまで悩んでいたのがウソのように迷いなく。
ラベルだけでなく箱のデザインも魅力的で、上品な感じだ。バアルさんと一緒で紳士的なバアルーン様のイメージにぴったり。
濃い緑色の箱には、ラベルにも描かれているお城のシルエットと一緒にバアルーン様らしきシルエットも描かれていた。
「では、此方に致しましょう。此方の方が、甘めで飲みやすいとのことですので」
「ふぇ……」
どうやら、ホントに俺の好みだけで決めてくれたらしい。色々と聞きたいことや言いたいことが満載なのに、どうしようもなく喜びの方が勝ってしまう。変な声が出てしまっていた。
「ちょ、嬉しいけど……バアルが好きなのにしてよ。俺の好みで選んでくれても、俺は」
「此方はノンアルコールですので、ご一緒に楽しめますよ?」
「えっ、ほ、ホントに?」
流し見でしか見ていなかった説明文。その初めの方を彼のしなやかな指がちょん、ちょんと指し示す。そこには確かに、お酒が苦手な人でも大丈夫、と書かれており、ノンアルコール、とも大きな文字でしっかりと追記されていた。
「わっ……ホントだ、やったぁ!」
バアルーン様のお気に入りワインを、バアルさんと一緒に楽しめる。すっかり舞い上がってしまった俺は、ワインの箱を慎重に抱えている彼に飛びつくように抱きついてしまっていた。それも、はしゃいだ声を上げて。
くすくすと何やら微笑ましそうな笑みが聞こえてきたのは、何も緩やかに微笑んだ彼の口元だけではない。周りを見れば、いくつかの微笑ましそうな眼差しと、俺達と同様に買い物を楽しんでいた皆さんと目が合ってしまった。
「あ……」
今更遅いのだけれども、慌てて少し彼から離れる。
離れたんだけれども、たったの半歩で簡単に距離を詰められてしまった。ピタリと身を寄せられてしまっていた。おまけに、さり気なく腰に手を回されて抱き寄せられてしまえば、これ以上悪足掻きのしようがない。
「もう……」
これは仕方がないんだからと、頼もしい長身に軽く寄りかかるように肩を寄せた。嬉しそうにはためく羽の音が聞こえてきた。
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