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【新婚旅行編】七日目:そっくりだったのは、やはり外観だけではなく
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広い背中に腕を回してから、ぎゅっと力を込めてから少し離れる。名残惜しいけれども、ずっとくっついていたら顔が見れないから。
そっと見上げれば嬉しそうな、でも困ってもいるような。引き締まった首まで真っ赤に染めたバアルと目が合った。
大きな手のひらが頬に、背中に添えられる。ゆるゆると撫でてくれながら、話し始めた声は何かを必死に堪えているようだった。
「貴方様が、斯様に甘えて下さることに関しては、大変光栄で……寧ろ、もっと私めに甘えて、頼って頂きとうございますが……っ」
「ふふ、分かってるよ」
息を呑んで、バアルが俺を見つめてくる。続く言葉を待ってくれている。
「これからもバアルに甘えちゃうし、いっぱい頼りにさせてもらうけど……バアルに心配かけるようなことはしない。それでいいよね?」
「はいっ、そちらで宜しくお願い致します!」
包み込むように俺の手を取りバアルが微笑む。その笑みは、まるで満開の花が咲いたかのよう。俺まで嬉しくて自然と笑顔になっていた。
手に手を取り合っていると、チリンチリンと涼やかな鈴の音が聞こえてきた。すぐ分かった。誰が鳴らしてくれているのかも、何を知らせてくれているのかも。
「ねぇ、コルテ。もしかして、そろそろ予定の時間?」
音だけで姿を見せてくれないけれども、俺達の側に居るであろう小さな彼に問いかけてみた。
焦っている時のようにけたたましい音ではなかったから、急がないと遅れちゃうって訳じゃなさそうだけれども。
「ふむ……予定していた十分前まで、残り五分とのことです」
バアルさんにだけは見えているのか、それともコルテの声が聞こえているのか。やっぱり現れない小さな彼に代わって俺に教えてくれた。
「そっか。じゃあ、そろそろお城の中に行く? また景色が見たかったら後で、時間に余裕がある時にしよっか?」
「左様でございますね」
もう一度、最後に眼下に広がる景色をぐるりと眺めてから、いざお城へ。見えないコルテに向かってお礼を言うと、またチリンチリンと。今度はご機嫌そうな鈴の音が返ってきた。
お城の扉も同じだった。またしても、巨人専用のような大きな扉につけられた、いくつかの小さな扉の内の一つを開けて中へと入っていく。
雲をも見下ろせていた城外から、綺羅びやかなシャンデリアが照らす城内へと。彼と一緒に一歩を踏み出した時、繋がれていた手に力が込められた。
俺達の帰る場所にそっくりだったのは、やはり外観だけでは。その内装も、つい一週間前までぶらぶらと歩いていた場所と隅から隅まで全く同じだった。なんなら。
「ようこそ、いらっしゃいました」
ふらふらと吸い込まれるように広間へと進んでいた先で、にこやかに俺達を出迎えてくれた兵士さんやメイドさんの衣装も一緒。兵士さんは外にも居たから分かってはいたけれども、メイドさんまでもとは。
つい失礼にも、彼が身に着けているその鈍く光っている胸当てや、手にしている三つに分かれた槍を。彼女が着こなす上品なフリルのついた白いエプロンと足首まで覆っている黒いロングスカートを。自分の記憶と照らし合わせるように交互に眺めてしまっていると、バアルさんが胸元に手を当てて優雅なお辞儀を披露した。
「今日は」
「こ、こんにちは」
慌てて俺も頭を下げるとあちらも、こんにちは、と微笑んでから尋ねてきた。
「もしや、謁見をご希望のお客様でしょうか?」
「ええ」
「はいっ、サターン様とヨミーン様にお会いしたくてこちらに来ましたっ」
「やはり、そうでしたか」
トカゲのような細く長い尻尾をお持ちの兵士さんが納得したように頷いて、フラミンゴのように色鮮やかなピンク色の羽を生やしたメイドさんが、すぐ目につく階段を手のひらを上にして指し示す。
