間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

文字の大きさ
上 下
777 / 1,047

【新婚旅行編】五日目:なにか、俺にリクエストとかって、ある?

しおりを挟む
 休憩中にバアルの術によって、そのつど清めてもらってはいた。俺が余韻に浸っている内に、身体もベッドもキレイさっぱり。たっぷり愛してもらった痕跡なんてシミの一つも、シワさえも微塵も残していないほどの徹底ぶりだった。

 だからといって、お風呂に入らない訳には。毎日の楽しみの一つである、彼とのバスタイムを逃す訳にはいかない。切り出してみれば彼も同意見だったので、お風呂まで運んで行ってもらい今に至るということで。

 ふと、心地いい温水と共に肌を撫でてくれていた手が止まる。

「お次は、御髪を洗わさせて頂きますね」

「……ん、いいよ、お願い」

「失礼致しますね」

 もうすでに気持ちがよかった。でも、頭を洗ってもらっている時は、もっとというか、格別というか。

「は、ぁ……」

 思わず溜め息が漏れてしまう。頭皮を撫でては揉んでいく指先の力加減が絶妙で、気を抜けばうとうとしてしまいそう。マッサージ師としてもやっていけそうな腕前だ。

 甘い香りが漂う中、ますます夢見心地な気分が強くなってしまっていると「流しますね」とひと声かけられた。慌てて頷いてから重たくなっていた瞼をしっかりと瞑れば、温かいシャワーが髪と頭皮を撫でていく。

 キレイに泡を洗い流している最中にも髪を、頭を優しく撫でてもらえてしまえば、極楽な心地よさに温かさまで加わって、ますます頭の中がふわふわしてきてしまう。

 いつの間にやら俺の視界はゆらゆらと揺れていたらしかった。不意に段差に躓くように、頭がカクンッと深く落ちたところで気がついた。

 自分の行動に自分で驚き、大げさに肩が跳ねたところで、俺を深く深くへと引きずり込もうとしていた眠気が少し遠のいていく。

「アオイ、大丈夫ですか?」

 心配そうに尋ねてきたバアルは、すぐさまシャワーを止めた。後ろから俺の身体を支えるように抱きながら、顔を覗き込んでくる。

「うん、大丈夫。ごめんね、バアルに洗ってもらうのが気持ちよくて……うとうとしちゃってた」

「左様でございましたか……」

 嬉しさ半分、申し訳無さ半分ってところだろうか。安心したように微笑んではいるものの、彼の凛々しい眉毛は片方下がったままだ。

 優しい彼のことだ。俺も望んでのことなのに、負担をかけてるんじゃって思っていそう。

「ね、バアル……なにか、俺にリクエストとかって、ある?」

「リクエスト、でございますか?」

「うん……ほら、せっかくさ、いっぱいバアルに愛してもらえているし、この後も……もっと俺のこと、愛してくれるでしょ?」

 不思議そうにしていた表情が、今度は喜び一色に染まっていく。落ち込みかけていた触角が跳ねるようにぴょこんと上がって、弾むようにふわふわと揺れ始める。

 期待していた通りの反応に、俺まで嬉しくなっていた。

「ふふ……だからさ、お返しがしたいっていうか……いつもはしない体勢? とか……後、俺にして欲しいこととかさ……」

 あふれんばかりの喜びは、俺の口を素直にした。照れ臭さなんてへっちゃらだと跳ね除けて、自分の気持ちをそのまま言葉にすることが出来ていた。

「なんか、ないかなって……俺の方が、いっぱい気持ちよくしてもらっちゃってるから……だから、俺もバアルのこと、喜ばせたいなって……」

「宜しいのでしょうか?」

「ふぇっ」

 逞しい腕に後ろから抱きすくめられて、思わず変な声を出してしまっていた。しっとり濡れた素肌と、ほどよい弾力のある筋肉が密着してしまう。

 今更なのに。散々、素肌と素肌で触れ合ってきていたのにドキドキしてしまう。ベッドの上か、浴室かってだけなのに。

「どのようなお願いをしても、宜しいので?」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...