上 下
740 / 824

★【新婚旅行編】四日目:ますます色んなところにキスしてもらってる気が

しおりを挟む
 お願いされたのだから張り切って。俺は小刻みに震える手を叱咤しながら、彼を愛でさせてもらうことに専念した。

 頭を撫でて、髪を梳くのは勿論のこと。時にはしっとりとした頬を、優しい目元や頬骨辺りに刻まれたシワを、更にはふわふわなお髭まで撫でさせてもらっていた。

 その間も、バアルさんは絶え間なくキスを送ってくれていた。額に、目尻に、鼻にと余すことなく。

 最後に名残惜しそうに、何度か唇に重ねてもらえてから首元へ。甘えてくれるように高い鼻先を擦り寄せてくれながら、今晩もまた証を付けてくれている。俺がバアルさんのものなんだって、繰り返し肌に刻みつけてくれている。

「……失礼致しますね」

「は、ん……ふ、どうぞ……」

 首の周りに点々と赤い跡がついた頃。撫でさせてもらうよりも、甘えたい気持ちが強くなりかけていた頃。バアルさんは律儀に一言かけてから、俺のシャツを肌着ごと丁重に捲り上げた。

 たおやかな手によって曝け出された薄い胸に、彫りの深い顔が迫ってくる。俺の身体はすでにこの先を期待してしまっていたらしい。まだ触ってもらってもいないのに、乳首を硬く尖らせてしまっていたんだ。

「んぁっ……バアル……っ」

 片方はしっとりとした指先でそっと摘まれて、もう片方は柔らかな唇に食まれて。期待通りの刺激をもらえたってのに、俺はシーツの上で藻掻いていた。上体を反らして、足を伸ばして、バアルさんのキレイな髪まで掴んで。頭の芯が、甘く痺れるような刺激から逃げるように。

「ご、ごめんなさ……」

「大丈夫……お気になさらないで……それよりも、ちゃんと気持ちよくなられていますか? 何か、問題はございませんか?」

「ん、大丈夫……は、ぁ……気持ち、いいよ……続けて欲し、あっ、んっ、あ……っ」

 お願いし終えるまでに叶えてもらえてしまった。動き出した指先が、吸い付いてきた唇が、瞬く間に俺を溺れさせていく。

 触ってもらえているのは、たった二箇所。でも俺には十分過ぎたみたい。彼とベッドに挟まれながら、ただただ上擦った声を上げることしか出来なくなってしまう。

 最初の終わりは呆気なかった。先端を爪の先で優しく擽られただけ、強めに吸われながら熱い舌で全体を舐め上げられただけで、俺は腰をビクビクと跳ねさせていた。すでに汗ばんでいた下着を、その中心を更に濡らしてしまっていたんだ。

「……達してしまわれましたか?」

「はっ、はぁ……ん、ごめ……気持ちくて……」

「それは何より……もっと気持ちよくなられて下さいね……」

 柔らかな笑みを深めた彼は、分かりやすいくらいに上機嫌。細く長い触角を弾むように揺らしながらますます下へと、今度はお腹の辺りにキスを送ってくれる。

 慣れた手つきでズボンをパンツごと引き抜いてから足先にも。片方の膝裏を掴まれ、優しく持ち上げられたかと思えば、太ももにまで口づけてきた。

 ……なんか、最近、ますます色んなところにキスしてもらってる気がするな。

 俺はされるがままになっていた。心地いい余韻で頭も身体もぼんやりしているからか、気恥ずかしさも薄い。濡れそぼり、芯を持ったままのあそこを見られちゃっているのにも関わらず。

 そんな夢見心地な状態から一瞬で覚めるとは。思考がクリアになる出来事が起きるとは。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

処理中です...