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【新婚旅行編】七日目:思いがけず増えた楽しみ
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頼まれるがままに準備していたけれど、未体験な組み合わせに引っかかってしまう。
とはいえ、期待に満ちた眼差しを向けてくれながら、背筋を真っ直ぐに伸ばしている彼を待たせてしまう訳にはいかない。
「はい、あーん」
「ありがとうございます」
律儀に会釈をしてからバアルは、俺が差し出したスプーンを口に含んだ。楽しみにしている素振りは、揺れる触角とはためく羽にしか見せずに上品に。
「……どう?」
組み合わせが気になったもんだから、食べたばかりだってのに尋ねてしまっていた。
彼の白く長い睫毛が瞬く。もくもくと頬を動かしてから、白い髭を蓄えた口元に柔らかな笑みを形作った。
「パウンドケーキがしっとりしており、誠に美味しいですが……シャーベットのお陰で、よりあっさり頂けますね」
「へぇ……シャーベットも、ありなんですね」
だったら俺も手作りシャーベットに挑戦してみようかな。丁度、帰ったらコルテのご褒美にパウンドケーキを焼くって決めてたし。その時にでも。
「ええ、クリームも甘さ控えめで丁度いいかと」
「じゃあ、俺もパウンドケーキを。紅茶で、クリームとメロンシャーベットで」
「畏まりました」
果たしてどんなお味になるのだろうか。バアルさんから太鼓判を押されているとはいえ、自分の口でもちゃんと確認しておかないとな。作ってみるんだし。
ワクワクしながら差し出されたケーキを一口。パウンドケーキは確かにふわふわで、しっとりとした口当たり。紅茶の良い風味と香りが広がっていく。そこに、ほどよい甘さのクリームと、優しい冷たさのシャーベットが加わっていく。
お供の彼らがパウンドケーキの唯一の弱点である、口の中の水分を奪っていくという残念ポイントを打ち消していく。最後に残ったのは、心地よい甘さだけ。
「いかがでしょうか?」
「……採用」
「はい?」
「めっちゃ、ありですねっ! 真似しますっ、帰ったらパウンドケーキと一緒にシャーベット作りますっ」
小首を傾げていたバアルさんが納得したように頷いた。彼の広い背を飾っている水晶のように透き通った羽が、ぱたぱたとはためいている。
「ああ……それはそれは、楽しみですね」
「はいっ、バッチリ楽しみにしていて下さい!」
帰ったら、スヴェンさんにシャーベットの作り方を聞かないとな。
思いがけず増えた楽しみを思い浮かべながら、交代でデザートを楽しんでいく。そうして、そのほとんどを食べ終えた頃だった。
「んー……ヨミ様達からのサプライズ……予約していたイベントまで、まだ時間があるね」
ふと気になって、バアルさんから時間を見せてもらって気がついた。どれも美味しかったもんだから、ついつい早く食べてしまっていたらしい。思っていたよりも空き時間が出来てしまっていた。
もう少し、ここでのんびり過ごすつもりだったんだけどな。
「はい、いかが致しましょうか?」
「うーん、そうだねぇ……思いがけず、中庭には来れちゃったからねぇ……」
ぐるりと見渡せば、キラキラと煌めく薄紫と薄ピンク。花壇いっぱいを埋め尽くしている水晶で出来た花々が俺達の周りを、ドーム型の屋根の下にあるテラス席を囲むように咲き誇っている。
城内を訪れた時には見てみたいと思っていた中庭。そこはレストランに、いくつものドーム屋根のテラス席にて水晶の花々を楽しめるようになっていたのだ。
とはいえ、期待に満ちた眼差しを向けてくれながら、背筋を真っ直ぐに伸ばしている彼を待たせてしまう訳にはいかない。
「はい、あーん」
「ありがとうございます」
律儀に会釈をしてからバアルは、俺が差し出したスプーンを口に含んだ。楽しみにしている素振りは、揺れる触角とはためく羽にしか見せずに上品に。
「……どう?」
組み合わせが気になったもんだから、食べたばかりだってのに尋ねてしまっていた。
彼の白く長い睫毛が瞬く。もくもくと頬を動かしてから、白い髭を蓄えた口元に柔らかな笑みを形作った。
「パウンドケーキがしっとりしており、誠に美味しいですが……シャーベットのお陰で、よりあっさり頂けますね」
「へぇ……シャーベットも、ありなんですね」
だったら俺も手作りシャーベットに挑戦してみようかな。丁度、帰ったらコルテのご褒美にパウンドケーキを焼くって決めてたし。その時にでも。
「ええ、クリームも甘さ控えめで丁度いいかと」
「じゃあ、俺もパウンドケーキを。紅茶で、クリームとメロンシャーベットで」
「畏まりました」
果たしてどんなお味になるのだろうか。バアルさんから太鼓判を押されているとはいえ、自分の口でもちゃんと確認しておかないとな。作ってみるんだし。
ワクワクしながら差し出されたケーキを一口。パウンドケーキは確かにふわふわで、しっとりとした口当たり。紅茶の良い風味と香りが広がっていく。そこに、ほどよい甘さのクリームと、優しい冷たさのシャーベットが加わっていく。
お供の彼らがパウンドケーキの唯一の弱点である、口の中の水分を奪っていくという残念ポイントを打ち消していく。最後に残ったのは、心地よい甘さだけ。
「いかがでしょうか?」
「……採用」
「はい?」
「めっちゃ、ありですねっ! 真似しますっ、帰ったらパウンドケーキと一緒にシャーベット作りますっ」
小首を傾げていたバアルさんが納得したように頷いた。彼の広い背を飾っている水晶のように透き通った羽が、ぱたぱたとはためいている。
「ああ……それはそれは、楽しみですね」
「はいっ、バッチリ楽しみにしていて下さい!」
帰ったら、スヴェンさんにシャーベットの作り方を聞かないとな。
思いがけず増えた楽しみを思い浮かべながら、交代でデザートを楽しんでいく。そうして、そのほとんどを食べ終えた頃だった。
「んー……ヨミ様達からのサプライズ……予約していたイベントまで、まだ時間があるね」
ふと気になって、バアルさんから時間を見せてもらって気がついた。どれも美味しかったもんだから、ついつい早く食べてしまっていたらしい。思っていたよりも空き時間が出来てしまっていた。
もう少し、ここでのんびり過ごすつもりだったんだけどな。
「はい、いかが致しましょうか?」
「うーん、そうだねぇ……思いがけず、中庭には来れちゃったからねぇ……」
ぐるりと見渡せば、キラキラと煌めく薄紫と薄ピンク。花壇いっぱいを埋め尽くしている水晶で出来た花々が俺達の周りを、ドーム型の屋根の下にあるテラス席を囲むように咲き誇っている。
城内を訪れた時には見てみたいと思っていた中庭。そこはレストランに、いくつものドーム屋根のテラス席にて水晶の花々を楽しめるようになっていたのだ。
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