836 / 906
【新婚旅行編】七日目:貴方様の琥珀色の瞳も……星の様に煌めいて、誠に美しいですよ
しおりを挟む
「……では、私からも付けさせて頂いても?」
「うん、お願い」
手渡したカチューシャをバアルは柔らかな笑顔で受け取った。まるで、夫婦の証を着けてくれた時みたい。恭しく丁寧にカチューシャを被せてくれる。
このカチューシャも、以前のブレスレットのようにその人に合わせてサイズが自然とフィットするような術が施されているんだろう。まるで、元から身体の一部だったみたい。スゴく自然で、つけている感じがしない。
「どう?」
「大変お似合いです。誠にお可愛らしく、カッコいいですよ」
「へへ、ありがとう。バアルも可愛くてカッコいいよ」
「お褒め頂き光栄に存じます」
微笑みを交わして、また手を繋いで歩み出す。長く引き締まった足で、俺の歩幅に合わしてくれていたバアルが、思い出したかのように呟いた。
「貴方様の琥珀色の瞳も……星の様に煌めいて、誠に美しいですよ」
「ふぇ……ありが、え?」
何で、そんな? 心の声が聞こえていたみたいなお返しを? いや、まさか……また、俺、口にしちゃってて?
「ちょっ、え、バアル?」
「ああ、アオイ、バッジ屋さんが見えてきましたよ。此方の素敵なカチューシャを、お二人のバッジで飾り付けましょう」
「あ、ぅ、うん」
「ですが、胸元はご遠慮頂ければ……此方にはすでに先約が、貴方様との愛の証がございますので」
白いお髭を蓄えた口元が、悪戯っぽく笑っている。
しなやかな指先で自分の胸元で煌めくオレンジのヒマワリを、そして俺の胸元で咲く緑のバラを。淡い光の花弁で出来た魔力の花、俺達の愛の証をそっと撫でていく。
「は、はぃ……」
情けなく声をひっくり返しながら、俺は彼の腕の中に収まっていた。そっと見上げた先にある笑顔は、やっぱり太陽みたいに温かかった。
賑やかな街並みを抜けてからも、そのまま真っすぐ。道なりに進んでさえ行けば、お城へと辿り着けることだろう。そう呑気に構えていたのだけれど。
「……めっっちゃ、上にありますね」
「ええ、此方のお城も、大変荘厳に佇んでいらっしゃいますね」
俺達が見上げている先には、塔のように天を目指して伸びている青い水晶で出来た山。その天辺に、雲と同じくらいの高さに、俺達のお目当てのお城がドッシリと佇んでいた。
まさか、実際にある場所までをも再現しているとは。
ということは、このまま真っ直ぐ行けば国の中心部、いや、パークの中心部へと行けるんだろう。そこには、やっぱり魔法陣があるんだろうか。日頃俺達がお世話になっている、東西南北どこのエリアの色んなところに一瞬で行けるものとか、城内へと直行出来るものとか。
「お城自体はずっと見えていたから、てっきりすぐ近くにあるもんかと思っていたんですけど」
「ああ、それは恐らくあちらの投影石によるものかと」
バアルさんのしなやかな指先が指し示す先には、よくよく見ると大きめの投影石が浮かんでいた。青く透き通った水晶が淡く輝き、宙へとお城の画像を映し出している。
パーク内でのフォトスポットの一つなんだろう。周囲には、撮影を楽しんでいる人々の姿が。皆さんそれぞれお気に入りの角度からお城を背にご自身の投影石を構え、ポーズを決めている。
宙に大きく映し出しているから、この場所自体が広いから、場所取りで苦労することはなさそうだ。
「うん、お願い」
手渡したカチューシャをバアルは柔らかな笑顔で受け取った。まるで、夫婦の証を着けてくれた時みたい。恭しく丁寧にカチューシャを被せてくれる。
このカチューシャも、以前のブレスレットのようにその人に合わせてサイズが自然とフィットするような術が施されているんだろう。まるで、元から身体の一部だったみたい。スゴく自然で、つけている感じがしない。
「どう?」
「大変お似合いです。誠にお可愛らしく、カッコいいですよ」
「へへ、ありがとう。バアルも可愛くてカッコいいよ」
「お褒め頂き光栄に存じます」
微笑みを交わして、また手を繋いで歩み出す。長く引き締まった足で、俺の歩幅に合わしてくれていたバアルが、思い出したかのように呟いた。
「貴方様の琥珀色の瞳も……星の様に煌めいて、誠に美しいですよ」
「ふぇ……ありが、え?」
何で、そんな? 心の声が聞こえていたみたいなお返しを? いや、まさか……また、俺、口にしちゃってて?
「ちょっ、え、バアル?」
「ああ、アオイ、バッジ屋さんが見えてきましたよ。此方の素敵なカチューシャを、お二人のバッジで飾り付けましょう」
「あ、ぅ、うん」
「ですが、胸元はご遠慮頂ければ……此方にはすでに先約が、貴方様との愛の証がございますので」
白いお髭を蓄えた口元が、悪戯っぽく笑っている。
しなやかな指先で自分の胸元で煌めくオレンジのヒマワリを、そして俺の胸元で咲く緑のバラを。淡い光の花弁で出来た魔力の花、俺達の愛の証をそっと撫でていく。
「は、はぃ……」
情けなく声をひっくり返しながら、俺は彼の腕の中に収まっていた。そっと見上げた先にある笑顔は、やっぱり太陽みたいに温かかった。
賑やかな街並みを抜けてからも、そのまま真っすぐ。道なりに進んでさえ行けば、お城へと辿り着けることだろう。そう呑気に構えていたのだけれど。
「……めっっちゃ、上にありますね」
「ええ、此方のお城も、大変荘厳に佇んでいらっしゃいますね」
俺達が見上げている先には、塔のように天を目指して伸びている青い水晶で出来た山。その天辺に、雲と同じくらいの高さに、俺達のお目当てのお城がドッシリと佇んでいた。
まさか、実際にある場所までをも再現しているとは。
ということは、このまま真っ直ぐ行けば国の中心部、いや、パークの中心部へと行けるんだろう。そこには、やっぱり魔法陣があるんだろうか。日頃俺達がお世話になっている、東西南北どこのエリアの色んなところに一瞬で行けるものとか、城内へと直行出来るものとか。
「お城自体はずっと見えていたから、てっきりすぐ近くにあるもんかと思っていたんですけど」
「ああ、それは恐らくあちらの投影石によるものかと」
バアルさんのしなやかな指先が指し示す先には、よくよく見ると大きめの投影石が浮かんでいた。青く透き通った水晶が淡く輝き、宙へとお城の画像を映し出している。
パーク内でのフォトスポットの一つなんだろう。周囲には、撮影を楽しんでいる人々の姿が。皆さんそれぞれお気に入りの角度からお城を背にご自身の投影石を構え、ポーズを決めている。
宙に大きく映し出しているから、この場所自体が広いから、場所取りで苦労することはなさそうだ。
1
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる