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【新婚旅行編】六日目:備えあれば憂いなし
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はたと俺を捉えた緑の瞳の煌めきがますます強くなっていく。喜びがあふれてしまいそう。
「アオイ……」
「絶対に、会いに行きましょう! 俺も会いたいんで! サターン様とヨミーン様に!」
「っ……ええ、参りましょう!」
大きな手のひらから包まれるように、ぎゅっと両手を握り締められる。花咲くようなバアルさんの笑顔が眩しい。子どものように無邪気で、ずっと見ていられるし、見ていたい。
とはいえ、今はそんな場合じゃ。明日、確実にサターン様とヨミーン様に会えるように、この素敵な笑顔を曇らせてしまわぬように、今出来る備えは全部しておかなければ。
きっと、ヨミ様達は、その為にこのサイトを勧めてくれたハズ。そういえば、最近の現世のテーマパークでは、優先パス的なものが合ったよな?
なんなら、一昨日のパークで買ったドラゴンさんとの空中遊泳チケットも、当日だけでなく事前予約が出来るみたいなことが書いてあったような。
「バアル、ちょっと調べたいことがあるから……」
「畏まりました……」
「ん、続きはまた、後でね」
バアルさんは額にキスを送ってくれてから、ちょっぴり名残惜しそうに俺の手を離そうとした。
調べものをするにしても、利き手だけ空いていれば十分だ。離れていこうとしていた白い手を、左手で追いかけて繋いでから、目の前で淡く輝いている光に、宙に表示されている公式サイトへと向き直った。
後ろから息を呑むような音が聞こえた後、ひと回り大きな手が、俺の手をそっと握り返してくれた。
ぱたぱたと、羽がはためく音をBGMに、続きだった文章に目を通していく。
サターン様とヨミーン様と確実に会う為には、城内の謁見の間へと向かおう。そこでは、二人と一緒に写真を撮ることが出来るだけでなく、握手やハグなどの交流を楽しむことが……
どれもバアルさんに喜んでもらえそうな情報だ。でも、今の俺に必要なのは。
「あっ」
「いかがなさいましたか?」
頭をフル稼働させて読み進めていく中で、見つけることが出来た俺にとっては最重要な一文。
「謁見の間での交流は、パーク入場時、パーク内のインフォメーションセンター、または公式サイトにて事前予約が可能……これっ、これですよ、バアルさん!」
まだ予約出来てもいないのに、つい彼の手を強く握り締めてしまっていた。ひとまず「事前予約は此方から」と書かれている部分をタップする。
表示されたのはカレンダー。明日の日付をタップすれば、現在の予約状況が表示された。
お昼の時間帯が一番人気みたい。すでに埋まってしまっている。ところが、運が良いことに、まだ午前中には空きがあるみたい。
「ここで、事前予約が出来るみたいなんです! サターン様とヨミーン様に、確実に会えますよ!」
「それは……大変素晴らしいですね……!」
「でしょ?」
浮かれてしまう。ますます、ぶんぶんぱたぱたと触角を、羽を賑やかにしている彼の明るい声に、ついつい調子に乗ってしまう。
「午前中にまだ空きがあるみたいなんで、早速予約してみますね?」
「はい、宜しくお願い致します」
いそいそと指を動かして、明日の午前中、大人二名と。予約する為に必要な項目を入力し終えてから、予約をタップ。
完了し終えた途端に、テーブルの上で浮かんでいた投影石が瞬いた。何やらメッセージを受信したらしい。
「恐らく、予約が完了したとの旨ではないでしょうか?」
そう言いながら、バアルさんがしなやかな指先をちょちょいと動かせば、投影石から表示している画面とは別のメッセージが小さく表示された。
そこには、バアルさんの言った通り。予約が完了したということと、訪れる際にはこの投影石を持ってきて欲しいということが、丁寧な文章で書かれていた。
「あ、良かった。出来ているみたいですね、予約」
「ええ、ありがとうございます、アオイ」
「へへ、いえいえ。謁見の間では、サターン様とヨミーン様と一緒にお写真を撮ったり、握手したり出来るみたいですから、時間いっぱい楽しみましょうね!」
「はい!」
もっと、もっと喜んで欲しい。満開の笑顔を目の前で浴びた俺は、その後もさらなる情報を集めていった。
「アオイ……」
「絶対に、会いに行きましょう! 俺も会いたいんで! サターン様とヨミーン様に!」
「っ……ええ、参りましょう!」
大きな手のひらから包まれるように、ぎゅっと両手を握り締められる。花咲くようなバアルさんの笑顔が眩しい。子どものように無邪気で、ずっと見ていられるし、見ていたい。
とはいえ、今はそんな場合じゃ。明日、確実にサターン様とヨミーン様に会えるように、この素敵な笑顔を曇らせてしまわぬように、今出来る備えは全部しておかなければ。
きっと、ヨミ様達は、その為にこのサイトを勧めてくれたハズ。そういえば、最近の現世のテーマパークでは、優先パス的なものが合ったよな?
