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【新婚旅行編】七日目:何より、バアルさんとくっつけるのがいい
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はしゃいでいた鼓動が落ち着く間もなく扉の先へ、謁見の間らしき場所へと俺達は足を踏み入れていた。ざわざわと落ち着かないざわめきが俺達を出迎える。
広い室内にずらりと並べられている座席の数は、まるで映画館にきたような。ざっと数えただけでも、200か300はありそう。すでにその三分の一は、お客さんで埋まっていた。
けれども、座席達の前にあるのは巨大なスクリーンではない。柱のように高く伸びた長階段。遥か上の天井に届いてしまいそうなそれの上に、二つの玉座のようなものが見えている。説明をされなくても分かった。あの二席にサターン様とヨミーン様が座られるんだって。
俺達の前に、俺達の後に、入場してきた皆さんがそれぞれの席を目指して投影石を片手に歩いていく。俺達も、手元の投影石に、招待状に新たに記載された座席番号を確認しながら席を探した。
「Aの17……此方ですね」
「わ、一番前の列だよっ、それも真ん中の方! ラッキーだね、バアルっ」
「ええっ、ラッキーでございますね」
俺達の席は二人掛けのソファーだった。真ん中の方だから二人掛けだった、という訳ではなさそうだ。
多分だけれども、あらかじめ、そこに座るお客さんが何人なのか分かっているんだろう。周囲を軽く見回せば、一人用の座席だったり、三人掛けだったり、はたまた四、五人は余裕で座れそうだったり。色々なソファーがランダムに設置されていた。
とはいえ、こちらは新婚旅行の定番であるリゾート地。それもテーマパークなだけあって、二人掛けが多くあるように見えた。
座る方の身体の大きさにも合わせてくれているのか、俺達の近くに少し背もたれが高いソファーを見つけた。一人掛けにしては、肩をくっつければ三人位は座れてしまいそうな大きなソファーも。
それぞれのソファー同士の距離は、ほどよく離れている。身体を横にしてから間を通れば、肘掛けに手をぶつけることなく通れそうだ。
まぁ、くっつけたくても出来なかったのかもしれない。それぞれ長さや大きさが、全然違うのだから。
「さあ、アオイ……どうぞ」
「ありがとう、バアル」
当たり前のようにバアルさんは、艶のある黒いソファーへと俺を丁重に座らせてくれた。
彼の手を取りながら腰掛けたソファーは、上質な生地に覆われているからか触り心地がいい。ふわふわしている。表面に指先を滑らせる度に細やかな毛が立った。
座り心地も抜群だった。ふっくらと全身を包み込んでくれている。座っているって感じがしない。バアルさんが用意してくれていたハンモックみたいだ。これなら長時間座っていても、お尻や腰を痛めてしまうことはなさそうだ。それに何より、バアルさんとくっつけるのがいい。
すぐに彼も腰掛けて、俺の期待に応えてくれる。長く筋肉質な腕を俺の背に回してくれる。その頼もしい肩に寄りかかってもいいんだと、抱き寄せてくれる。促されるがままに身を寄せるとハーブの匂いがふわりと俺の鼻を擽った。
つい口元が緩んでしまう。柔らかく微笑む緑の瞳と目が合っちゃうと余計に。
「へへ……」
「ふふ……」
釣られたのか、笑みをこぼしたバアルさんとくすくす笑い合う。膝の上に行儀よく置かれていた手に手を重ねれば、くるりと手のひらを上にしてくれて指を絡めてくれた。
広い室内にずらりと並べられている座席の数は、まるで映画館にきたような。ざっと数えただけでも、200か300はありそう。すでにその三分の一は、お客さんで埋まっていた。
けれども、座席達の前にあるのは巨大なスクリーンではない。柱のように高く伸びた長階段。遥か上の天井に届いてしまいそうなそれの上に、二つの玉座のようなものが見えている。説明をされなくても分かった。あの二席にサターン様とヨミーン様が座られるんだって。
俺達の前に、俺達の後に、入場してきた皆さんがそれぞれの席を目指して投影石を片手に歩いていく。俺達も、手元の投影石に、招待状に新たに記載された座席番号を確認しながら席を探した。
「Aの17……此方ですね」
「わ、一番前の列だよっ、それも真ん中の方! ラッキーだね、バアルっ」
「ええっ、ラッキーでございますね」
俺達の席は二人掛けのソファーだった。真ん中の方だから二人掛けだった、という訳ではなさそうだ。
多分だけれども、あらかじめ、そこに座るお客さんが何人なのか分かっているんだろう。周囲を軽く見回せば、一人用の座席だったり、三人掛けだったり、はたまた四、五人は余裕で座れそうだったり。色々なソファーがランダムに設置されていた。
とはいえ、こちらは新婚旅行の定番であるリゾート地。それもテーマパークなだけあって、二人掛けが多くあるように見えた。
座る方の身体の大きさにも合わせてくれているのか、俺達の近くに少し背もたれが高いソファーを見つけた。一人掛けにしては、肩をくっつければ三人位は座れてしまいそうな大きなソファーも。
それぞれのソファー同士の距離は、ほどよく離れている。身体を横にしてから間を通れば、肘掛けに手をぶつけることなく通れそうだ。
まぁ、くっつけたくても出来なかったのかもしれない。それぞれ長さや大きさが、全然違うのだから。
「さあ、アオイ……どうぞ」
「ありがとう、バアル」
当たり前のようにバアルさんは、艶のある黒いソファーへと俺を丁重に座らせてくれた。
彼の手を取りながら腰掛けたソファーは、上質な生地に覆われているからか触り心地がいい。ふわふわしている。表面に指先を滑らせる度に細やかな毛が立った。
座り心地も抜群だった。ふっくらと全身を包み込んでくれている。座っているって感じがしない。バアルさんが用意してくれていたハンモックみたいだ。これなら長時間座っていても、お尻や腰を痛めてしまうことはなさそうだ。それに何より、バアルさんとくっつけるのがいい。
すぐに彼も腰掛けて、俺の期待に応えてくれる。長く筋肉質な腕を俺の背に回してくれる。その頼もしい肩に寄りかかってもいいんだと、抱き寄せてくれる。促されるがままに身を寄せるとハーブの匂いがふわりと俺の鼻を擽った。
つい口元が緩んでしまう。柔らかく微笑む緑の瞳と目が合っちゃうと余計に。
「へへ……」
「ふふ……」
釣られたのか、笑みをこぼしたバアルさんとくすくす笑い合う。膝の上に行儀よく置かれていた手に手を重ねれば、くるりと手のひらを上にしてくれて指を絡めてくれた。
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