上 下
743 / 906

★【新婚旅行編】四日目:最初の一歩を踏み出せてしまえば、調子づいてさえしまえば

しおりを挟む
 土壇場で俺がそうなってしまったように、やってもらう側だと、いざとなると申し訳ない気持ちが勝ってしまうんだろうか。

 バアルさんは心配そうに見つめている。ベッドに寝そべって、バアルさんの逞しい太ももの間に顔を近づけている俺を、ずっと。

「……喜んで、くれてたんじゃないんですか? 俺が、するの」

「ええ……身に余る喜びは今も変わりません……ただ、御身のご負担にならないかと」

「大丈夫ですよ。完璧なお手本を身を持って教えてもらったばかりですし……ちゃんと分かりましたし、スゴく気持ちいいんだって……」

「アオイ……」

 彫りの深い顔が綻んでいく。俺を見つめる眼差しに曇りはなく、もう慈しむような温かさしか。俺にも、さっきのお返しが出来たんだろうか。バアルさんの心配を拭うことが出来たんだろうか。

「……宜しくお願い致します」

「うんっ、頑張るね。バアルに気持ちよくなってもらえるように」

 意気込んだものの、さてはてどこから手を……いや、舌をつけるべきなのだろうか。

 目の前に、丁度俺の顔の真ん中に、太くて長い影を落としている彼のものは、やっぱり逞しい。見ているだけで感じる圧に、自然と喉が鳴ってしまう。

 こんなに間近で見せてもらえているのは初めてだから、余計にそう感じるのかもしれないけれど。

「……先ずは、御身の可憐な唇を寄せて頂けないでしょうか?」

 中々、最初の一歩を踏み出せずにいた俺に、丁度いい高さのハードルの指示が。

 具体的に言ってもらえると動けやすくなるんだろうか。鼓動は高鳴りっぱなしだけれども、不思議なくらいに緊張は解けていた。願われるがままに、血管の浮き出た竿へと口を押し付けていた。

「ん……こう、ですか?」

「……ええ、大変良く出来ましたね……お上手ですよ」

 鼻先を擽ったのは、少し慣れてきたけれど、いつもと違うボディーソープの香り。唇に感じた温もりは弾力があって、つるっとしていた。

 イヤな感じは全くなかった。それどころか、ますます気持ちが右肩上がりなってしまう。白い頬をほんのりと染めた彼から褒めてもらえたから。ご褒美に頭を撫でてもらえたから。

 踏み出せてしまえば、調子づいてしまえば、身体は勝手に。バアルさんの指示を待つことなく、俺は次の段階へと自分から踏み出していた。さっき唇で触れたところを、今度は舌を伸ばして触れていた。やっぱり今回も抵抗感は全くない。

「は、ぁ……アオイ……」

 俺を呼ぶ声に混じって、切なそうな吐息が聞こえた。

 指を添えている竿からも、僅かな震えが伝わってくる。試しにもう一度舐めてみても結果は同じ。そそり勃つ彼のものは震えて反応を示してくれた。俺が舐める度に、ちゃんと。

 喜びだけじゃない。達成感に似た何かが、早くも俺の胸の内を満たしていく。熱に浮かされたように俺は、夢中で舌を動かしていた。

 途中で、大きな亀頭から透明な雫が伝い落ちてきたけれども気にはならなかった。むしろ、味わうように舐め取っていた。これといって味はしなかったけれども。残念なことに。

「ぁ……は、くっ……大丈夫、でしょうか?」

 うっかりしていた。彼の口からは教えてもらえていなかったんだった。ずっと頭を撫でてもらえていたから、ずっとびくびくしていたから、てっきり。

「ん、らいじょぶ…………バアルは? 気持ちい?」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

王と宰相は妻達黙認の秘密の関係

ミクリ21 (新)
BL
王と宰相は、妻も子もいるけど秘密の関係。 でも妻達は黙認している。 だって妻達は………。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています

橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが…… 想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。 ※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。 更新は不定期です。

処理中です...