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【新婚旅行編】六日目:新たな目玉アトラクション
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「私も! お忘れなきよう……ヨミ様の敏腕秘書である、このレタリーも、バアル様とアオイ様御夫婦の手足であるのも同じでありましょう! どうぞ、ご遠慮なく。ご期待以上の成果をお約束致しますよ!」
黄緑色の尾羽を揺らしながら、流れるような動作で立ち上がり、胸に手を当てお手本のように綺麗な会釈を披露したレタリーさん。緩かに口角を持ち上げている様は得意気で、自信に満ちあふれている。
……言葉が出ない。嬉しいのに、嬉しくて仕方がないのに。であれば、せめて、笑顔を返せればいいのに。それすらも難しい。
不意にキラキラ瞬く緑の粒が、ボヤけかけていた視界に勢いよく飛び込んできた。見覚えしかないその煌めきの正体は、バアルさんの従者である小さな彼。
俺達のすぐ側で、ミニチュアサイズのお皿に盛られていたプリンの欠片を楽しんでいたハエのコルテが、ぴるぴると硝子細工のように小さな羽をはためかせている。
小さな小さな身体から放っている淡い光で宙に緑の軌跡を描いていくように、俺達の前で踊るようにくるくると回ってからピタリと止まって決めポーズ。針よりも細い手足を万歳するかのように、んばっと広げた。掲げていた彼専用の小さなスケッチブックには「頼って!」と大きく書かれていた。
温かな手のひらが俺の手に重ねられる。弾かれるように顔を上げれば、微笑む緑の瞳とかち合った。
バアルさんは何も言わない。ただ小さく頷いて、柔らかな光を湛えた瞳を細めている。薄っすらと涙の膜に覆われた煌めきからは、今にも涙がこぼれてしまいそう。それでも重ねてくれた手を、ぎゅっと繋いでいてくれる。
俺も頷いてから皆さんの方へと向き直った。
自然と笑えていた。少しだけ、堪えきれずにこぼれてしまったけれども。とびきりの笑顔で大好きな皆さんに、ありがとうを伝えることが出来たんだ。
俺のせいだ。俺が、何度もありがとうございますと言いながら、笑顔のまま泣いてしまったせいだ。
皆さんにも、うつってしまった。しばらく皆で、くすくすと笑いながらも、ぽろぽろと大粒の涙をこぼすっていう摩訶不思議な状況を作ってしまった。
笑いも涙もようやく落ち着いてきたところで、サタン様がおほんと咳払い。それを合図にするかのように、すっかり吹っ飛んでしまっていた話題へと戻してくれた。
「……それにしても、気に入ってもらえて何よりじゃ。確かに、ビーチからの眺めといい、落ち着いた静かな雰囲気といい、のんびり散歩するには最適な場所じゃからのう。わしとヨミも、よく訪れたものじゃ。のう?」
「はい、父上」
目元を拭っていたハンカチーフをしまいながら、ヨミ様もすぐ話題に乗る。サタン様と微笑み合ってから、再び俺達の方へと向いた端正な顔には、いつもの威厳たっぷりな笑顔が浮かんでいた。
「ところでアオイ殿」
「は、はい」
「明日の予定は決まっておるのか?」
「そう、ですね。明日は、旅行前からバアルさんと行きましょうって一緒に決めていた、テーマパークに行こうかと」
ずっと頭を撫でてくれていた彼を、バアルさんをちらりと見つめると、小さく頷いて微笑んでくれる。視線を戻そうとした時、ヨミ様が弾んだ声を上げた。
「おおっ、ついに、あちらへと向かわれるのだな!」
サタン様そっくりな真っ赤な瞳を輝かせる様は、待ちかねていたと言わんばかり。よっぽどオススメなんだろうか。
だったら、今の内に聞いてみておこうかな? 見どころっていうか、絶対行った方が良いっていうアトラクションとか。
「ほっほ、今じゃと丁度、新たな目玉となるアトラクションが始まった頃じゃしのう」