「謁見の間は、こちらの階段を上ってすぐにある扉の先にございます」
そっと見上げれば嬉しそうな、でも困ってもいるような。引き締まった首まで真っ赤に染めたバアルと目が合った。
大きな手のひらが頬に、背中に添えられる。ゆるゆると撫でてくれながら、話し始めた声は何かを必死に堪えているようだった。
「貴方様が、斯様に甘えて下さることに関しては、大変光栄で……寧ろ、もっと私めに甘えて、頼って頂きとうございますが……っ」
「ふふ、分かってるよ」
息を呑んで、バアルが俺を見つめてくる。続く言葉を待ってくれている。
「これからもバアルに甘えちゃうし、いっぱい頼りにさせてもらうけど……バアルに心配かけるようなことはしない。それでいいよね?」
「はいっ、そちらで宜しくお願い致します!」
包み込むように俺の手を取りバアルが微笑む。その笑みは、まるで満開の花が咲いたかのよう。俺まで嬉しくて自然と笑顔になっていた。
手に手を取り合っていると、チリンチリンと涼やかな鈴の音が聞こえてきた。すぐ分かった。誰が鳴らしてくれているのかも、何を知らせてくれているのかも。
「ねぇ、コルテ。もしかして、そろそろ予定の時間?」
音だけで姿を見せてくれないけれども、俺達の側に居るであろう小さな彼に問いかけてみた。
焦っている時のようにけたたましい音ではなかったから、急がないと遅れちゃうって訳じゃなさそうだけれども。
「ふむ……予定していた十分前まで、残り五分とのことです」
バアルさんにだけは見えているのか、それともコルテの声が聞こえているのか。やっぱり現れない小さな彼に代わって俺に教えてくれた。
「そっか。じゃあ、そろそろお城の中に行く? また景色が見たかったら後で、時間に余裕がある時にしよっか?」
「左様でございますね」
もう一度、最後に眼下に広がる景色をぐるりと眺めてから、いざお城へ。見えないコルテに向かってお礼を言うと、またチリンチリンと。今度はご機嫌そうな鈴の音が返ってきた。
お城の扉も同じだった。またしても、巨人専用のような大きな扉につけられた、いくつかの小さな扉の内の一つを開けて中へと入っていく。
雲をも見下ろせていた城外から、綺羅びやかなシャンデリアが照らす城内へと。彼と一緒に一歩を踏み出した時、繋がれていた手に力が込められた。
俺達の帰る場所にそっくりだったのは、やはり外観だけでは。その内装も、つい一週間前までぶらぶらと歩いていた場所と隅から隅まで全く同じだった。なんなら。
「ようこそ、いらっしゃいました」
ふらふらと吸い込まれるように広間へと進んでいた先で、にこやかに俺達を出迎えてくれた兵士さんやメイドさんの衣装も一緒。兵士さんは外にも居たから分かってはいたけれども、メイドさんまでもとは。
つい失礼にも、彼が身に着けているその鈍く光っている胸当てや、手にしている三つに分かれた槍を。彼女が着こなす上品なフリルのついた白いエプロンと足首まで覆っている黒いロングスカートを。自分の記憶と照らし合わせるように交互に眺めてしまっていると、バアルさんが胸元に手を当てて優雅なお辞儀を披露した。
「今日は」
「こ、こんにちは」
慌てて俺も頭を下げるとあちらも、こんにちは、と微笑んでから尋ねてきた。
「もしや、謁見をご希望のお客様でしょうか?」
「ええ」
「はいっ、サターン様とヨミーン様にお会いしたくてこちらに来ましたっ」
「やはり、そうでしたか」
トカゲのような細く長い尻尾をお持ちの兵士さんが納得したように頷いて、フラミンゴのように色鮮やかなピンク色の羽を生やしたメイドさんが、すぐ目につく階段を手のひらを上にして指し示す。
「謁見の間は、こちらの階段を上ってすぐにある扉の先にございます」
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