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【新婚旅行編】五日目:新婚さんっぽいことって?
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「新婚さんっぽいこと、でございますか?」
胸元で抱き抱えていた頭がひょこりと持ち上がった。愛しい重みがますます軽くなる。ただでさえ、のしかかられているとは思えないくらいなのに。
「はい。今日はホテルでのんびりする予定でしょう?」
大なり小なりお互いに、充実した疲れを抱えたままだろうし。時間を気にせずに二人っきりで過ごせるのも、旅行の醍醐味なんだし。だったら、今しか出来ないようなことを、バアルさんとしてみたいなって。
考えていて辿り着いた結論が、新婚さんっぽいことをやってみたい、だったという訳で。
尋ねながらも俺の両手は止まらない。指通りのいい髪を撫でてみては、優しい目元を撫でてみたり。しっとりとした頬をむにむにと指先で揉むように触れてみては、柔い耳たぶを捏ねてみたり。たっぷり愛でさせてもらっている延長のまま、なでなでむにむにと動かしてしまっていた。
「ええ、本日は貴方様を独占させて頂きたく。致し方がなかったとはいえ、昨日は貴方様の人気ぶりに夫として誇らしくもあれど、年甲斐もなく妬いておりましたので」
「やっ!? ……んんっ……あ、ありがとう」
「いえ」
ついつい驚いてしまう。舞い上がってしまう。嫉妬してくれていたって、昨日の時点で御本人から直々に伝えてもらい済みだってのに。
変なところに入りかけて、むせかけた喉を整えていると催促をされた。止めてしまっていた手のひらに、頬を擦り寄せてきてくれる。
今日のバアルさんはわんこさんみたい。撫で始めるとぶんぶんぱたぱた。目尻のシワを満足気に深めながら、触角と羽でも喜びをアピールしてくれている。
「んふ……だ、だから、何か……新婚さんっぽいことが、したいなって」
……いかんいかん、またむせてしまうところだった。
だらしなくニヤけきった頬に気合を入れる。相変わらず胸の方はときめきっぱなしだけれども。
「ふむ……因みではございますが、アオイはどのようなことがしたいのでしょうか?」
「えっと……」
それっぽい特別なことがしたいとは思ったけれども、いざどのようなことが、と聞かれると。
……新婚さんっぽいことって、どういうことをしたらいいんだろう?
単純に……イチャイチャする、とか? いや、でも、それは恋人同士でもするし、したいし。そもそも、スキンシップなら今の今までずっとさせてもらっているし。
「……では、手始めにルール決めなどしてみましょうか?」
「ルール、ですか?」
「ええ」
小さく頷いてからバアルさんが身体を起こす。俺の上から退いた時、寂しくなった素肌を柔らかな風が吹き抜けていった。馴染のあるこの感覚は。
「あ、ありがとうございます」
やっぱりだった。素っ裸のままだった全身はひとっ風呂浴びたかのようにサッパリ。更には、着替えさせてもらっていた。部屋着代わりにしようと思っていた、ヨミ様特製パーカー猫バージョンに袖を通していた。
フードは被っていないから耳の方は繋がってはいない。けれども尻尾の方はすぐに術で繋がったらしかった。いつもは無い感覚に戸惑ったのもつかの間で、すぐに馴染んできてしまう。これも術によるものなんだろうか。
「いえ」
胸に手を当て会釈をしたバアルさんは、いつものリラックススタイルに。首元を緩めた白いカッターと黒のズボンを身に纏っている。長い足を伸ばして寛げてから、お膝の上をぽん、ぽんと叩いて俺を招いてくれた。
向き合う形でお邪魔させてもらうと、新参者のアイツが早速バアルさんにちょっかいを。ゆらゆらと揺れていた尻尾が、彼の腕にくるりと巻き付いてしまう。
経験的に分かってはいたけれど、やっぱり言うことを聞いてはくれない。服を着ている間だけとはいえ、ホントに俺の身体の一部になっているのか?
