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【新婚旅行編】七日目:思わず、ただいまを言いたくなった

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 星のレールに導かれた後は、青い水晶の階段を。彼と手を繋いで上っていった先には、薄暗い闇を抜けた先には。

「スゴい……帰ってきたみたい……」

「ええ……」

 思わず、ただいまを言いたくなった。

 そのくらい目の前でそびえ立っているお城は、俺とバアルさんが帰る場所にそっくりだった。青い石で造られた堅牢な壁。いくつもの家や塔が組み合わさっているように見えつつも、美しいバランスのシルエット。大きな本棟の再現度は勿論、俺達が住んでいる別棟もちゃんとある。

 いつもの散歩コースである、中庭もあるんだろうか? ここからは見えないけれどもレダさん達の兵舎や、演習場も? スヴェンさんやスー達の調理場もあったりして。

 見慣れた外観を見ているだけで、もう色々と想像を巡らせてしまっていた。期待に胸を躍らせているのは、何も俺達だけじゃあ。すでに先着していた皆さんで、お城の周りがわいわいと賑わっていた。

 俺達のように、ただただお城を見上げていたり。それぞれの気に入ったスポットで、その楽しげな笑顔を写真に収めていたり。はたまた、待ち切れないと言わんばかりにお城の中へと入っていったり。

 見えていた、あの橋も人気のスポットのようだ。飛び込み台のように途中で途切れてしまっているそこへも多くの人影が集まっている。

「まだ、予約の時間までには余裕、ありますよね?」

「はい。私達が参加する朝の謁見まで、後小一時間ほどでしょうか」

「じゃあ、ちょっと近くを歩いてみましょう? 十分前には、お城の中に入っておきましょうか」

「ええ、そう致しましょう」

「あっ、その前に写真」

 言うよりも速く、バアルさんは投影石を取り出し俺の肩を抱き寄せた。胸の前でそっと構えた手の形は、やっぱりハートの片割れ。相変わらず顔は熱を持ってしまったけれども、俺も片割れを作ってから彼の指先と合わせると羽のはためく音が聞こえた。

 そうして何枚か写真を撮ってから、バアルさんは投影石をしまうことなく宙へと浮かべた。

 ひとりでにふわりと浮いている緑色の結晶の近くに小さな緑の光が現れる。俺達の新婚旅行での専属カメラマンを買って出てくれているコルテだ。ガラス細工のような羽をはためかせて、その針よりも細い手足で自分よりも遥かに大きな投影石を軽々と運んでいる。流石だ。

「今日もよろしくね、コルテ」

「宜しくお願い致します」

 声をかければコルテは、ますます強く輝きながら俺達の前で踊るようにくるくると飛んだ。その光の軌跡でハートマークを描いてからはカメラマンに徹してくれるつもりなのだろう、嬉しそうな瞬きをふっと消した。

 しばらくの間は思い出作りをコルテにお願いして、俺達はお城の周りの行けるところを歩いてみることに。

 とはいえ、時間的にあまり遠くへは。お城の周りをぐるりと歩いて、外観を全部見て回っている時間はなさそうだ。広すぎる。

 橋の方が近いので、行って戻ってくるくらいの余裕はありそう。軽く外観を見てみたところで、賑わっているそちらへと向かってみることにした。

「わ、見て見てバアルっ! スゴいよ!」

 橋の上から見下ろす景色。想像していたものとはだいぶ異なっていた不思議な光景に、俺はついはしゃいでしまっていた。すでにバアルさんも同じ景色を見ているのに、早く見て欲しいとせがんでしまっていた。繋いでいる手をぐいぐいと引っ張ってしまっていた。

 バアルさんは擽ったそうに笑みをこぼしながら、俺の手を握り返してくれた。
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