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【新婚旅行編】七日目:エントランスホールにて
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真っ赤なカーペットに彩られ、このホールの主役のように構えている広い階段を上った先には、上品な金の装飾で彩られた大きな両開きの扉があった。いかにも、その先には特別な部屋がありますって感じだ。
「お時間になりましたら、城内アナウンスにてお知らせしておりますので、それまではこちらのエントランスホールにてお待ち下さいませ」
ぐるりとホール全体を見回したメイドさんに促されて周りを見れば、俺達と目的を同じにしていそうな先客達で賑わっていた。
壁に飾られているサターン様とヨミーン様の肖像画を眺めていたり、さり気なく壁際に設置されている席に座って寛いでいたり。メイドさん達が配っている、細長いグラスを満たすドリンクを傾けていたりと、それぞれ待ち時間を楽しんでいるようだった。
メイドさんと兵士さんによる城内案内は続く。
「もしお客様方が、もうまもなく始まる午前の謁見ではなく、午後からの謁見を申し込まれていらっしゃるのでしたら、あちらのお土産コーナーを覗いて見られるか、新しく始まったイベントに参加されてみてはいかがでしょうか?」
兵士さんの無骨な手が指し示す先、俺達から見て右側、常に大きな扉が開け放たれている先にも、沢山のお客さん達が足を運んでいた。
あちら側の広間が、全部お店になっているんだろう。ホールへと帰ってくるお客さんの両手は、お城の外観を印刷した紙袋やビニール袋で塞がっている。
あの男性が大事そうに抱き抱えているのはもしかして、ヨミーン様のぬいぐるみだろうか。丸太のように太い腕からは、可愛らしくデフォルメされてはいるものの、俺達がつけているカチューシャとお揃いの角を生やした見覚えのあるキャラクターが。真っ赤な瞳を細めて得意気な笑みを浮かべている。
バアルさんも気付いたんだろう。はためいている羽の音が、ちょっぴり賑やかになっていた。
今度はメイドさんが、兵士さんとは反対側の扉を指し示しながら続ける。
「もし、早めのお食事を取られるのでしたら、あちらの扉から向かわれて下さいね」
「ご丁寧にありがとうございます」
「ありがとうございました」
「いえ、お役に立てたのであれば何よりです」
また、なにかご用がおありでしたら遠慮なく、そう俺達に微笑んで、頭を下げたメイドさんと兵士さんは新たなお客さんに声をかけるべく、入り口の扉の方へと向かっていった。
「では、アオイ……私達はどのように過ごしましょうか?」
「うーん……元々十分前にはってお城の中に入ったんだし……メイドさん達も、もうまもなく、って言ってたんだからさ、俺達も肖像画を見に行かない? サターン様とヨミーン様の。ほら、あっちからだと二ついっぺんに見れるみたいだよ」
二階にある謁見の間の大扉を挟むように飾られている肖像画。金の額縁に収められた絵のタッチは、油絵の具で描かれたような。柔らかく微笑むサターン様は太陽モチーフのデザインが描かれた豪奢なマントを、威厳たっぷりに片方の口端だけを持ち上げるヨミーン様は星がモチーフの気品あふれるマントを羽織っている。
ほぼ実寸大らしきお二人が描かれた絵を、皆さん階段の近くで他のお客さんの邪魔にならないように見上げていたり、写真撮影もオッケーなのか投影石を掲げたりしている。
俺の提案を待っていたんだろうか。彼の細くて長い二本の触角が弾むように揺れ始めた。
「左様でございますねっ、では、参りましょうかっ」
「うん。ゆっくり見てから、俺達も写真撮ろう?」
「ええっ」
長く引き締まった腕が俺の腰を抱き寄せてくれる。
そっと見上げた横顔は、平然を装うように柔らかく微笑んではいたけれども、ワクワクを隠し切れてはいなくて。つい俺は高い位置にある腰に抱きついてしまっていた。くすくすと笑みがこぼれてしまうのを我慢出来なかった。
「お時間になりましたら、城内アナウンスにてお知らせしておりますので、それまではこちらのエントランスホールにてお待ち下さいませ」
ぐるりとホール全体を見回したメイドさんに促されて周りを見れば、俺達と目的を同じにしていそうな先客達で賑わっていた。
壁に飾られているサターン様とヨミーン様の肖像画を眺めていたり、さり気なく壁際に設置されている席に座って寛いでいたり。メイドさん達が配っている、細長いグラスを満たすドリンクを傾けていたりと、それぞれ待ち時間を楽しんでいるようだった。
メイドさんと兵士さんによる城内案内は続く。
「もしお客様方が、もうまもなく始まる午前の謁見ではなく、午後からの謁見を申し込まれていらっしゃるのでしたら、あちらのお土産コーナーを覗いて見られるか、新しく始まったイベントに参加されてみてはいかがでしょうか?」
兵士さんの無骨な手が指し示す先、俺達から見て右側、常に大きな扉が開け放たれている先にも、沢山のお客さん達が足を運んでいた。
あちら側の広間が、全部お店になっているんだろう。ホールへと帰ってくるお客さんの両手は、お城の外観を印刷した紙袋やビニール袋で塞がっている。
あの男性が大事そうに抱き抱えているのはもしかして、ヨミーン様のぬいぐるみだろうか。丸太のように太い腕からは、可愛らしくデフォルメされてはいるものの、俺達がつけているカチューシャとお揃いの角を生やした見覚えのあるキャラクターが。真っ赤な瞳を細めて得意気な笑みを浮かべている。
バアルさんも気付いたんだろう。はためいている羽の音が、ちょっぴり賑やかになっていた。
今度はメイドさんが、兵士さんとは反対側の扉を指し示しながら続ける。
「もし、早めのお食事を取られるのでしたら、あちらの扉から向かわれて下さいね」
「ご丁寧にありがとうございます」
「ありがとうございました」
「いえ、お役に立てたのであれば何よりです」
また、なにかご用がおありでしたら遠慮なく、そう俺達に微笑んで、頭を下げたメイドさんと兵士さんは新たなお客さんに声をかけるべく、入り口の扉の方へと向かっていった。
「では、アオイ……私達はどのように過ごしましょうか?」
「うーん……元々十分前にはってお城の中に入ったんだし……メイドさん達も、もうまもなく、って言ってたんだからさ、俺達も肖像画を見に行かない? サターン様とヨミーン様の。ほら、あっちからだと二ついっぺんに見れるみたいだよ」
二階にある謁見の間の大扉を挟むように飾られている肖像画。金の額縁に収められた絵のタッチは、油絵の具で描かれたような。柔らかく微笑むサターン様は太陽モチーフのデザインが描かれた豪奢なマントを、威厳たっぷりに片方の口端だけを持ち上げるヨミーン様は星がモチーフの気品あふれるマントを羽織っている。
ほぼ実寸大らしきお二人が描かれた絵を、皆さん階段の近くで他のお客さんの邪魔にならないように見上げていたり、写真撮影もオッケーなのか投影石を掲げたりしている。
俺の提案を待っていたんだろうか。彼の細くて長い二本の触角が弾むように揺れ始めた。
「左様でございますねっ、では、参りましょうかっ」
「うん。ゆっくり見てから、俺達も写真撮ろう?」
「ええっ」
長く引き締まった腕が俺の腰を抱き寄せてくれる。
そっと見上げた横顔は、平然を装うように柔らかく微笑んではいたけれども、ワクワクを隠し切れてはいなくて。つい俺は高い位置にある腰に抱きついてしまっていた。くすくすと笑みがこぼれてしまうのを我慢出来なかった。
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