「……ごめん」
「ふふ……いえ、私は大歓迎でございますので。では、私達も手を繋ぎましょうか?」
「……ん」
頷いて、差し出された大きな手に手を重ねると不思議な満足感に胸が満たされた。尻尾の方は相変わらずバアルさんの腕にくるりと懐いたまま、先をゆらゆら左右に振っている。
胸元で抱き抱えていた頭がひょこりと持ち上がった。愛しい重みがますます軽くなる。ただでさえ、のしかかられているとは思えないくらいなのに。
「はい。今日はホテルでのんびりする予定でしょう?」
大なり小なりお互いに、充実した疲れを抱えたままだろうし。時間を気にせずに二人っきりで過ごせるのも、旅行の醍醐味なんだし。だったら、今しか出来ないようなことを、バアルさんとしてみたいなって。
考えていて辿り着いた結論が、新婚さんっぽいことをやってみたい、だったという訳で。
尋ねながらも俺の両手は止まらない。指通りのいい髪を撫でてみては、優しい目元を撫でてみたり。しっとりとした頬をむにむにと指先で揉むように触れてみては、柔い耳たぶを捏ねてみたり。たっぷり愛でさせてもらっている延長のまま、なでなでむにむにと動かしてしまっていた。
「ええ、本日は貴方様を独占させて頂きたく。致し方がなかったとはいえ、昨日は貴方様の人気ぶりに夫として誇らしくもあれど、年甲斐もなく妬いておりましたので」
「やっ!? ……んんっ……あ、ありがとう」
「いえ」
ついつい驚いてしまう。舞い上がってしまう。嫉妬してくれていたって、昨日の時点で御本人から直々に伝えてもらい済みだってのに。
変なところに入りかけて、むせかけた喉を整えていると催促をされた。止めてしまっていた手のひらに、頬を擦り寄せてきてくれる。
今日のバアルさんはわんこさんみたい。撫で始めるとぶんぶんぱたぱた。目尻のシワを満足気に深めながら、触角と羽でも喜びをアピールしてくれている。
「んふ……だ、だから、何か……新婚さんっぽいことが、したいなって」
……いかんいかん、またむせてしまうところだった。
だらしなくニヤけきった頬に気合を入れる。相変わらず胸の方はときめきっぱなしだけれども。
「ふむ……因みではございますが、アオイはどのようなことがしたいのでしょうか?」
「えっと……」
それっぽい特別なことがしたいとは思ったけれども、いざどのようなことが、と聞かれると。
……新婚さんっぽいことって、どういうことをしたらいいんだろう?
単純に……イチャイチャする、とか? いや、でも、それは恋人同士でもするし、したいし。そもそも、スキンシップなら今の今までずっとさせてもらっているし。
「……では、手始めにルール決めなどしてみましょうか?」
「ルール、ですか?」
「ええ」
小さく頷いてからバアルさんが身体を起こす。俺の上から退いた時、寂しくなった素肌を柔らかな風が吹き抜けていった。馴染のあるこの感覚は。
「あ、ありがとうございます」
やっぱりだった。素っ裸のままだった全身はひとっ風呂浴びたかのようにサッパリ。更には、着替えさせてもらっていた。部屋着代わりにしようと思っていた、ヨミ様特製パーカー猫バージョンに袖を通していた。
フードは被っていないから耳の方は繋がってはいない。けれども尻尾の方はすぐに術で繋がったらしかった。いつもは無い感覚に戸惑ったのもつかの間で、すぐに馴染んできてしまう。これも術によるものなんだろうか。
「いえ」
胸に手を当て会釈をしたバアルさんは、いつものリラックススタイルに。首元を緩めた白いカッターと黒のズボンを身に纏っている。長い足を伸ばして寛げてから、お膝の上をぽん、ぽんと叩いて俺を招いてくれた。
向き合う形でお邪魔させてもらうと、新参者のアイツが早速バアルさんにちょっかいを。ゆらゆらと揺れていた尻尾が、彼の腕にくるりと巻き付いてしまう。
経験的に分かってはいたけれど、やっぱり言うことを聞いてはくれない。服を着ている間だけとはいえ、ホントに俺の身体の一部になっているのか?
「……ごめん」
「ふふ……いえ、私は大歓迎でございますので。では、私達も手を繋ぎましょうか?」
「……ん」
頷いて、差し出された大きな手に手を重ねると不思議な満足感に胸が満たされた。尻尾の方は相変わらずバアルさんの腕にくるりと懐いたまま、先をゆらゆら左右に振っている。
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