上 下
741 / 906

★【新婚旅行編】四日目:此方は、まだ許しては頂けませんか?

しおりを挟む
「あ、バアル……そこは……」

「お嫌でしたか?」

 尋ねながらもバアルは止めようとはしない。それどころかますます近いところに、足のつけ根のラインに沿って唇を寄せてくるほどだ。

「んっ、やじゃない、けど……その、近い、から……」

「近いとは……此方のこと、でしょうか?」

 最初っから俺の返答を待つ気はなかったんだろう。流れのままに押し通すつもりだったに違いない。でなけりゃあ、口づけたりはしないだろう。見せつけるように俺のものを握りながら、俺から目を逸らさずに先端へと。

「ふぁ……ちょ、ウソ……バアル……駄目……」

 戸惑いと否定の言葉を口にしながらも、しっかり俺は感じてしまっていた。亀頭に形の良い唇が触れただけ。ほんの一瞬の、微かな刺激に喜びを感じてしまっていた。

「此方は、まだ許しては頂けませんか?」

「ふぇっ? い、いやいや、許すとかじゃなくて、さ……汚い、じゃん……」

 今日も今日とて、しっかり者な旦那様から隅々まで洗ってもらったけれども。

「お美しい御身に斯様なところなど……貴方はどこもかしこも魅力的で」

「ま、待って、ズルいっ……そういう嬉しいこと言って、なし崩しにするのは」

「駄目でしょうか?」

「っ……」

 遮ってきた声は寂し気で、見上げてくる眼差しは切なそうに細められていた。ホントに、まぁ、俺の扱い方を心得ていらっしゃる。そんな顔してお願いされてしまったら、一発だってことを解っていらっしゃる。

 とはいえ、いくらなんでもバアルさんにしてもらうことじゃ……いや、そういえば、そんな愛し方もあったような気がする。フェラだっけ。男同士だから関け……いやいや、関係ありまくりだった。出来るじゃん。なんなら、俺だって、バアルさんに。

 思い至った途端にだった。込み上げてきてしまった。想像してしまったんだ。バアルさんが俺のものを、手だけじゃなくて口でも可愛がってくれているところを。同じように俺がバアルさんにお返して、上手ですよ、と褒めてもらえているところを。

 どうしよう……されてみたい、かも。それに、してみたいかも。

「あ、あのさ、バアル」

「はい」

 察しの良い彼は早くも気がついたんだろう。俺が前向きな提案をするであろうことを。その証拠にすぐさま返ってきた返事は明るく、表情もすでに晴れやかだ。

「その、さ……してくれるのは、嬉しいんだけどさ」

「でしたら」

「ま、待ってっ、最後まで聞いて?」

 前のめりで俺のものへと口づけようとしていた彼の肩を掴む。本来ならば、俺に彼を止められるだけの力はない。押し止めようとしても、巨大な岩を相手にしているかのようにビクともしないだろう。

 でも、彼はすんなり止まってくれた。俺のものから顔を離して、目を合わせてくれた。

「失礼、喜びのあまり年甲斐もなく先走ってしまいました」

「ううん、ありがとう。それで、ね…………お、俺も……バアルに……し、してみたいなって……」

「誠でございますか?」

 想像以上の好感触。ますます大きく広がった四枚の羽が、落ち着きなくはためいている。期待はしていたけれど、やっぱり嬉しいな。

「身に余る光栄に存じます……アオイがこの老骨めにご奉仕をして頂けるなど」

「ごほっ!?」

 なんか、いやらしさが増すんだけれども? その言い方だと。とはいえ、実際、これからするのはエッチなことな訳で。いや、そもそも今の今までずっとしてもらっていたんだけれども。

 ぐるぐる回って堂々巡りしそうだった思考を断ち切る。こういう時は考えちゃうと駄目だ、多分。

 気を取り直して俺は伝えた。包み隠さずそのままを、熱のこもった緑の眼差しから目を逸らさずに。

「……う、うん……さっきバアルからしてもらえるの想像しちゃったら、その……ドキドキして……俺も、バアルにお返ししたいなって思って……」

「でしたら、かわりばんこに致しましょうか。先ずは私めが貴方様にさせて頂きますので、その後は」

「俺の番、だね?」

「ええ」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

処理中です...