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【新婚旅行編】七日目:だからこその三つ
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「うっ……それはそれでマズいと思うな! 冷静に全部買おうと決意しちゃってるんだったら!」
「……左様でございますか」
凛々しい眉を八の字にした彼は、全く納得していないご様子。けれども、強行に買い物に走ることはなさそうだ。どうにか俺を説得しようと考えているんだろう。俺もだけれども。
「ほら、見てよ。ぬいぐるみだけで、この種類だよ? 絶対、他のコーナーにもサターン様とヨミーン様のグッズがあるんだから、少しは絞っておかないとさ」
「ご心配頂き、ありがとございます。ですが、やはり何も問題はございませんよ? そちらも全て、三つずつ購入すれば宜しいだけでございます故」
問題しかないんですが!?
「いやいやいや、っていうか、一つずつでもヤバいのに何で三つずつ」
「お部屋に飾る観賞用、万が一の為の保管用、それから布教用でございます」
「そうだったねっ、そういや、いっつもグリムさんに俺のグッズ渡したりしてたもんねっ」
「ええ」
言われてみれば、グリムさんに手渡す時も布教用とか何とか言っていた気がする。それにしても一体、何で。
ふと繋いでいた手を持ち上げられる。俺の手を包み込むように彼の反対の手が、ひと回り大きな手が重ねられた。
「アオイは、私だけの愛しい妻ではございます」
「ひょわ……は、はぃ……ありがとう、ございまふ……」
「ですが、更にアオイのファンを増やすべく、愛らしいアオイの魅力を広めることに関しては、積極的に励むと心に決めております故」
「ぬ、ぅ……」
だからこその布教用、ということか。
真っ直ぐに見つめてくる緑の瞳に曇りはない。真剣そのものだ。心を掴まれそうになってしまう。言ってくれている内容は、素直には喜べないっていうのに。
いやいや確かに、その気持ちは分かるけれども。俺だってバアルの魅力を広めたいし、国中の皆さんに知ってもらいたい。俺のバアルが、こんなにもカッコよくて可愛い人なんだって。
「嬉しいけどっ、その気持ちは嬉しいんだけどさぁ……っ」
嬉しさと同じくらい大きな気恥ずかしさ。その狭間で、うんうんと唸っていたところで引き戻された。
「っ……私としたことが……」
「ど、どうしたの、バアル?」
思い出したかのように呟いたバアルさんの表情は、すっかり沈んでしまっている。まるで、何かとんでもないミスでもしたかのような。
「もしかして……忘れ物? さっきのレストランに、何か置いてきちゃったとか?」
思いついたままを言ってみたものの、違うような気がした。だって、バアルさんが持っている物はいつも必要最低限。ポケットに入りきるものばかりだからだ。
それら以外は、どんな大きさの物でも何でも入って、いつでも取り出し可能な不思議な空間へとすぐにしまっている。大切な物ならば尚更。だから、彼が物を失くすなんてミスをすることは有り得ないのだ。
「いえ……」
やっぱり、バアルさんはすぐに否定した。小さく左右に振った首に合わせて、細く長い触角も揺れている。
「じゃあ、何を」
「私としたことが、アオニャン様のグッズをいまだに発見出来ておりませんっ……いの一番に確保しなければ、買い占めてしまわなければいけませんのに……っ」
「ふぇ……」
バアルさんはホントに悔しそう。ぷるぷると小刻みに触角と羽を揺らしている。目元や頬骨辺りに刻まれたお顔のシワを、これでもかと深くしてしまっている。
だというのに俺は、またアオニャンに自分を重ねていた。嬉しくなってしまっていたんだ。
「……左様でございますか」
凛々しい眉を八の字にした彼は、全く納得していないご様子。けれども、強行に買い物に走ることはなさそうだ。どうにか俺を説得しようと考えているんだろう。俺もだけれども。
「ほら、見てよ。ぬいぐるみだけで、この種類だよ? 絶対、他のコーナーにもサターン様とヨミーン様のグッズがあるんだから、少しは絞っておかないとさ」
「ご心配頂き、ありがとございます。ですが、やはり何も問題はございませんよ? そちらも全て、三つずつ購入すれば宜しいだけでございます故」
問題しかないんですが!?
「いやいやいや、っていうか、一つずつでもヤバいのに何で三つずつ」
「お部屋に飾る観賞用、万が一の為の保管用、それから布教用でございます」
「そうだったねっ、そういや、いっつもグリムさんに俺のグッズ渡したりしてたもんねっ」
「ええ」
言われてみれば、グリムさんに手渡す時も布教用とか何とか言っていた気がする。それにしても一体、何で。
ふと繋いでいた手を持ち上げられる。俺の手を包み込むように彼の反対の手が、ひと回り大きな手が重ねられた。
「アオイは、私だけの愛しい妻ではございます」
「ひょわ……は、はぃ……ありがとう、ございまふ……」
「ですが、更にアオイのファンを増やすべく、愛らしいアオイの魅力を広めることに関しては、積極的に励むと心に決めております故」
「ぬ、ぅ……」
だからこその布教用、ということか。
真っ直ぐに見つめてくる緑の瞳に曇りはない。真剣そのものだ。心を掴まれそうになってしまう。言ってくれている内容は、素直には喜べないっていうのに。
いやいや確かに、その気持ちは分かるけれども。俺だってバアルの魅力を広めたいし、国中の皆さんに知ってもらいたい。俺のバアルが、こんなにもカッコよくて可愛い人なんだって。
「嬉しいけどっ、その気持ちは嬉しいんだけどさぁ……っ」
嬉しさと同じくらい大きな気恥ずかしさ。その狭間で、うんうんと唸っていたところで引き戻された。
「っ……私としたことが……」
「ど、どうしたの、バアル?」
思い出したかのように呟いたバアルさんの表情は、すっかり沈んでしまっている。まるで、何かとんでもないミスでもしたかのような。
「もしかして……忘れ物? さっきのレストランに、何か置いてきちゃったとか?」
思いついたままを言ってみたものの、違うような気がした。だって、バアルさんが持っている物はいつも必要最低限。ポケットに入りきるものばかりだからだ。
それら以外は、どんな大きさの物でも何でも入って、いつでも取り出し可能な不思議な空間へとすぐにしまっている。大切な物ならば尚更。だから、彼が物を失くすなんてミスをすることは有り得ないのだ。
「いえ……」
やっぱり、バアルさんはすぐに否定した。小さく左右に振った首に合わせて、細く長い触角も揺れている。
「じゃあ、何を」
「私としたことが、アオニャン様のグッズをいまだに発見出来ておりませんっ……いの一番に確保しなければ、買い占めてしまわなければいけませんのに……っ」
「ふぇ……」
バアルさんはホントに悔しそう。ぷるぷると小刻みに触角と羽を揺らしている。目元や頬骨辺りに刻まれたお顔のシワを、これでもかと深くしてしまっている。
だというのに俺は、またアオニャンに自分を重ねていた。嬉しくなってしまっていたんだ。
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