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【新婚旅行編】七日目:自然と楽しい気分になる単語
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うんうんと頷きながら、ヨミーン様が口を開く。鋭い牙を見せながら、にこやかな笑顔で。
「しかも、こうして話してみれば、バアルーンとアオニャン殿に負けず劣らずな仲睦まじっぷりではないか! 此方へと赴いてくれてからも片時も手を離さずに、寄り添い合っておるしの」
「ひぇ……」
「どことなくではあるが雰囲気も似ておる。グリーン殿は慎ましく、オレンジ殿を常に気遣っておるし、オレンジ殿の笑顔は明るく愛らしい」
「ひょわ……」
歌うようにつらつらと言い終えたヨミーン様だけでなく、サターン様とレタリーンさんまでもが、微笑ましげな眼差しで俺達を見つめていた。おまけに、お客さん達からも何故か温かな拍手をもらえてしまっていた。
まさか、繋いでいる手を見られていたとは。
湯気が出ていそうなくらいに頭がくらくらしているけれど、この手を離そうとは思わない。バアルさんも同じ気持ちでいてくれているんだろう。いつもよりちょっぴり熱い手のひらが、ぎゅっと俺の手を握ってくれたんだ。
「貴殿らに会えて光栄である! 私達に会いに来てくれて、ありがとう……グリーン殿、オレンジ殿」
「いえ、そんな……俺達の方こそ会えて良かったです」
「ええ、誠に……」
ますます勢いの増した拍手が俺達を包み込む。早くもフィナーレを迎えたような。満足感が胸を満たして。
「じゃあ、次はグリーン様の番ですね。さあ、質問をどうぞ!」
ほっこりしつつも、しんみりしてしまいそうな空気をぶった切るようだった。思わず拍手を止めたお客さんどころか、ヨミーン様とサターン様もきょとんとしている。
それでもレタリーンさんは、どこ吹く風。マイペースに、さあ、遠慮なくいってみましょう! と穏やかな笑みを浮かべながら、バアルさんに向かってさらに続けている。こういうところも、レタリーさんっぽいな。
「全く、貴殿は……だが、次はグリーン殿の番であったのは事実であるからな」
ヨミーン様とサターン様の眼差しがバアルさんへと注がれる。ゆっくりでよいからの、とさり気なく気遣ってくれたサターン様に、小さく頷くことで応えてからバアルさんは意を決したように口を開いた。
「では、その……ご、ご趣味は……?」
やっぱり、バアルさんは、とんでもなく緊張しているようだ。
震えてひっくり返ってしまいそうな声が出てしまっていても、俺は彼を見つめながら繋いでいる手を撫でることしか出来ない。
それでも、ちょっとは役に立てたんだろうか。幅広の肩を僅かに上下に動かしながら深呼吸をしてから、俺に微笑んでくれたその表情は、少し和らいでいたように見えたんだ。
待ってくれていたヨミーン様達へと、バアルさんが質問を続ける。穏やかな低音はいつもと同じ。安心する声だった。
「サターン様とヨミーン様は……日頃、どのように過ごしていらっしゃるのでしょうか?」
「うむっ、私達のプライベートを知りたいのであるな? 良い質問だ!」
鋭い牙を覗かせながら、ヨミーン様が細く長い指でご自身の白い頬にかかっていた髪を上品に払う。俺達に微笑みかけてからお客さん達を、宙に浮かぶいくつものソファーをぐるりと見渡した。
「私と父上の職務は、此方を訪れてくれた愛する民達に存分に楽しんでもらうこと、夢のようなひと時を過ごしてもらうことである」
見ているだけで眩しさを感じるような。無邪気に輝いている真っ赤な瞳が、再び俺達を見つめた。
「だがしかし、比較的自由な時間も有ってだな。その時は、皆でお茶会にお邪魔させてもらっておるのだ」
