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【新婚旅行編】七日目:ごめんね、俺……甘えちゃってた
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「ふふ、確かにスゴいですね。朝から夜までの景色を、こうしていっぺんに眺めることが出来るとは」
「うんっ! ホントにキレイに四つに分かれているね!」
彼の言った通り、俺達が見下ろす先には四色の景色が広がっていた。こちらのテーマパークも、国の構造と同じで四つのエリアに分かれている。
東は丁度朝日が登る頃の清々しい景色を、南は爽やかに晴れ渡ったお昼の景色を、西は夕日に包まれた穏やかで優しい景色を、北は夜の帳が下りつつもイルミネーションで彩られたロマンティックな景色を、俺達に見せてくれている。
周りの景色は時間に合わせたものなのに、見下ろす景色は一日がグラデーションのように移り変わっていて、その不思議さにいつまでも眺めていたくなってしまいそう。
周りの皆さんも多分俺達と同じ気持ちなハズ。皆さん場所を変えながら、ここからしか見ることの出来ないエリア全体の景色を楽しんでいる。
皆さんに釣られて、もっと端の方へと近づこうとしていたところで待ったをかけられた。長く引き締まった腕に後ろから抱き締められた。
「ふわ……バアル?」
香ってくる落ち着くハーブの匂い。包みこまれている優しい温もり。わくわくとは違う高鳴りで、胸の辺りが賑やかになってしまう。
けれども、振り向きざまに見たバアルさんの表情は、俺が想像していた柔らかな笑顔ではなかった。しょんぼりと下がっている触角と一緒に、申し訳無さそうに凛々しい眉を下げてしまっていた。
「バアル……」
「アオイ、楽しい気持ちに水を差すようで申し訳ございません。ですが、くれぐれも私の側を離れないで下さいね。落下防止の術が施されているとはいえ、御身が繊細なことに変わりはないのですから」
俺を抱き締めてくれている腕に力が込められる。
しなやかでありつつも筋肉質な腕は、大して鍛えていない俺より何倍も頼もしい。だというのに今は、小さな子供が必死に縋っているかのような。
「ご、ごめん。ありがとう、バアル」
抱き締め返せない代わりに少し硬い腕を撫でれば、眉間に刻まれていたシワがふっと緩んでいった。
「いえ……」
術士としてはまだまだな俺には、バアルさんのように魔力の流れだとか、どんな術が施されているのかだとかを、まだ判別することは出来ない。が、こちらの橋にも、実際のお城の橋と同じで落下防止の術が施されているようだ。
とはいえ、それは万が一のもの。現に橋の両端には、一定の間隔を空けながら兵士さんの格好をしたスタッフさん達が並んでいる。お客さん方が危ない行動をしないように、何かあった場合はすぐに助けに入れるように見守っているんだろう。
スタッフさん達は皆、飛べる力をお持ちのようだ。俺から見える範囲でも皆さん鳥類の翼や、トンボにアゲハ蝶など昆虫の羽を背中に生やしている人達ばかりだった。
「ごめんね、俺……甘えちゃってた」
「はい?」
「バアルが、ずっと側に居てくれているから。何かあっても、絶対に守ってくれるって分かってるから……でも、だからって、考えなしなことはしちゃあダメだよね。ごめんね」
「っぅ……そ、それは……っ」
密着している体温が急に熱くなって、動揺したような震えが伝わってくる。ぶんぶん、ぱたぱたと賑やかな音も聞こえてきた。
腕の力が緩んでいたので、やっとこさ俺は顔だけじゃなく身体ごと振り返ることが出来た。彼を抱き締め返すことが出来た。
「うんっ! ホントにキレイに四つに分かれているね!」
彼の言った通り、俺達が見下ろす先には四色の景色が広がっていた。こちらのテーマパークも、国の構造と同じで四つのエリアに分かれている。
東は丁度朝日が登る頃の清々しい景色を、南は爽やかに晴れ渡ったお昼の景色を、西は夕日に包まれた穏やかで優しい景色を、北は夜の帳が下りつつもイルミネーションで彩られたロマンティックな景色を、俺達に見せてくれている。
周りの景色は時間に合わせたものなのに、見下ろす景色は一日がグラデーションのように移り変わっていて、その不思議さにいつまでも眺めていたくなってしまいそう。
周りの皆さんも多分俺達と同じ気持ちなハズ。皆さん場所を変えながら、ここからしか見ることの出来ないエリア全体の景色を楽しんでいる。
皆さんに釣られて、もっと端の方へと近づこうとしていたところで待ったをかけられた。長く引き締まった腕に後ろから抱き締められた。
「ふわ……バアル?」
香ってくる落ち着くハーブの匂い。包みこまれている優しい温もり。わくわくとは違う高鳴りで、胸の辺りが賑やかになってしまう。
けれども、振り向きざまに見たバアルさんの表情は、俺が想像していた柔らかな笑顔ではなかった。しょんぼりと下がっている触角と一緒に、申し訳無さそうに凛々しい眉を下げてしまっていた。
「バアル……」
「アオイ、楽しい気持ちに水を差すようで申し訳ございません。ですが、くれぐれも私の側を離れないで下さいね。落下防止の術が施されているとはいえ、御身が繊細なことに変わりはないのですから」
俺を抱き締めてくれている腕に力が込められる。
しなやかでありつつも筋肉質な腕は、大して鍛えていない俺より何倍も頼もしい。だというのに今は、小さな子供が必死に縋っているかのような。
「ご、ごめん。ありがとう、バアル」
抱き締め返せない代わりに少し硬い腕を撫でれば、眉間に刻まれていたシワがふっと緩んでいった。
「いえ……」
術士としてはまだまだな俺には、バアルさんのように魔力の流れだとか、どんな術が施されているのかだとかを、まだ判別することは出来ない。が、こちらの橋にも、実際のお城の橋と同じで落下防止の術が施されているようだ。
とはいえ、それは万が一のもの。現に橋の両端には、一定の間隔を空けながら兵士さんの格好をしたスタッフさん達が並んでいる。お客さん方が危ない行動をしないように、何かあった場合はすぐに助けに入れるように見守っているんだろう。
スタッフさん達は皆、飛べる力をお持ちのようだ。俺から見える範囲でも皆さん鳥類の翼や、トンボにアゲハ蝶など昆虫の羽を背中に生やしている人達ばかりだった。
「ごめんね、俺……甘えちゃってた」
「はい?」
「バアルが、ずっと側に居てくれているから。何かあっても、絶対に守ってくれるって分かってるから……でも、だからって、考えなしなことはしちゃあダメだよね。ごめんね」
「っぅ……そ、それは……っ」
密着している体温が急に熱くなって、動揺したような震えが伝わってくる。ぶんぶん、ぱたぱたと賑やかな音も聞こえてきた。
腕の力が緩んでいたので、やっとこさ俺は顔だけじゃなく身体ごと振り返ることが出来た。彼を抱き締め返すことが出来た。
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