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【新婚旅行編】六日目:狸寝入りなこっちがドッキリ、びっくり
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取り敢えずは、目を瞑っていればいいんだろう。寝たフリなんだし。
そう判断した俺は、目を閉じて彼の行動を待った。
いくら固く瞑ったところで完全な暗闇にはならなかった。光は感じてしまう。窓から差し込む朝の日差しやら、シャンデリアの明かりやら。
とはいえ、十分に何も見えないし、何をされてしまうのか分からないのだけれども。
ドキドキしちゃうな……いつ仕掛けてくれるんだろう?
視界を自ら縛っているせいだろうか。何だか時間の流れまで分からなくなっていく。まだ、俺が目を閉じてから一分も経っていないだろう。だというのに、もう数分間は動きがないような。
「ん……っ」
まだか、まだか、と身構えちゃっていたからだろう。大きな手が頬に添えられただけで、大げさに肩を跳ねさせてしまっていた。
びっくりさせちゃったんだと思う。慌てたように優しい温もりが離れていってしまう。
「ど、ドキドキしちゃってただけですからっ、びっくりしちゃっただけですからね?」
今のは流石に誤解を招きかねない。早くも寝たフリを放棄して、イヤではなかったんだと必死にアピールし始めた俺を、柔らかく微笑む瞳が見つめている。
バアルさんは俺の左手を取り、薬指の付け根で静かな光を湛えているお揃いの夫婦の証に口づけながら微笑んだ。擽ったそうに、嬉しそうに。その表情には、少し前の緊張は見えない。
「ふふ……ええ、承知しておりますよ……続きをしても宜しいでしょうか?」
「は、はいっ、お願いしますっ」
目を閉じる前に見えてしまった。今度は爪の先に口づけてくれたみたい。柔らかな笑みを形作った唇が、軽やかなリップ音を鳴らして離れていく。
どうしよう……さっきよりも、ますます心臓がはしゃいでしまっている。これじゃあ、また、びっくりさせてしまいそう。また、彼の邪魔をしてしまうかもしれない。
そんな俺の不安を見越しているかのようだった。
「アオイ……愛しております」
これから触れてくれるのだと、合図するかのように穏やかな低音が甘く囁いてくれたのだ。
いつ、何度もらっても、幸せと喜びが同時にやってくる言葉。嬉しくて、つい口元が緩んでしまう音の余韻に浸っている間に、そっと頬に触れてもらえていた。
そのままゆるゆると撫でてもらえても俺の肩が跳ねることはなく、ただ胸の内がじんわりとした温かさで満たされていく。
「私の愛しい妻は、眠っていらしても可愛いですね……カッコいいですよ……」
今度は、ちょっぴり擽ったくなってしまうお褒めの言葉。また、別のところを撫でてもらえるんだろうか。それとも違うスキンシップを?
俺の予想は当たっていた。額にかかっていた髪をよけてくれてから口づけを。目元や、鼻の頭、頬にも送ってくれる。
「ふ……んふ……」
あ、ヤバ……今度こそ、ちゃんと眠っているフリをしていないといけないのに。
柔らかな唇と一緒に、ふわふわのお髭まで掠めていったもんだから、つい笑ってしまっていた。
ただ、今回は織り込み済みだったよう。くすくすと笑みをこぼしながら、気にすることなく続けてキスを送ってくれている。
ホッと肩の力が抜けた俺は、自然と寛げていた。彼からの、とても襲ってくれているとは思えない可愛らしい触れ方を、すっかり楽しんでいたんだ。
俺がもうびっくりしてしまわなくなっても、バアルは必ず何かしらの言葉を囁いてくれてから、撫でてくれたりキスしてくれた。
それは、惜しみない愛を伝えてくれるものだったり、俺の全てを肯定してくれるような褒め言葉だったり。どちらも、顔がニヤけてしまいそうな言葉ばかりで。
あれ、前にもこんなこと、あったような……?
そう判断した俺は、目を閉じて彼の行動を待った。
いくら固く瞑ったところで完全な暗闇にはならなかった。光は感じてしまう。窓から差し込む朝の日差しやら、シャンデリアの明かりやら。
とはいえ、十分に何も見えないし、何をされてしまうのか分からないのだけれども。
ドキドキしちゃうな……いつ仕掛けてくれるんだろう?
視界を自ら縛っているせいだろうか。何だか時間の流れまで分からなくなっていく。まだ、俺が目を閉じてから一分も経っていないだろう。だというのに、もう数分間は動きがないような。
「ん……っ」
まだか、まだか、と身構えちゃっていたからだろう。大きな手が頬に添えられただけで、大げさに肩を跳ねさせてしまっていた。
びっくりさせちゃったんだと思う。慌てたように優しい温もりが離れていってしまう。
「ど、ドキドキしちゃってただけですからっ、びっくりしちゃっただけですからね?」
今のは流石に誤解を招きかねない。早くも寝たフリを放棄して、イヤではなかったんだと必死にアピールし始めた俺を、柔らかく微笑む瞳が見つめている。
バアルさんは俺の左手を取り、薬指の付け根で静かな光を湛えているお揃いの夫婦の証に口づけながら微笑んだ。擽ったそうに、嬉しそうに。その表情には、少し前の緊張は見えない。
「ふふ……ええ、承知しておりますよ……続きをしても宜しいでしょうか?」
「は、はいっ、お願いしますっ」
目を閉じる前に見えてしまった。今度は爪の先に口づけてくれたみたい。柔らかな笑みを形作った唇が、軽やかなリップ音を鳴らして離れていく。
どうしよう……さっきよりも、ますます心臓がはしゃいでしまっている。これじゃあ、また、びっくりさせてしまいそう。また、彼の邪魔をしてしまうかもしれない。
そんな俺の不安を見越しているかのようだった。
「アオイ……愛しております」
これから触れてくれるのだと、合図するかのように穏やかな低音が甘く囁いてくれたのだ。
いつ、何度もらっても、幸せと喜びが同時にやってくる言葉。嬉しくて、つい口元が緩んでしまう音の余韻に浸っている間に、そっと頬に触れてもらえていた。
そのままゆるゆると撫でてもらえても俺の肩が跳ねることはなく、ただ胸の内がじんわりとした温かさで満たされていく。
「私の愛しい妻は、眠っていらしても可愛いですね……カッコいいですよ……」
今度は、ちょっぴり擽ったくなってしまうお褒めの言葉。また、別のところを撫でてもらえるんだろうか。それとも違うスキンシップを?
俺の予想は当たっていた。額にかかっていた髪をよけてくれてから口づけを。目元や、鼻の頭、頬にも送ってくれる。
「ふ……んふ……」
あ、ヤバ……今度こそ、ちゃんと眠っているフリをしていないといけないのに。
柔らかな唇と一緒に、ふわふわのお髭まで掠めていったもんだから、つい笑ってしまっていた。
ただ、今回は織り込み済みだったよう。くすくすと笑みをこぼしながら、気にすることなく続けてキスを送ってくれている。
ホッと肩の力が抜けた俺は、自然と寛げていた。彼からの、とても襲ってくれているとは思えない可愛らしい触れ方を、すっかり楽しんでいたんだ。
俺がもうびっくりしてしまわなくなっても、バアルは必ず何かしらの言葉を囁いてくれてから、撫でてくれたりキスしてくれた。
それは、惜しみない愛を伝えてくれるものだったり、俺の全てを肯定してくれるような褒め言葉だったり。どちらも、顔がニヤけてしまいそうな言葉ばかりで。
あれ、前にもこんなこと、あったような……?
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