お茶会。馴染みのある単語に、口にしただけで自然と楽しい気分になる単語に、つい気持ちがそわそわしてしまう。
「しかも、こうして話してみれば、バアルーンとアオニャン殿に負けず劣らずな仲睦まじっぷりではないか! 此方へと赴いてくれてからも片時も手を離さずに、寄り添い合っておるしの」
「ひぇ……」
「どことなくではあるが雰囲気も似ておる。グリーン殿は慎ましく、オレンジ殿を常に気遣っておるし、オレンジ殿の笑顔は明るく愛らしい」
「ひょわ……」
歌うようにつらつらと言い終えたヨミーン様だけでなく、サターン様とレタリーンさんまでもが、微笑ましげな眼差しで俺達を見つめていた。おまけに、お客さん達からも何故か温かな拍手をもらえてしまっていた。
まさか、繋いでいる手を見られていたとは。
湯気が出ていそうなくらいに頭がくらくらしているけれど、この手を離そうとは思わない。バアルさんも同じ気持ちでいてくれているんだろう。いつもよりちょっぴり熱い手のひらが、ぎゅっと俺の手を握ってくれたんだ。
「貴殿らに会えて光栄である! 私達に会いに来てくれて、ありがとう……グリーン殿、オレンジ殿」
「いえ、そんな……俺達の方こそ会えて良かったです」
「ええ、誠に……」
ますます勢いの増した拍手が俺達を包み込む。早くもフィナーレを迎えたような。満足感が胸を満たして。
「じゃあ、次はグリーン様の番ですね。さあ、質問をどうぞ!」
ほっこりしつつも、しんみりしてしまいそうな空気をぶった切るようだった。思わず拍手を止めたお客さんどころか、ヨミーン様とサターン様もきょとんとしている。
それでもレタリーンさんは、どこ吹く風。マイペースに、さあ、遠慮なくいってみましょう! と穏やかな笑みを浮かべながら、バアルさんに向かってさらに続けている。こういうところも、レタリーさんっぽいな。
「全く、貴殿は……だが、次はグリーン殿の番であったのは事実であるからな」
ヨミーン様とサターン様の眼差しがバアルさんへと注がれる。ゆっくりでよいからの、とさり気なく気遣ってくれたサターン様に、小さく頷くことで応えてからバアルさんは意を決したように口を開いた。
「では、その……ご、ご趣味は……?」
やっぱり、バアルさんは、とんでもなく緊張しているようだ。
震えてひっくり返ってしまいそうな声が出てしまっていても、俺は彼を見つめながら繋いでいる手を撫でることしか出来ない。
それでも、ちょっとは役に立てたんだろうか。幅広の肩を僅かに上下に動かしながら深呼吸をしてから、俺に微笑んでくれたその表情は、少し和らいでいたように見えたんだ。
待ってくれていたヨミーン様達へと、バアルさんが質問を続ける。穏やかな低音はいつもと同じ。安心する声だった。
「サターン様とヨミーン様は……日頃、どのように過ごしていらっしゃるのでしょうか?」
「うむっ、私達のプライベートを知りたいのであるな? 良い質問だ!」
鋭い牙を覗かせながら、ヨミーン様が細く長い指でご自身の白い頬にかかっていた髪を上品に払う。俺達に微笑みかけてからお客さん達を、宙に浮かぶいくつものソファーをぐるりと見渡した。
「私と父上の職務は、此方を訪れてくれた愛する民達に存分に楽しんでもらうこと、夢のようなひと時を過ごしてもらうことである」
見ているだけで眩しさを感じるような。無邪気に輝いている真っ赤な瞳が、再び俺達を見つめた。
「だがしかし、比較的自由な時間も有ってだな。その時は、皆でお茶会にお邪魔させてもらっておるのだ」
お茶会。馴染みのある単語に、口にしただけで自然と楽しい気分になる単語に、つい気持ちがそわそわしてしまう。
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