聞こうとしたところで、サタン様がタイミングバッチリな情報を教えてくれた。
新たな目玉、しかも始まったばっかり。期間限定と同じでスゴく惹かれる言葉だ。これは、ぜひチェックしておかなければ。
黄緑色の尾羽を揺らしながら、流れるような動作で立ち上がり、胸に手を当てお手本のように綺麗な会釈を披露したレタリーさん。緩かに口角を持ち上げている様は得意気で、自信に満ちあふれている。
……言葉が出ない。嬉しいのに、嬉しくて仕方がないのに。であれば、せめて、笑顔を返せればいいのに。それすらも難しい。
不意にキラキラ瞬く緑の粒が、ボヤけかけていた視界に勢いよく飛び込んできた。見覚えしかないその煌めきの正体は、バアルさんの従者である小さな彼。
俺達のすぐ側で、ミニチュアサイズのお皿に盛られていたプリンの欠片を楽しんでいたハエのコルテが、ぴるぴると硝子細工のように小さな羽をはためかせている。
小さな小さな身体から放っている淡い光で宙に緑の軌跡を描いていくように、俺達の前で踊るようにくるくると回ってからピタリと止まって決めポーズ。針よりも細い手足を万歳するかのように、んばっと広げた。掲げていた彼専用の小さなスケッチブックには「頼って!」と大きく書かれていた。
温かな手のひらが俺の手に重ねられる。弾かれるように顔を上げれば、微笑む緑の瞳とかち合った。
バアルさんは何も言わない。ただ小さく頷いて、柔らかな光を湛えた瞳を細めている。薄っすらと涙の膜に覆われた煌めきからは、今にも涙がこぼれてしまいそう。それでも重ねてくれた手を、ぎゅっと繋いでいてくれる。
俺も頷いてから皆さんの方へと向き直った。
自然と笑えていた。少しだけ、堪えきれずにこぼれてしまったけれども。とびきりの笑顔で大好きな皆さんに、ありがとうを伝えることが出来たんだ。
俺のせいだ。俺が、何度もありがとうございますと言いながら、笑顔のまま泣いてしまったせいだ。
皆さんにも、うつってしまった。しばらく皆で、くすくすと笑いながらも、ぽろぽろと大粒の涙をこぼすっていう摩訶不思議な状況を作ってしまった。
笑いも涙もようやく落ち着いてきたところで、サタン様がおほんと咳払い。それを合図にするかのように、すっかり吹っ飛んでしまっていた話題へと戻してくれた。
「……それにしても、気に入ってもらえて何よりじゃ。確かに、ビーチからの眺めといい、落ち着いた静かな雰囲気といい、のんびり散歩するには最適な場所じゃからのう。わしとヨミも、よく訪れたものじゃ。のう?」
「はい、父上」
目元を拭っていたハンカチーフをしまいながら、ヨミ様もすぐ話題に乗る。サタン様と微笑み合ってから、再び俺達の方へと向いた端正な顔には、いつもの威厳たっぷりな笑顔が浮かんでいた。
「ところでアオイ殿」
「は、はい」
「明日の予定は決まっておるのか?」
「そう、ですね。明日は、旅行前からバアルさんと行きましょうって一緒に決めていた、テーマパークに行こうかと」
ずっと頭を撫でてくれていた彼を、バアルさんをちらりと見つめると、小さく頷いて微笑んでくれる。視線を戻そうとした時、ヨミ様が弾んだ声を上げた。
「おおっ、ついに、あちらへと向かわれるのだな!」
サタン様そっくりな真っ赤な瞳を輝かせる様は、待ちかねていたと言わんばかり。よっぽどオススメなんだろうか。
だったら、今の内に聞いてみておこうかな? 見どころっていうか、絶対行った方が良いっていうアトラクションとか。
「ほっほ、今じゃと丁度、新たな目玉となるアトラクションが始まった頃じゃしのう」
聞こうとしたところで、サタン様がタイミングバッチリな情報を教えてくれた。
新たな目玉、しかも始まったばっかり。期間限定と同じでスゴく惹かれる言葉だ。これは、ぜひチェックしておかなければ。
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