なんなら、一昨日のパークで買ったドラゴンさんとの空中遊泳チケットも、当日だけでなく事前予約が出来るみたいなことが書いてあったような。
「バアル、ちょっと調べたいことがあるから……」
「畏まりました……」
「ん、続きはまた、後でね」
バアルさんは額にキスを送ってくれてから、ちょっぴり名残惜しそうに俺の手を離そうとした。
調べものをするにしても、利き手だけ空いていれば十分だ。離れていこうとしていた白い手を、左手で追いかけて繋いでから、目の前で淡く輝いている光に、宙に表示されている公式サイトへと向き直った。
後ろから息を呑むような音が聞こえた後、ひと回り大きな手が、俺の手をそっと握り返してくれた。
ぱたぱたと、羽がはためく音をBGMに、続きだった文章に目を通していく。
サターン様とヨミーン様と確実に会う為には、城内の謁見の間へと向かおう。そこでは、二人と一緒に写真を撮ることが出来るだけでなく、握手やハグなどの交流を楽しむことが……
どれもバアルさんに喜んでもらえそうな情報だ。でも、今の俺に必要なのは。
「あっ」
「いかがなさいましたか?」
頭をフル稼働させて読み進めていく中で、見つけることが出来た俺にとっては最重要な一文。
「謁見の間での交流は、パーク入場時、パーク内のインフォメーションセンター、または公式サイトにて事前予約が可能……これっ、これですよ、バアルさん!」
まだ予約出来てもいないのに、つい彼の手を強く握り締めてしまっていた。ひとまず「事前予約は此方から」と書かれている部分をタップする。
表示されたのはカレンダー。明日の日付をタップすれば、現在の予約状況が表示された。
お昼の時間帯が一番人気みたい。すでに埋まってしまっている。ところが、運が良いことに、まだ午前中には空きがあるみたい。
「ここで、事前予約が出来るみたいなんです! サターン様とヨミーン様に、確実に会えますよ!」
「それは……大変素晴らしいですね……!」
「でしょ?」
浮かれてしまう。ますます、ぶんぶんぱたぱたと触角を、羽を賑やかにしている彼の明るい声に、ついつい調子に乗ってしまう。
「午前中にまだ空きがあるみたいなんで、早速予約してみますね?」
「はい、宜しくお願い致します」
いそいそと指を動かして、明日の午前中、大人二名と。予約する為に必要な項目を入力し終えてから、予約をタップ。
完了し終えた途端に、テーブルの上で浮かんでいた投影石が瞬いた。何やらメッセージを受信したらしい。
「恐らく、予約が完了したとの旨ではないでしょうか?」
そう言いながら、バアルさんがしなやかな指先をちょちょいと動かせば、投影石から表示している画面とは別のメッセージが小さく表示された。
そこには、バアルさんの言った通り。予約が完了したということと、訪れる際にはこの投影石を持ってきて欲しいということが、丁寧な文章で書かれていた。
「あ、良かった。出来ているみたいですね、予約」
「ええ、ありがとうございます、アオイ」
「へへ、いえいえ。謁見の間では、サターン様とヨミーン様と一緒にお写真を撮ったり、握手したり出来るみたいですから、時間いっぱい楽しみましょうね!」
「はい!」
もっと、もっと喜んで欲しい。満開の笑顔を目の前で浴びた俺は、その後もさらなる情報を集めていった。
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