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【新婚旅行編】六日目:お揃いな、毎朝の幸せ
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もう、あふれてしまいそう。だというのに、彼は俺の心に喜びを注ぎ続けてくる。
頭がくらくらしてしまいそうな言葉の数々で。ホントに、心の底から嬉しそうな声で。俺だけに向けてくれる、見せてくれる、蕩けるような微笑みで。
震えてしまっている手に、繋いでいる手に、そっと力が込められた。
「私の姿を、捉えて下さった瞬間に……」
「っ……」
声になっていない俺の歓喜は、彼には届かない。気付いてもらえる訳もない。
「あの一瞬にしかない幸福を覚えてしまえば、つい……貴方様の寝顔を見つめながら、その時が訪れるのを待つことを止められず……ああ、ですが愛しい妻からのアプローチも是非とも受けたく……故に時折は眠ったまま、貴方様が私を襲って頂けるのを心待ちにしている次第でございます」
「そんな、それじゃあ……ホントにお揃いなんじゃ……」
色々と噛み締めてしまっていた気持ちの一部が、ポロリと口からこぼれてしまってようやくだった。熱に浮かされていた瞳が、俺が浸っている喜びの違いに気がついたのは。
「あ、いや、その……」
隠すつもりはない。むしろ共有したい。でも、ちょっぴり勇気が足りなくて、時間をもらった。
震える手を、大きな手に握ってもらいながら、何度か深呼吸をしてから口を開く。
「っ……俺も、いっつも幸せだなって、思って、るから……」
それでも、やっぱり声は震えてしまっていた。言葉も途切れ途切れになってしまっていた。
「目を開けたら、一番最初に……バアルが、見えるの……バアルが、俺に微笑みかけてくれるの……」
「……そう、でしたか」
「……うん」
それでもなんとか最後まで、ちゃんと伝えられたころには耳まで熱くなってしまっていた。
バアルもだった。長い睫毛を伏せている彼の頬は、すっかり真っ赤に染まってしまっている。お互いに握り合っている手が熱い。
「……あの、さ」
「……はい」
「一回、今から試しに俺のこと……襲ってみる? 寝たフリ、してるからさ」
「はい?」
そんなに思いがけない提案だったんだろうか。そわそわとはためいていた羽も、揺れていた触角も、ぴたりと止まってしまっている。
上手く言葉を飲み込めていないような。きょとんと目を丸くしている彼に、俺は言葉を重ねた。俺にしては、いい提案だって思っていたからさ。
「だってさ、普段は出来ないでしょ? 俺達の需要と供給? が一致してるし?」
「ええ、まぁ、左様でございますね」
「でも、俺だってバアルに襲ってもらいたいっていうか……バアルがどんな風に襲ってくれるのか、気になって仕方がないっていうか、一回くらい体験してみたいっていうか…………ダメ?」
訪れた沈黙の最中、ぱたぱたと賑やかな羽の音だけが聞こえている。
額に優しく口づけてくれてから、バアルは俺を抱き上げた。膝の上から俺を下ろして、自身は広いベッドへとスタイルのいい長身を預けた。
一連の動作をただ眺めていただけの俺を、引き締まった長い腕を広げて招いてくる。
「……どうぞ」
「え」
「どうぞ、此方に……普段眠っている時と同じシチュエーションでなければ、意味がないでしょう?」
「は、はいっ」
シーツの上を四つん這いでいそいそと這いながら、俺は彼の胸元へと潜り込んだ。筋肉質な二の腕を枕代わりにして、そっと彼を見上げる。大きな手のひらが腰の辺りに添えられた。
「……よろしく、お願いします」
「ええ、此方こそ……宜しくお願い致します」
気のせいかもしれない。気のせいだと思う。
穏やかに微笑んでいるバアルが、普段から余裕たっぷりな彼が、緊張しているように見えただなんて。
頭がくらくらしてしまいそうな言葉の数々で。ホントに、心の底から嬉しそうな声で。俺だけに向けてくれる、見せてくれる、蕩けるような微笑みで。
震えてしまっている手に、繋いでいる手に、そっと力が込められた。
「私の姿を、捉えて下さった瞬間に……」
「っ……」
声になっていない俺の歓喜は、彼には届かない。気付いてもらえる訳もない。
「あの一瞬にしかない幸福を覚えてしまえば、つい……貴方様の寝顔を見つめながら、その時が訪れるのを待つことを止められず……ああ、ですが愛しい妻からのアプローチも是非とも受けたく……故に時折は眠ったまま、貴方様が私を襲って頂けるのを心待ちにしている次第でございます」
「そんな、それじゃあ……ホントにお揃いなんじゃ……」
色々と噛み締めてしまっていた気持ちの一部が、ポロリと口からこぼれてしまってようやくだった。熱に浮かされていた瞳が、俺が浸っている喜びの違いに気がついたのは。
「あ、いや、その……」
隠すつもりはない。むしろ共有したい。でも、ちょっぴり勇気が足りなくて、時間をもらった。
震える手を、大きな手に握ってもらいながら、何度か深呼吸をしてから口を開く。
「っ……俺も、いっつも幸せだなって、思って、るから……」
それでも、やっぱり声は震えてしまっていた。言葉も途切れ途切れになってしまっていた。
「目を開けたら、一番最初に……バアルが、見えるの……バアルが、俺に微笑みかけてくれるの……」
「……そう、でしたか」
「……うん」
それでもなんとか最後まで、ちゃんと伝えられたころには耳まで熱くなってしまっていた。
バアルもだった。長い睫毛を伏せている彼の頬は、すっかり真っ赤に染まってしまっている。お互いに握り合っている手が熱い。
「……あの、さ」
「……はい」
「一回、今から試しに俺のこと……襲ってみる? 寝たフリ、してるからさ」
「はい?」
そんなに思いがけない提案だったんだろうか。そわそわとはためいていた羽も、揺れていた触角も、ぴたりと止まってしまっている。
上手く言葉を飲み込めていないような。きょとんと目を丸くしている彼に、俺は言葉を重ねた。俺にしては、いい提案だって思っていたからさ。
「だってさ、普段は出来ないでしょ? 俺達の需要と供給? が一致してるし?」
「ええ、まぁ、左様でございますね」
「でも、俺だってバアルに襲ってもらいたいっていうか……バアルがどんな風に襲ってくれるのか、気になって仕方がないっていうか、一回くらい体験してみたいっていうか…………ダメ?」
訪れた沈黙の最中、ぱたぱたと賑やかな羽の音だけが聞こえている。
額に優しく口づけてくれてから、バアルは俺を抱き上げた。膝の上から俺を下ろして、自身は広いベッドへとスタイルのいい長身を預けた。
一連の動作をただ眺めていただけの俺を、引き締まった長い腕を広げて招いてくる。
「……どうぞ」
「え」
「どうぞ、此方に……普段眠っている時と同じシチュエーションでなければ、意味がないでしょう?」
「は、はいっ」
シーツの上を四つん這いでいそいそと這いながら、俺は彼の胸元へと潜り込んだ。筋肉質な二の腕を枕代わりにして、そっと彼を見上げる。大きな手のひらが腰の辺りに添えられた。
「……よろしく、お願いします」
「ええ、此方こそ……宜しくお願い致します」
気のせいかもしれない。気のせいだと思う。
穏やかに微笑んでいるバアルが、普段から余裕たっぷりな彼が、緊張しているように見えただなんて。
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