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【新婚旅行編】六日目:貴方の喜ぶ笑顔が見たいから
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お腹の前で重ねてられていた手にも少しだけ力が込められる。逆に肩の方は重みがなくなった。もっと間近で見たいのだろう。姿勢が前のめりになっている。頬を寄せるように乗せていた顎を上げ、食い入るようにお城の画像を見つめている。
「やはり、そっくりでございますね……」
「ですよね。あ、ほら、あの橋まで再現度バッチリですよ」
「ええ、左様でございますね……」
城の正面から伸びていて、途中で唐突に途切れてしまっている橋。羽や翼を持っていたり、空を飛ぶ術が使える方々専用、空へと飛び立つ為の助走路としての役割を果たしているそこは、俺とバアルさんにとっては色々と思い出深い場所だ。
そこもしっかりと再現してあるということは、こちらのテーマパークのお城も、それなりに高いところに建てられているんだろうか。俺達が見ている画像は、お城の細部が分かるほどにアップになっているから分からないけれども。
それにしても、早くもバアルさんの食いつきぶりがスゴい。俺を抱き締めてくれている腕にますます力を込めながら、まじまじとお城の画像を眺めている。お陰様で、大好きな体温と隙間なく密着してしまっている。
これは、もう決定しちゃったかも。一番最初に行くべき場所は。となれば、このお城に関する情報を更に集めておくべきだろう。
「……少し、下にスクロールしてみてもいいですか? 説明文が書かれているみたいなんで」
「ええ、どうぞ」
指でなぞっていくと現れた文章。びっしりと書かれているそれは多分、お城に関する見どころを書いてあるんだろう。
「えっと、なになに……太陽と、星の輝きが照らすお城。パーク全体を明るく照らすかのように、悠々とそびえ立つ青は美しく、まさにパークのランドマークといえる。こちらで味わえる非日常的な体験の数々。その中でも一番のポイントは、お城の主である我らの王、サターン様とヨミーン様と会、え? ……サターン様とヨミーン様!?」
表示された新たな画像。見覚えしかない玉座の間を背景に、仲が良さそうに肩を並べているマスコットキャラクターも二人共、これまた見覚えしかない。
どちらのキャラクターも側頭部にはヤギみたいな形をした黒い角を、背中にはコウモリの形をした黒い羽を持っている。真っ赤な瞳と夜のように黒い髪もお揃いだ。
サターン様と表示されているキャラクターは、縦にも横にも大きくて、頼もしいんだけれども丸っこいシルエットをしている。ご立派な顎髭を蓄えて、太陽をモチーフにした豪奢なマントを纏う様は、どっしりとした風格に満ちているものの、その表情は仏様みたいに優しい。
デフォルメされてはいるものの、ヨミーン様はスリムでモデル体型なシルエット。どこか得意気に口端を持ち上げている表情は威厳たっぷり。腰まで伸ばしている長い髪は、着ぐるみとは思えないほどに艷やかだ。星をモチーフにしたマントを纏う姿は気品に満ちあふれている。端正な顔立ちと相まって、神秘的な美しさを放っていた。
やっぱり、どちらのキャラクターも見覚えしか。っていうか、ついさっきまで一緒にお茶してましたよね?
「サターン様……ヨミーン様……」
いまだに思考はぐるぐると回りっぱなし。頭から煙でも出てきそうな混乱の最中でも、小さな呟きはしっかりと聞き取れた。俺を抱く腕の力を緩め、画像に釘付けになっている瞳は、宝石よりもキラキラと煌めいていて。
「ここっ! 絶対にっ! 一番最初に、ここに行きましょう!」
思わず俺は勢いよく身体ごと振り向いていた。幅の広い彼の肩をしっかと掴んでしまっていた。
「やはり、そっくりでございますね……」
「ですよね。あ、ほら、あの橋まで再現度バッチリですよ」
「ええ、左様でございますね……」
城の正面から伸びていて、途中で唐突に途切れてしまっている橋。羽や翼を持っていたり、空を飛ぶ術が使える方々専用、空へと飛び立つ為の助走路としての役割を果たしているそこは、俺とバアルさんにとっては色々と思い出深い場所だ。
そこもしっかりと再現してあるということは、こちらのテーマパークのお城も、それなりに高いところに建てられているんだろうか。俺達が見ている画像は、お城の細部が分かるほどにアップになっているから分からないけれども。
それにしても、早くもバアルさんの食いつきぶりがスゴい。俺を抱き締めてくれている腕にますます力を込めながら、まじまじとお城の画像を眺めている。お陰様で、大好きな体温と隙間なく密着してしまっている。
これは、もう決定しちゃったかも。一番最初に行くべき場所は。となれば、このお城に関する情報を更に集めておくべきだろう。
「……少し、下にスクロールしてみてもいいですか? 説明文が書かれているみたいなんで」
「ええ、どうぞ」
指でなぞっていくと現れた文章。びっしりと書かれているそれは多分、お城に関する見どころを書いてあるんだろう。
「えっと、なになに……太陽と、星の輝きが照らすお城。パーク全体を明るく照らすかのように、悠々とそびえ立つ青は美しく、まさにパークのランドマークといえる。こちらで味わえる非日常的な体験の数々。その中でも一番のポイントは、お城の主である我らの王、サターン様とヨミーン様と会、え? ……サターン様とヨミーン様!?」
表示された新たな画像。見覚えしかない玉座の間を背景に、仲が良さそうに肩を並べているマスコットキャラクターも二人共、これまた見覚えしかない。
どちらのキャラクターも側頭部にはヤギみたいな形をした黒い角を、背中にはコウモリの形をした黒い羽を持っている。真っ赤な瞳と夜のように黒い髪もお揃いだ。
サターン様と表示されているキャラクターは、縦にも横にも大きくて、頼もしいんだけれども丸っこいシルエットをしている。ご立派な顎髭を蓄えて、太陽をモチーフにした豪奢なマントを纏う様は、どっしりとした風格に満ちているものの、その表情は仏様みたいに優しい。
デフォルメされてはいるものの、ヨミーン様はスリムでモデル体型なシルエット。どこか得意気に口端を持ち上げている表情は威厳たっぷり。腰まで伸ばしている長い髪は、着ぐるみとは思えないほどに艷やかだ。星をモチーフにしたマントを纏う姿は気品に満ちあふれている。端正な顔立ちと相まって、神秘的な美しさを放っていた。
やっぱり、どちらのキャラクターも見覚えしか。っていうか、ついさっきまで一緒にお茶してましたよね?
「サターン様……ヨミーン様……」
いまだに思考はぐるぐると回りっぱなし。頭から煙でも出てきそうな混乱の最中でも、小さな呟きはしっかりと聞き取れた。俺を抱く腕の力を緩め、画像に釘付けになっている瞳は、宝石よりもキラキラと煌めいていて。
「ここっ! 絶対にっ! 一番最初に、ここに行きましょう!」
思わず俺は勢いよく身体ごと振り向いていた。幅の広い彼の肩をしっかと掴んでしまっていた。
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